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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
心に刃を忍ばせて
33/116

第一話 捜査①

 俺は八色さんとの修行が終わり、いつもの生活に戻っていた。事務所に通じる階段を駆け上がり、扉を開ける。

 すると、そこには響子さんだけではなく、南方さんの部下である鳶さんが彼女と何やら話していた。

「あら、おはよう助手くん。珈琲を淹れたら座って頂戴」

「? 分かった」

 何か事件があったのだろうか? 鳶さんが来ているということは何かしらの事件が絡んでいると思うのだが、事件という事件はニュースでやっていない。ここ日本の事件を報道する速さはすごいと思う。事件が起きたその翌日には詳しい情報が報道される。

 俺は自慢じゃないが、朝は必ずニュース番組を見ている。もしかしたら依頼が来るかもしれないから。大体の事件、出来事は把握しているつもりだったが、見落としたかな?

 俺はコーヒーを二人分淹れ、テーブルに置く。そして響子さんの隣に座る。

「で、鳶さん私に頼みたいことって何?」

 鳶さんとはあまり話したことがなく、どういう人なのか詳しく分からないが服装もちゃんとしていて、正義感溢れる警察官って感じだ。そう言えば、南方さんはどうしたんだろう。こう言った話は鳶さんはパトカーで待たせて、南方さんが話に来るのに。

「あの……」

 会話の中に入る。

「南方さんはどうしたんですか?」

 すると鳶さんはにこやかに答えてくれた。

「先輩は体調不良で入院して、休んでいます。だから代わりに僕が来ました」

「あの人は体調管理も出来ないのかしら?」

 響子さんは呆れた顔をしてコーヒーを飲む。

「まぁまぁ、そう言うなよ響子さん。あの人も連日の捜査とかで疲れているんだよ」

 俺はすかさず南方さんにフォローをするが、彼女は「だからこそ体調管理に気を使うのよ」と言い放ちカップを置く。

「話の続きをさせてもらいます。要件とはですね、神峰(かみね)村というところで自殺した死体を村人が発見して、その現場を地元の警官と調べて一応他殺の可能性がないか調べてこいと上司に言われまして、先輩に相談したら、ここに行けば手伝ってくれると言われたので来た次第です」

 

「全く、南方さんったら適当なこと言って。私たちは貴方たち警察が解決できない事件を解決するのが仕事。なんで、貴方でも解決できそうな自殺の案件を手伝わないといけいないのよ」

 彼女はこの仕事の依頼をはっきりと断った。そして、他に用はないの? と足を組み直し腕を組み、ソファーに深く腰掛けて鳶さんに問う。

「用事はこれだけなんですが、その……先輩が、もし断るなら今度から安瀬馬に事件の解決を頼む。って言ってました。先輩に言えと言われたので言っておきます」

 これはもう、彼女のプライドによるのだが、引き受けるしかないと俺は思う。さもなければ、俺たちはたちまち食糧難に見舞われ、バイト漬けの日々が始まる。それだけは響子さんも嫌だろう。

「もう、分かったわよ。引き受けるわよ、引き受ければいいんでしょう! 特に鳶さん貴方は土下座して喜びなさい!」

 そんなこんなで、俺たちは鳶さんの依頼を受けることになった。パトカーでの移動で、途中でコンビニ寄り車中で朝食を済ませた。

 神峰村は桐之座町からかなり離れた場所にあり、車で二時間程度の移動を余儀なくされる。そして俺は初めて響子さんが車酔いをすることが分かった。短い移動なら耐えれるが、こうも長い移動だとさすがに寝込んでしまう。

