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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
暁、太陽は昇る
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第五話 捜査⑤

 俺は急いだ。空に立ち込める黒い煙。それは憑神化とは違う、どす黒く空を染め上げる。幸運にも、俺たちがいたあの家からすぐに見えた。

 距離は大体五〇〇メートルだろうか? 

 後ろで辛そうに走っている響子さんを気遣いながら、走っていると悠河さんが先行し、先に行くと言って走る速度を上げる。

 俺はなるべく響子さんと並走し、あの黒い煙まで走る。周りを見てみると、住民たちがあの煙に気が付き、向かう者もいる。

 白昼堂々と起こってしまった今回の放火事件。まだ犯人の想像が出来ない。あのホームレスが言っていたことを信じれば、若い男。それが犯人で間違いがない。

 一体どういう顔、どういう想いで火を放つのか、俺にはまったく予想できない。今回の放火で犠牲者が出ていないといいのだが、不安を振り切るように進むが今回は今まで起きた事件とは一味違った。

 それは――

「家が燃えている……」

 息が絶え絶えで、ようやく事件現場に着いた俺たちを待っていたのは、燃える家。火柱を上げ、天に何かを届かせるように伸びている。この煙の量でよもやとは思っていたが、まさか。

「おい、お前ら」

 声をかけてくれたのは南方さんだった。その近くには一足先に着いた悠河さんがいる。

「私は南方刑事からこの放火の事情は聞いた。ひとまず、ここの家は空き家で犠牲者はいないそうだ」

「良かった」

 俺は安堵の表情をしていると、消防隊が必死に消化活動をしている。もうじき火が消えるだろう。

「ひとまず安心ね。でも、なんで今回はこの家だったのかしら? 今までは新聞紙、段ボール。いたずらで済まそうと思えば済むレベルだけど、今回はそうはいかないわ。家を一軒燃やしている。これはもういたずらのレベルを超えているわ」

「分からんな。この家の所有者は大分前に亡くなっている。単に人がいるいないの違いじゃないのか?」

 南方さんが、顎に手を当てながらそう答えた。

「あくまでも犯人の理由は何かを燃やすこと。ってことかしら。でも、このままで放っておけば遅かれ早かれ犠牲者が出る可能性があるわ。それだけは絶対に避けないと」

「だが、何か奇妙だと思わないか? どこかこの事件には幼稚さがある気がする。子どもが何かをして誰かに喜んでもらいたい。そんな気持ちが見て取れる」

 悠河さんが、あの火を見つめながら、どこか儚げで、昔の記憶を思い出しているかのような顔をしている。

 響子さんもごくまれにそういう顔をする。何かを思い出して、心此処に在らずという言葉最適だろうか、どこか虚空を見つめ、自分の殻に籠ってしまう。

「誰が放火なんてして喜ぶのよ。私だったら、絶対に喜ばないわ」

「いや、違うな響子。この放火は単なる手段に過ぎん。何かをするための」

「何かって何よ?」

「それを調べるのが、探偵だろ?」

「それもそうね。南方さん、安心して。この放火の連鎖。私がきっちり止めてあげるわ。土下座して喜びなさい」

 響子さんはその言葉を言い終わると、空き家の火は消えた。回りにいた野次馬が徐々に消えていく。そして悠河さんはあることを聞いた。

「なぁ、南方刑事。貴方は、ここの近くにあるあの大きな家について何か知らないか?」

「あの大きな家?」

 南方さんは首を傾げて、記憶の中から模索する。数秒後、答えを見つけた。

「あぁあの洋館みたいな家か。あの家がどうかしたのか?」

「あの家に、放火の手伝いをしてしまったホームレスがいてな。本人にはそのつもりがなかったらしいが。しかし、どうしてもあの家が気になってしまって」

「なるほどな。後でそいつに任意同行してもらわんとな。で、あの家のことだったな。あの家は昔、小金持ちの()(さか)という女性が住んでいた家だ。なんでも昔は、子どもたちに人気があって、ここの近くの小学校から遊んでいた子が多かったらしい。それも十年以上前の話だがな」

「十年以上前か……南方刑事、悪いが十年前の小学校の生徒でこの町に残っている人を探してくれないか? 今は高校生のはずだ。進学先を教えてくれればそれでいい」

「? 別に構わんが、それを調べて何になる?」

「多分それが、今回の事件を解くカギになる」

「まぁ了解した。部下に調べるように言っておく」

「ありがとう、感謝するよ」 

 南方さんは警察署に戻り、そして俺たちはひとまず、事務所に帰った。天気が悪くなっており、雪が降り始める。

 それを響子さんと悠河さんは事務所の窓からずっと眺めていた。

 俺は夕ご飯を作る準備をしているが、何やら話している。俺には何を言っているかが解らなかったが。


 *****

 私は窓を眺めていた。ゆっくりと落ちる雪、降り積もり、やがては消えていく。隣にいる姉さんは窓を見ながら微笑んでいた。

「なぁ響子」

「どうしたの?」

 珍しくあの人から質問してきた。久し振りに会って聞きたいことが一杯あるのでしょうと考え、質問に答える準備をしていた。

「お前は准兵くんのことが好きか?」

「ぶッ!!」

 私は思わず吹き出した。あらゆる質問を予想していたが、この質問をしてくるとは予想にしてなかった。

「どうなんだ?」

「分からないわよ。ただ、あの人といると心地が良いのよ。妙にね」

「そうか、いいか響子。もし、あの子がお前と一緒にいると決めたなら、私たちの目的を話してやれよ。彼にはその覚悟が出来ている」

「分かってるわ。でも、彼を巻き込みたくない……」

「しょうがない。その時にでも話してみればいいさ」

「その時って?」

「准兵くんがお前に告白してくる時だよ」

 彼女はウインクをして私をからかう。

「な――」

 私は顔が赤くなり、思わず俯いてしまう。自分でも分かる、私の中で何かが変わってしまったのだと。助手くんを見ていると、どういう気持ちになるのかも。

「可愛いな響子は全く」

 頭を撫でて、姉さんは笑う。私は久し振りに撫でられる感覚に浸りながらゆっくりと目を閉じた。

 姉が帰ってきた理由は勿論、あの事だろう。もう少しで、私たちの目標が達成できる。

響子さんの目標とは?

そしてこの事件の犯人はいかに?

次話真相です!

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