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そんなこんなで今日も

作者: 飛鳥りん

~そんなこんなで今日も。~


登場人物

・梅飾翼(うめかざり-つばさ)

 普段は電波メルヘナー、リボンが取れたら病んでる厨二と化す

 なんかすっげー三女。

・竹飾咲(たけかざり-さく)

 空手柔道合気道なんでもこいやーなオレ系次女。

・松飾祈(まつかざり-いのり)

 のんびりふわふわ天然さんな長女。

・森樹霊羅(しんき-れいら)

 テレパシーで会話する、森の精霊さん。物静か。

・鹿くん(しかくん)

 霊羅の代弁役をしている鹿。

 でもこのメンバーの前ではしなくてもいいのでお役御免w

 普通に喋ったり二足歩行する。顔がシュール。ベリーシュール。



 「わ~いなのです!待てなのですディアー!なのです!」

 「HAHAHA☆待てと言われて待つ鹿なんてこの世にいませんよ翼さんっ!」

 「そっかそっか~!ディアーはディアーだもんねなのでーす!」

 「訳分かんないですよ翼さーんっ!」

AHAHA☆UHUHU☆と追いかけっこをしている翼と鹿くん。

途中話の内容が噛み合っていないが、まぁいつものことである。

翼は電波ちゃんなのだ。

そんな彼女らを、咲が大木に寄りかかりながら、霊羅は大木の枝に吊り下げてあるブランコに乗って足をブラブラさせながら見ていた。

祈はガーデニングチェアに座りながら読書をしている。

 「あいつらほんと仲いいよな~」

 『仲良し。素敵』

 「まぁ、素敵だな。うん」

霊羅の目は前髪で隠されていて、尚且つ抑制のないテレパシーの声だが、

どことなく嬉しそうに感じた。

咲は、ふと何かを思いついたかのように祈に言った。

 「そういえば、祈姉」

 「?なぁに、咲ちゃん」

ゆるやかな動作で本から顔を上げ、祈が首を傾げる。

 「もう9時だけど、いつ朝ごはん作ってくれるの??w」

咲が苦笑いしながら言うと、祈はしまった!というように目を見開いた後、

困ったように笑った。

 「あ、あらら?もうこんな時間だったのね~・・・。

  ごめんね!今すぐつくるわ~!」

そう言うやいなや、祈は本をパタンと閉じ、チェアに置いて、

大木の家に向かって全速力で走った。

 「いいよいいよ、ゆっくりで!?祈姉が走ったら転ぶしか考えられな・・・」

皆まで言う前に祈は案の定ズザーーーッ!!と転んだ。

それどころか顔面スライディングした。

 「うわーーーーーッ!?大丈夫か祈姉!!?」

慌てて駆け寄る咲。祈はプルプルと震えている。

 「大丈夫・・・大丈夫・・・でも痛いわ・・・」

半べそをかきながらゆっくりと顔を上げる祈。額から血が垂れている。

 「あー、血出てるじゃんか・・・。手当てしないとな。

  せっかくの顔が台無しだし」

咲は苦笑いした後、霊羅の方へ振り返り声をかけた。

 「ちょっとオレたち中入ってくるから、翼と鹿の様子見頼んだよ」

 『了解』

霊羅がピースサインをしながらテレパシーをしてくれたので、

咲はにっと笑いながらピースを返す。

そして2人は大木ハウスの中へと入っていった。


これから何が起こるのかも知らずに・・・



 『・・・?』

霊羅が訝しげに辺りを見回すと、

いつの間にやら翼と鹿くんの姿が見えなくなっていた。

 『消失・・・』

早速か・・・というようにはぁ・・・と溜息をつく。

全くどこまで追いかけっこに行ったのやら。

ブランコからスッと降りると、霊羅は翼と鹿くんの捜索を始めた。

森は彼女の家ともいえるべき場所。捜索なんて朝飯前だ。

ほんとに朝飯食べてないけど。

 『翼・・・鹿くん・・・行方・・・?』

森とテレパシーで会話をして、居場所を掴む。

 『把握。感謝』

会話を終えると、霊羅はふわふわとホバリング移動をしながら

目的地へと向かった。



 「ディアー!待つなのですー!・・・きゃ!?」

翼が突然小さな悲鳴をあげたので、何事かと鹿くんは振り向いた。

 「どうしましたか、翼さん!」

 「枝にリボンが引っかかっちゃったのです・・・!」

枝が密集している所を走ったからだろうか、

翼のツインテールのリボンが両方とも枝に引っかかってしまっていた。

 「うーん、うーんっ・・・!