 車の後部座席で横になって、ぐちぐちと何かを言っている。

「すいません、酔い止めの薬がなくて」

 鳶さんが信号で止まっているときに俺に頭を下げた。

「良いんですよ、響子さんも意地を張って薬局に寄らなかったから。こういうのは自己責任です」

「誰が、意地を張っているですって?」

 響子さんは辛そうな顔をして無理をして、起き上がり俺に話しかけてきた。

「起きて大丈夫なのか? もう少し寝ててもいいんだぞ?」

「大丈夫に決まってるじゃない……車酔い程度でダメになる人間じゃないわ。すぐに克服してやるわ」

 彼女がそう言うと信号が赤から青に変わり、車が発進する。すると彼女はまたしても後部座席で横になってしまった。

「だから無理すんなって。ほら、水でも飲んで」

 俺は水を響子さんに手渡し、前を向くが彼女はペットボトルを握ったまま動かなかった。

「お二人は仲がよろしいんですね。お羨ましい」

「そうですか? 鳶さんは警察内での友人は結構いるんですか?」

「いやいや、お恥ずかしながら、あまり友人を作るのが苦手でして、神峰村は僕の故郷なんです。そこにはいっぱいいますよ」

 ハハっと苦笑いを浮かべた。俺はその笑顔を最後に眠りについてしまったようだ。次に目を覚ましたのは森の中だった。


「あ、もう少しで着きますよ。山道で揺れますが」

 車が横と縦に揺れる。大分険しい道を走っているらしい、響子さんは大丈夫だろうか? 俺は気になり後ろを向くと彼女はグロッキー状態のままだった。

「響子さん、大丈夫か?」

 返事もせず、少なくなった水のペットボトルを上げて返事をする。あんな饒舌な響子さんがここまでなると今回はかなり酔ってるな。

「着きました。ここが神峰村です」

 森を抜けると、そこには村があった。寂しいというのがこの村を見て率直な感想だった。子供もあまりおらず、畑で仕事をしている者もいない。

「寂しい村ですね……」

 俺は思わず口に出してしまった言葉を取り消そうとして慌てていた。

「良いんですよ。この村も僕が住んでいた時から、過疎は始まっていましたから」

 村のひときわ大きな会館らしき場所に車を止め、俺は響子さんを起こして肩を貸して降りる。

「着いたぞ。ほら、大丈夫か?」

「最悪よ……山道なんて嫌い」

 ここまで喋れるなら大方大丈夫だろう。そして俺たちは鳶さんに誘導され、村外れの森の奥地に足を踏み入れる。

 鬱蒼とした木々、鳥が(さえず)り、飛び交う。まるで俺たちのことを出迎えているみたいだ。空だけではなく、木の影から狐が俺たちを見つめている。

「可愛いですね、あの狐」 

 鳶さんは狐に向けて頭を下げた。

「この村のしきたりなんです。狐を見たら頭を下げて、この村の安泰を祈る。この村では狐を神として崇めていますから」

「そうなんですか」

 知らなかった。こんな風習の村があるなんて。隣にいた響子さんは体調が良くなったみたいで、顔色がマシになった。

「その村の風習は千差万別。例えば犬を崇めている村だってあるのよ」 

 響子さんが心地よい風を感じながら、髪が靡きながら自慢げな顔でそう言った。

「そうなのか!?」

 そして、鳶さんと俺たちは自殺現場に着いた。木漏れ日が差す、風光明媚と言う言葉が一番似合うこの場所でわざわざ死ぬなんて……いや、最後だからこそ、この場所で、この美しい景色を見て死にたかったのかもしれない。

