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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
暁、太陽は昇る
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第二話 捜査②

 俺たちの自己紹介が終わり、俺の隣には悠河さん、向かいのソファーには南方さん、響子さんが座っている。

 隣に座る俺はその美しい横顔と、響子さんのも負けない漆黒の瞳にしばし見惚れていた。

 艶やかな唇、ほんのり赤くなっている頬、髪をいじる時の仕草。全てが響子さんに似ている。それもそうか、彼女は実際の姉なんだから。でも、響子さんが持っていないものも持っている。

 例えばこの身長だ。彼女の身長はなんと一七〇センチあるのだ。あの響子さんですら、一六五センチしかないというのに、それに加えて響子さんより胸がある。

 これは自然に目が行ってしまっただけで、けして見比べようとしていたわけじゃない。そして彼女より長い黒髪。それは真珠のようで、宝のような価値があるのかもしれない。

「で、その事件とやらの概要を教えてくれないか? えっと准兵くんだっけ? 頼むよ」

「南方さん良いんですか?」

 俺が南方さんに尋ねていると、手を軽く振って教えても良いと意思表示をした。咳払いをして悠河さんに説明を始める。

「誰もいないはずの時間帯で、突然家の前で火が燃え広がったんです。今回の依頼はその事件の解決です」

「ふーん、放火って決めつけるぐらいだから、当然自然発火は有り得ないんだろうな? で、その状況を確認するために動画を見ていたと。そういうことだな?」

「そうなります。動画を見たところ、誰も近づいた形跡もなく、どうやって発火したか分からなくて……どうして放火したのかもまだ」

「愉快犯、て可能性はあるな。この事件以外に放火事件は起きていないのか? この近辺に起きたやつでいい」

「それは俺が説明する」

 南方さんは、コーヒーカップを置いて話し始めた。

「ここら一帯で起きている放火事件は、他にも三件ある。いずれも家には被害がなく、目の前に置かれているゴミに放火されている。あそこの地域は夜にゴミを出すルールがあるんだ。そして朝早く回収していく。放火なんて起きなかったからな、そしてゴミが無いところには何かしら置いて放火したと見られる」

「証拠は?」

 悠河さんが間髪入れずに質問を挟める。

「燃え残った紙屑が残っていたからな。たが、その日は粗大ゴミの回収日ではなかった」

「なら、録画時間を戻せばその犯人が写ってるじゃないのか? ゴミを人の家の前に捨てる奴なんてそういないだろ」

「そうだと良かったんだがな、既に確認したところ、それらしき人物は写っていなかった。ただ、ホームレスが通ったな。それだけだ」

「じゃあそのホームレスの奴が怪しいな」

「そういう考えもあるだろうが、あいつらは全く別のことをしている。家の前に出された段ボールや、新聞を勝手に持って帰っちまう。それで何度か住人といざこざになったらしいが」

「ありゃま、そいつは困ったな。一体どんな奴が犯人だろうな? 君には解るか? なぁ准兵くん」

 いきなり話を振られて、俺はコーヒーを吹き出しそうになりながらも何とか堪えながら悠河さんの質問に答える。

「やっぱり、愉快犯じゃないんでしょうか? 好きに放火なんてする人いないでしょうから」

「じゃあ好き好んでやっている奴がいるとしたら?」

「え……?」 

 彼女は響子さんよろしく足を組んで話し始めた。

「この世にはどうしてもどうしても放火したくて堪らない奴らが一杯いるんだよ。勿論、君も知ってる奴らさ」

 それは悠河さんが何が言いたいのか分かった。この事件は憑神が関わっている。事件がこの事務所にくることはそれが関わっていると思っている。

 だけど今回は犯人の姿が見えない。遠距離から攻撃できる憑神と見て間違いないだろう。

「まっ、今日のところは帰った方が良いのかもな南方刑事。もう少しで十時だからな」

「そうだな。そうさせてもらう。それじゃ織神、何か分かったら教えてくれ。俺も何か分かり次第に教える」

「助かるよ」

「助かるわ」

 悠河さんと響子さんの言葉が見事に重なってしまった。それも姉妹ならではのことなのだろう。あとどっちも織神だし、反応するのは必然だったな。


「改めて、ただいまー響子!!」

 彼女は響子さんにいきなり抱きつき、頬をすりすりとまるで小動物のように擦り合わせる。響子さんは苦笑いを浮かべながら、対応している。どうやら慣れているらしい。

 初めて見た俺は困惑し放題だけど。

「もう、姉さん。会うたびに抱きつくつの止めてって言ったでしょ?」

「だって、二年ぶりに会うんだよ? 可愛い妹がこんなに成長して、事務所まで作って。お姉ちゃん、離れてから心配で心配で」

「そうだ。なんで南方さんを帰らせたの? もう少し詳しいこと聞けると思うけど」

「彼はずっと、時計を確認していたからね。きっと溜まった仕事を早く片付けたいと思っているだろうから、帰らせたんだ」

「流石ね。人を見る観察眼は衰えてないみたいね。それでここには何日いるの?」

「はぁー、響子もそんなことを訊くようになるなんて、時の流れは速いなぁ。昔はずっと一緒にいてって駄々をこねていたのに」

 そう言われると響子さんの顔は瞬く間に赤くなり、悠河さんを押しのけた。

「昔のことは言わないでよ! 姉さん泊めてあげないわよ!」

「ごめんごめん、准兵くんに聞かれたら恥ずかしいもんな」

「そんなんじゃないわよ!」

 いや、思いっ切り聞いてしまったんだが。これはどうしたらいいのだろうか?

「荷物を持ってくるよ。そうだな、この事件が終わるまではここにいるよ」

 悠河さんは荷物を持ってきて黒い服に着替え、ソファーで俺の淹れたコーヒーを飲んでくれている。こう見れば姉妹と言えども、似ていない部分がある。

 響子さんは白が好きで、悠河さんは黒が好き。響子さんは甘いのが好き、彼女は苦いものも飲める。

「准兵くん。さては君、私たちが意外と似てないとか思ってるだろ?」

「あ、いやそんなことはありません。とっても似てるなと」

「ハッハッハッハッ。似てない部分もあるさ。私の方が背が大きいし、私の方が(ここ)も大きいしな」

 最後の方は反応に困る。似てない部分がもう一つだけある。この口調はどうも男勝りな気がする。実際そうなんだけども。

「失礼ね。私だってある程度はあるわよ」

「ごめんな響子、お姉ちゃんが色々なもん持ってちゃって」

「もう、余計なお世話よ!」

「変わらないな。響子は。私はもう満足だ。やっぱり君の存在が大きいのかな、准兵くん」

 俺はハハッと照れくさそうに笑うと、響子さんはフンとそっぽを向いてしまった。俺はまた何かをしてしまったのだろうか?

「さて、昼ご飯を食べ終わったら、早速捜査しよう」

「はい、分かりました!」

「今日は、私が作ろう。料理の腕を見せてやる」

 そう言って悠河さんは立ち上がり、響子さんのエプロンを借りる。それを見て響子さんが驚愕して止めようとしていた。

 俺は料理を食べるまで、響子さんが何故止めようとしたのか分からなかった。そして俺も参加して止めれば良かったと、後悔した。

悠河さんの料理の腕はいかに?

そしてこの事件の犯人は一体?

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