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夜の月に笑われて  作者: 宮城まこと
羽無き蝶
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第五話 真相①

 俺と響子さんを襲った謎の矢はただの偶然で飛んできたのには違いない。飛んだ矢を気にして弓道部の部長が俺たちに謝りに来たのだ。矢には特段異常がない。

 俺たちはお互いに冷や汗をかきながらこの事態を重く見ていた。

「困ったわね。これ紛れもなく、憑神の仕業よ……でも、どのタイプか分からない。その殺人能力すらね。物の軌道を変える能力かしら? それとも? ダメだわ。情報が少な過ぎる」

 確かに情報が少ない。俺はあの黒い蝶がどうしても気になる。

「あの黒い蝶、あれが憑神じゃないのか? 響子さん」

「そう決めつけるのは早すぎるわ。一応、その可能性は頭に入れておくわね」

 ここで考えても答えが出ないと判断して響子さんが、髪をなびかせて。

「取り敢えず、ここにいたら何が起こるかわからない。桐之座総合病院に行きましょう」

「そうだな。そこに被害者がいるのか?」

「ええ、だから行くの」


 そう言って俺たちはバスに乗り、ここからだいぶ離れた桐之座総合病院に向かう。

 バスに乗っている時も彼女は外の景色見ながら推理に耽っていた。

 そして説明が遅れたが、憑神にはいくつかのタイプがある。

 一つはこの前戦った獅子は最も数が多いとされている獣型。

 もう一つは昆虫型。これは戦闘力が低く、憑神化したとしても俺だけで対処できる。これはとても倒しやすい。

 最後は一番危険で一番数が少ない人間型。これは俺はまだ会ったことがないが、響子さんが言うには会ったらまず未熟な俺たちでは到底太刀打ちできない。

 いつか戦うことになるのかも知れないがその時は、死ぬことも覚悟しておいた方がいいのかも知れない。

 そうこうお互いに考えているうちに桐之座総合病院前に着いていた。


「響子さん、着いたぞ」

「え、あぁ、分かったわ。降りましょう」

 どこか心ここにあらずと言うかなんと言うか。きっと憑神のことを考えて他のことが上の空なのだろう。

 俺と響子さんは受付に()()(はな)さんの友人と伝え、西の三階五〇四号室にいると教えてもらった。

 そしてその部屋に着いて、加持さんがいる部屋に入る。そこには器具で右足をつるされた加持さんが本を読んで暇をつぶしていた。

「あの、どちら様ですか?」

「私の名前は織神響子。こっちが香澄准兵くん。貴方の怪我のことについて聞きたいの、教えて下さる?」

「良いけど、ちょっと時間がかかるよ」

 そこから話は長かった。


 簡単にまとめるとこうだ。怪我をする三日前、加持さんは、友達の演劇部の劇の練習を手伝うために第一体育館に来ていた。そして順調に準備が出来ていき、事故が起こった。

 劇で使うスタンドの照明が突如倒れて彼女の足に当たり、そして骨折した。

「これも聞くけど、手伝う前に誰かに触った?」

「えっと、確か五人ぐらい。あ、そうだ。あれも触った内に入るのかな? 消しゴム落としたとき、陸上部の永洞くんに拾ってもらったんだ」 

 永洞? また名前が出てきたのか。一体この事故と何が関係しているんだ?

「それでね、私が怪我するとき痛くてよく見えなかったけど、黒い蝶を見た気がする」

「黒い蝶?」

「うん。けど……見間違いかも」

 その時、響子さんの考えが繋がった。


「そういうことね! 私の馬鹿、どうして気づかなかったの。あれは不幸蝶に決まってるじゃない」

「分かったのか!?」

 と俺が訊くと響子さんが自信満々な顔をしてこう言った。

「これだけの判断材料、動かぬ証拠。貴方がこの事故否、この事件の犯人だったのね……永洞国一」

 はっきりと言った。永洞国一が犯人だと。そして彼女は失礼と言って、病院から出て三部に電話を掛ける。

「どうして三部に電話を?」

「もしかしたら、次の目標になるのかもしれないのよ」

「三部は響子さんも知ってんだろ? あいつは陸上部じゃないんだ。どうして狙われるんだよ?」

「決まってる。それが憑神って言うやつなの。目的を達成してもその悪は留まる事を知らない。助手くんはそんなことも分からないの?」

「そうだとしても、なんで?」


「もう、なんで電話に出ないの。あの子、携帯をあまり持ち込まないタイプだったわね。しょうがないわ。直接話すしかないじゃない。なんであの子が狙われてるかって? 簡単よ、永洞の奴はあの子のことが嫌いだから」

「嫌い? あの二人は友達なんだろ」

「正確に言うなら、あの子の笑顔が嫌いなのね。一目見て分かったわ。高校の時の私も嫌いだったから。最悪だけどあいつと私は同じ感じがするのよ」

 そう言われた時、またしても俺の嫌な予感がした。これも永洞が犯人と分かったせいなのか、今までより怖いと感じて背筋がぶるっとしてしまう。

 三部が危ない。そう思えてならない。

「なら、早く行こう。三部が危ない!」

 俺たちはタクシーを呼び止め、大学に急いで向かってくれと言った。

 曇天の鉛色の空が徐々に晴れていくのが分かる。それがこの事件の解決を暗示しているようだった。だけど俺の頬を撫でる不気味で生温い風は気味が悪く、俺の足取りを無意識に早くする。

 三部、頼むから無事でいてくれ。

次話。第二章、完結します

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