  絡まり方が見えないからどうしようもないのです・・・」

 「あわわ・・・これは困りましたね・・・。

  私は指がないから解けませんし・・・」

翼がしゅんとしながら、鹿くんは困ったように言う。

 「ちょっと待っていて下さい!誰か呼んできますから」

 「お願いするなのです!」

こくりと頷くと、鹿くんは大木の方へと駆けて行った。



 『鹿くん』

 「あ!霊羅様ッ!」

ぱぁぁと頬を赤く染め、嬉しそうに鹿くんは霊羅に近づいた。

 『・・・。』

霊羅もどことなく嬉しそうな様子だ。鹿くんが無事で安心したのだろう。

 『翼。何処?』

しかし、一緒に居たであろう翼の姿が無かったため、

霊羅は頭に?を浮かべながら問う。

 「翼さんはですね、今枝にリボンが引っかかってしまっていて・・・

  あちらにおります」

鹿くんが鼻先で今来た道を指す。鼻ぺったんこだけどw

 『理解。案内』

 「はい!こちらですっ」

元気よく鹿くんが頷き、霊羅を背に乗せ翼のもとへと走った。



 「・・・ん?霊羅??」

 「どうかしたの?咲ちゃん」

大木ハウスを出た咲は、霊羅の姿が見当たらないので不思議に思いながら呟いた。

それを聞いた祈が、キッチンの窓からひょこりと顔をのぞかせて問う。

咲は心配そうにしている祈に、笑いかけて言った。

 「ちょっと霊羅まで失踪しちゃったっぽいんだ。

大方、翼と鹿がいなくなったから探しに行ったってとこなんだろうさ。」

 「なるほど~・・・。さすが咲ちゃんね~」

にこにこと微笑む祈。その様子に咲はくすっと苦笑した。

 「祈姉・・・今はオレの推理に感心してる場合じゃないだろ??」

 「そ、それもそうね・・・」

えへへと笑う義姉にそうだよwと返し、咲は駆け出した。

 「なんか心配だし、オレも探しに行ってみる。祈姉は朝食作っててくれ」

 「え~・・・咲ちゃんまで行っちゃうなんて・・・

  私一人ぼっちで寂しいわよぅ・・・。

でも、わかったわ。私は私の役目を果たさないとだものね~」

 「おう!料理出来るのは祈姉だけなんだしな!すぐ戻るから!」

祈の了承を貰えた為、咲は早速捜索を始めることにした。

 「(こっちっぽいな!)」

100%勘で行き先を決めた。おいw



 「ディアー・・・まだなのです・・・??

  ミーはもう待ちくたびれたのです・・・」

げっそりとした様子で翼は一人呟いた。かれこれ30分は経っている。

 「(そろそろ座りたいのです・・・)」

ずっと立ちっぱなし&リボン繋げられっぱなしだった為、

翼の心身の疲労はかなりのものだった。ゆえに彼女は腰を下ろした。

その時。

リボンが・・・するりと解けた。あ。



 「よーっし、着きました!ここでございます霊羅様」

 『ご苦労様』

鹿くんと霊羅は翼が居た場所へとやってきた。

が、しかし。翼の姿はなかった。

あれ?と不思議に思った鹿くんは、枝に近づいた。

 「おかしいですね。さっきまでここの枝に・・・あ!?」

 『何?』

 「これ・・・翼さんのリボンです・・・」

鹿くんが見つめる先には、枝にぶら下がっている翼のリボンがあった。

 「翼さん・・・一体何処へ行ってしまったのでしょうか・・・」

心配そうに呟く鹿くん。

 『一旦。回収。戻る。』

霊羅は、翼のリボンを手に持ち、大木ハウスへ戻ろうと提案してきた。

 「そうですね。こうしてここに居ても仕方ないですしね・・・。

  でも、霊羅様なら居場所はお分かりになられるのではないですか??

  探しに行きましょうよ」

鹿くんの疑問はもっともだった。霊羅なら居場所はすぐに分かるはずだからだ。

しかし霊羅はふるふると首を振ると答えた。

 『もう。咲。接触中』

 「あぁ、そうなんですか!咲さんなら大丈夫ですね!」

 『安心』

ホッとしたように顔を見合わせ、2人は戻ることにした。


霊羅と鹿くんは知らなかった。

翼は、リボンが取れると大変なことになるということを・・・。

霊羅は居場所だけを確認し、翼が咲と会ったということが分かったので、

状況の確認を詳しくしなくても、まぁ大丈夫だろうと思ったのだろう。

だが甘かった。なぜなら・・・

2人は交戦なうだからだ。



地面に落ちていたものを拾ったのか、先端の尖った木の枝を振りかざしてくる翼。

その絶えることのない連撃を、咲は必死に避け続けていた。

 「だーーっ!!?やっと見つけたと思ったらいきなりなんなんだよ!!」

 「ウフ・・・咲姉様だぁい好きぃ・・・!