「こんな綺麗な場所で死ぬなんて」

「死に場所に綺麗も何もないわ。死んだらもう見れないのよ? 私、それだけは嫌。もっと色んな世界が見たい。この人はそう思わなかったのかしら」

「どうだろうな。自殺するやむおえない理由があったのかもな」

「残念な人、せめてあっちでは綺麗な世界を見てると良いわね」

「あぁ、だといいな」

 そのあと、その周りや、地元の警官の情報を聞くが自殺だと断定した。


「それじゃあ、帰りましょう」 

「そうだな、そうするか」

 俺たちがパトカーに向かう途中で豪雨に見舞われた。

「最悪! なんで雨なんて降るのよ! 助手くん鳶さん呼んできて!」

 俺は急いで鳶さんを呼び、彼に連れられ会館に入った。そこには俺たち以外にも大勢の人がいた。

「こ、こんにちわ」

 がたいの良い男の人が大勢に、若い女性、子ども、そしてお婆さんが一人立っていた。

「やぁ、みんなただいま」

 鳶さんが挨拶すると村人たちが挨拶を返す、すると彼の周りに四人の男女が集まってきた。

「紹介しますね、眼鏡をしているのは馬場良平、ポニーテールをしているのは里崎沙紀、金髪の結婚して指輪をしているのが大野麻耶、坊主頭の十勝宗助、俺の友達です」

 それぞれが頭を下げて挨拶をし、俺たちも頭を下げる。若い人もいる、なのにどうして外はあんなに静かなんだ? 俺はそのことを疑問に思いながら先ほどの自分の失言を取り消した。

「おい、隼人や」

 奥にいたお婆さんが鳶さんに声をかける。

「なんですか村長?」

「お主、この時期に部外者を入れてはならんと教えんかったか?」

「すいません。上司の指示で仕方がなく……」

「まぁ良い。すまんがお客人よ、こちらは大切な祈りの時期じゃ。出来ることはあまりないが悪く思わんでくれ」

「ええ、お構いなく。この雨が止めばすぐに立ち去りますので」

「おい、あんた知らないのか?」

 坊主頭で強面の十勝さんが声をかけてきた。

「何を?」

「この豪雨で唯一の道が土砂崩れで塞がったんだよ。小規模だが、今日はもう通れないぜ」

 響子さんは絶句した。それほどここから立ち去りたかったのだろう。

「それでは、皆の者。隼人も来たことじゃ祈りの歌を()(じろ)様に捧げようぞ」

 彼らは狐の仏像に向かって、一斉に歌い始めた。俺たちはその歌を聞いた、歌詞はこうだ。


「麗しき山々のその守護せし神よ。森を竹林を増やし、川を清らかにし、恵みの雨を降らせたもうて大地に潤いをもたらしめん。祠に捧げものを与えん」

 短い歌だった。だけどこの歌は村が出来た一五〇〇年前からあるらしい。この村の歴史の歌と言っても過言ではない。

「さぁ、二階に行きましょう。ここの会館はお風呂もあって、部屋もあるんですよ。お着替えもすぐにこの子たちに運ばせますね。双子の奈央と真央です」

 男の方が奈央、少女の方が真央と言うらしい。どちらも両方に似ていて見分けがつかない。

「よろしくね、奈央ちゃんに真央ちゃん」

「お兄さん、お姉さんよろしくお願いします」

 奈央くんの方が元気が良い、真央ちゃんはぼそぼそと恥ずかしがって何を言っているかとても聞き取り辛い。そこも初々しくて可愛らしい。

 俺たちはその二人に案内されて、部屋に荷物を置く。大分濡れてしまった、俺は風呂を沸かし早速入る。

 小さな浴槽で足こそは伸ばせないものの、温かくゆっくりできた。風呂から上がるとあの窓を強く叩いていた雨がやみ、曇り空が広がっていた。

「晴れたわね」

「うお!? 響子さん!?」

「そんなに驚かないでよ。ただいるだけでしょ」

 浴衣に着替えているがさすがに時期が外れている、肌寒い。

「これからどうする?」

「どうもこうも、土砂がなくなるまで待つしかないじゃない」

「そうだな、そうだ響子さん、暇ならこの村を見て回らないか。さっきの綺麗な景色が忘れられなくてさ」

「良いわよ。暇つぶしにでもなるでしょう、行きましょう」

 俺は気付かなった。この雨が上がると同時に猟奇的な殺人事件の幕が上がることを。

始まりました第五章。

今回は村の掟と過去がキーワードです!

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