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スポチ

作者: 荒井 真

犬も猫も両方飼ったことがあるのだが、私はやはり猫の方が好きだ。

犬は犬で好きなのだが、どうにも犬特有の重たい愛情表現がキツイ時もある。

帰宅した時、ご飯の時、お散歩の時。

あんなにも喜ばれてしまうと、なんだかひどく申し訳ないような気持ちにさせられる。

その点、猫は気まぐれな生き物だ。勝手に出て行き、勝手に帰って来る。

犬と猫どっちが好きかという問題は、人間関係にも通ずる所があると思う。

犬のように従順で実直なタイプの人間が好きか、猫のようにマイペースで柔軟なタイプの

人間が好きか。


彼は私の部屋に遊びに来ると、決まってお気に入りの場所(キッチンから入ったすぐの所に

クッションを敷いてよく寝そべっている)に収まり、私の飼い猫タマと遊んでいる。

タマもよく彼にはなつき、今や誰が飼い主かわからないほどだ。

時々、まるで二匹の猫が私の部屋で遊んでいるような錯覚におちいりそうになる。

「今時タマだなんて、古風な名前だね」

「そう? うちの飼い猫は歴代タマだったから」

ペットの名前は記号のようにシンプルな方がいいんだと、昔実家の父が話してくれた。

まるで人間のような名前をつけられた動物は、自分が人間になったと勘違いしてしまう

のだという。そしてそれは、動物にとってとても不幸なことである、と。

「だから、犬はみんなポチって名前だった」

ふぅん、と彼は少し驚いたように目を丸くする。

「そういえば、前テレビでやってたよ。ポチって名前は、英語のスポッティッドから

きてるんだってさ。101匹ワンちゃんみたいな」

うちのポチは雑種で茶色の中型犬で、口の回りだけが黒い。

元気にしているだろうか、ポチ。

「それじゃスポチじゃん」

そんなことも知らず、名前を呼ばれると嬉しそうに尻尾を振るポチ。

「知らなきゃよかった」

「何怒ってるのさ」

「怒ってなんかないわよ」

つい言葉が強くなってしまう。

「かわいそうじゃないポチが!」

なんだか無性に切なかった。

猫型の彼には、きっと理解出来ない感情だと思った。

そして私って実は犬型なんだ、と初めて気づいた。






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