  ・・・だからぁ・・・死んでぇ・・・!?」

鋭い突きを、合気道の要領で流し、翼の理不尽な言葉に叫びながら返す。

 「あ、アホか!!なんでオレが死なないといけないんだってーの!?」

まぁ、今の翼の状態になってしまっては、

ツッコミなんて無意味同然なのだが・・・。

それにしても、現状維持に手一杯で反撃に出られない。これは困った。

 「キャハハハ!!!逃げてばかりじゃぁなぁんにも変わらないよぉ~!?」

 「(とにかくリボンが無いともとに戻せねぇな・・・

  ひとまず帰還するっきゃねぇ)」

咲はくるりと踵を返し、猛ダッシュした。

案の定翼は追いかけてくるし・・・。

これなら着いた先で不意打ちなり何なりで怯ませた後で、

リボンを結ぶことができる。

いや、まてよ・・・家にリボン戻ってきてるのかな。ないかも。

いや、あると信じよう。

もしかしたら、霊羅たちがリボン持って帰ってきてるかもしれないし!!

プラスに考えないとやっていられない。

なぜなら、あのリボンはこの世に一つしかないからだ。

 「くっそおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

咲は全力疾走で家に向かった。

こんな追いかけっこはもう二度としないと心に誓いながら。



 『帰宅』

 「ただいま帰りました、祈さん」

 「おかえりなさい~霊羅様、鹿さん♪」

霊羅は真っ直ぐにブランコへ直行し、ぶらぶらと足を振り始めた。

祈は朝食をとっくに作り終えてしまっていたらしく、

外で読書をしながら待っていたのだそうだ。

ところで・・・と、祈が鹿くんに問いかける。

 「咲ちゃんと翼ちゃんは、どうしたのですか?」

 「あ、翼さんと咲さんが合流したようなので大丈夫ですよ。

  もうじき帰ってくるはずです」

鹿くんの返答に、祈はホッと胸をなでおろした。

 「よかった・・・

  どうしたものかと心配していたんですy

 「どぅわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

  きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 「ひいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」

セリフを咲の絶叫で遮られ、彼女に釣られて悲鳴を上げる祈。

咲と翼の恐怖の鬼ごっこを目の当たりにした鹿くんも叫び声を上げた。

霊羅は一人冷静にしている。さすがですw

 「おっしゃっぁぁぁぁぁ!!ちゃんと帰ってきてるな鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!  リボンよこせ!!リボンンンンン!!!」

砂煙を上げながら走ってくる咲は、まさに般若のような形相だった。

鹿くんは恐怖で固まった。

 「」

 「おい鹿ぁぁぁぁぁ!!?」

 『咲。リボン』

霊羅が植物のツルにリボンを持たせ、渡してくれた。それをしっかりと受け取る。

 「サンキュー霊羅ッ!!さすがだな!!・・・よし!!」

走っている勢いを殺し、後ろへ体を方向転換させ、翼を待ち伏せる。

そして、不意打ちでチョップを翼の脳天にクリティカルヒットさせた。

 「!!?」

あまりの痛みに怯む翼。今のうちに!!と、

咲は目にも止まらぬ超スピードでリボンを結びつけた。

 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・翼ッ・・・?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なのです??」

翼が、いつもの語尾を口にする。それを聞いて咲はドッと疲れが出てきた。

 「よ・・・よかった・・・」

 「お疲れ様、咲ちゃん~」

 『驚愕』

祈がまだ息の荒い咲の背中を擦りながらにっこり微笑む。

霊羅は、翼のもう一つの一面に驚いているようだ。無理もない。

 「なのです??さっくんどうかしたのです??」

 「どうかしたも何もねーよ・・・。

  いいか、翼、もうリボン取るなよ・・・マジで・・・」

げっそりした様子で咲が訴える。翼はきょとんとした様子で言った。

 「???なんだかよくわかんないのですが、わかったのです!

  大事にするなのです!」

 「うん、大事にするのもいいんだけど、取るなよ。ほんと・・・」

わかってるのかわかってないのかあやふやで怖い。わかってると信じよう。

 「これで何回目かしらね~」

 「もう数えるの放棄してっからわかんねーや・・・」

ぐでっとしている咲を支えながら、祈は大木ハウスの中へ向かった。

 「さぁ、霊羅様、鹿さん、翼ちゃん、朝食食べましょう~♪」

その声に、霊羅はぴょこんとブランコを降り、

翼は未だ固まったままの鹿くんを引きずりながら集まった。

 「ディアー、大丈夫なのです?真っ白なのです!

  白いディアー、なんだかメルヘンなのですッ!」

 「」

鹿くんは微動だにしなかった。

翼の一面を知ったのも十分衝撃だが、

彼にとっては咲のあの般若のような形相が一番怖かったのであろう。

朝食を食べる間、鹿くんは不自然なほどに咲を視界に入れないようにしていた。

それに腹を立てた咲が鹿くんに掴みかかり、鹿くんが号泣してしまったり、

翼は一人、窓の外を眺め、口をもぐもぐさせながら両手を上に掲げて、

 「きてますなのですきてますなのです

  宇宙からの返信がきてますなのですッ!!」

と電波発言をしている。

そんな様子を、祈は楽しそうに、霊羅は嬉しそうに眺めていたのであった。

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