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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
息をして生きて
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第四章完結 ありがとう

 事件が解決してから一週間が経った。人の記憶とは薄くなりやすいもので、夏帆さんの事件の報道はぴったりと止まった。シャノンや公園に置かれる花は激減し、時々私と結で花を添えるがその他には三つ程度の花束しかない。

 シャノンは営業を再開していた。お客さんもちゃんと来てくれて、店は私が働いていた時と同じくらい繁盛していた。

 私は秋が深くなるのを感じながら、夏帆さんの葬儀に出た。久し振りに出た親しい人の葬儀、嫌なことを思い出す。遺影を持ち、慰められたこと。葬儀ではみんな泣いていた。結も、シャノンの従業員も生前仲が良かった人たち。

 やっぱり、彼女は多くの人に愛されていたんだと痛感していた。葬儀が終わったころに夏帆さんのお母様から声をかけられた。

 赤いリボンで結ばれている一つの箱。それを手渡された。

 この箱は貴方への夏帆のプレゼントと言っていた。私は受け取り、礼を言ってその場を後にした、箱を開けるとそこには白い手編みのマフラーが入っていた。そして手紙も。


『織神ちゃんへ。

 まずは、お誕生日おめでとう!! 十月十日が誕生日だって知って急いで作りました。

 最初、シャノンに来た時はどうなるかと思ったけど、物覚えが早くて先輩である私たちを助けてくれたね。ありがとう。

 私がつけた店のあだ名は気に入ってくれた? ネーミングセンスだけは自信あるんだ。店の人もみんな優しいから仲良くしてね。

 白い色が好きだと言っていたので、これから寒くなるのでマフラーを贈らせてもらいました。冬になったら使ってくれると嬉しいな。

 こんな私だけどこれからもよろしくね。

 お節介な先輩より』


 マフラーは不思議と温かく、まるで夏帆さんのぬくもりのようだわ。このプレゼントを有難く思い有難く思い、大切にクローゼットに仕舞った。

 私今はシャノンに洗濯したメイド服を返して帰る途中。止めたわけではない、探偵家業を再開するにあたって滅多に忙しい時しか手伝わないことにしてもらった。

 結はバイトを続けるそう、店の一番人気になって店を繁盛させている。今回はあの子にも哀しい想いをさせてしまったわ。

 きっとこれで私たちのことには首を突っ込まないと思うわ。その方があの子のためでもある。人には、知らない方がいいこともある。

 それは憑神のこと、犯罪、そしてこの世界の闇。結には笑顔でいて欲しいから。

 私は仄暗い夜道を一人で歩いて、事務所に着くが明かりが灯っていない。助手くんの修行も終わって、いるはずなんだけど。

 不審に思いながらも鍵を開け、誰もいない闇の空間にただいまと呟き電気をつけた。すると目の前でパーティー用のクラッカー鳴る。

「誕生日おめでとう、響子さん!」

「おめでとう、響子!」

 助手くんと結が闇に紛れて隠れていたのね。

「貴方たち……そっか、今日、私の誕生日よね」

 すっかり忘れてしまった。今日は十月十日、間違いなく私の誕生日だ。 

「ほら、座ってよ響子。今日の主役なんだから」

 私は結に手を引かれ、ソファーに座った。目の前には三人では食べ切れないほどのオードブルが置いてある。

 すると助手くんがケーキを持って来て、目の前に置く。

「蝋燭はないけど、我慢してくれ。俺と三部が腕によりを振るって作った自信作だ。味は保証する」

 私は何も言えなかった。

「響子さん? どうかしたか? もしかしてこのサプライズ嫌いだったか?」

「ううん、そんなことない」 

 そう――そんなことない。

「すごく嬉しい。ありがとう。結、准兵」

 私は久し振りににっこりと笑って感謝した。


 そこからオードブルとケーキを談笑しながら食べ、結はソファーで力尽きてしまった。それもそうね、時刻は午後二時。

 助手くんは台所で皿を洗っている。その姿がいつにもなく懐かしい。

 私は彼の隣に行って皿を下げた。

「悪いな、主役なのに。三部のやつが寝るから」

 ハハッと笑いながら手を動かし続ける助手くんの手は肉刺が消え、元通りになっていた。

「助手くん。おかえり」

「ただいま。響子さん」

 私は、いや、私も人に愛されているだと愛される人間なんだと思い、幸福感に満ち満ちてとても気分が良かった。

 満月が私の世界を色鮮やかに照らす。それは春の霜解けのように、咲き誇る桜のように、輝く太陽のように私の世界になくてはならない存在。

 私は助手くんの顔を見て心の中でもう一度、ありがとうと言った。

皆さん、気が向いたら十月十日に響子さんを祝ってやってください!

では次章でお会いしましょう

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