それでも私は君に惹かれた
好きになるって、どういうことなんだろう。
ただ一緒にいるだけで幸せ。でも、相手を理解するのは難しくて、
時には怒ったり、泣いたり、傷ついたりもする。
それでも――人を好きになる気持ちは止められない。
この物語は、そんな“まっすぐな想い”を描いた恋の話です。
私には好きな人がいます。
その人は高身長で、誰からも愛される人気者。
勉強も運動もできて、しかもイケメン。
そんな彼を見ているだけで、胸がドキドキしてしまう。
でも、私は何の取り柄もない“普通の女の子”。
話しかけることすら恐れ多くて、
ただ遠くから見つめるだけの日々を過ごしていました。
ある日、クラスの友達が言いました。
「ねぇ聞いた? ハルト君、彼女できたらしいよ!」
その瞬間、心の中に小さな痛みが走りました。
“そっか……当たり前だよね。あんな素敵な人なんだもん。”
そう自分に言い聞かせて、何も考えないようにしました。
放課後、帰る途中。
食堂の前を通ると、ハルト君とその彼女が話しているのが見えました。
つい気になって、足を止めてしまいました。
「イケメンで優しくしてくれたから付き合ったけど、
あなたって浮気もするし最低な男……。別れて。」
そう言い残して、彼女は立ち去りました。
ハルト君は、辛そうな顔ひとつせず、ただ俯いたまま。
その姿が気になって、私は思わず声をかけてしまいました。
「ねぇ、ハルト君。さっきの話、聞いちゃったんだけど……浮気って本当?」
彼はゆっくり顔を上げて、静かに答えました。
「うん、本当だよ。俺さ、付き合ったら満足しちゃうんだ。」
「みんな勇気を出して告白してるのに、そんな気持ちで付き合うなんて。
ハルト君には、恋愛する資格なんてない!」
そう言い放った私は、自分でも驚くほど怒っていました。
「ごめん……言いすぎた。」
でも、ハルト君は黙ったまま、その場を去ってしまいました。
翌日、ハルト君はクラスで孤立していました。
おそらく、彼女が周りに話してしまったのでしょう。
けれど、どこか寂しそうな背中が気になって、私は近づきました。
「ねぇ、昨日はごめん。言いすぎた。」
「いや、そんなことないよ。俺が悪いんだ。」
「ちゃんと謝ったの? その彼女に。」
「……今さら、なんて言えばいいんだよ。」
「“ごめん”の一言でいいと思うよ。私も一緒に行くから。」
私は彼の手を取って、彼女のもとへ向かいました。
そして、ハルト君はしっかりと謝りました。
「ねぇ、スッキリしたでしょ?」
「まぁ……少しね。」
それから、私たちはよく一緒に過ごすようになりました。
そして、ある日。
「俺、お前のことが好きだ。」
そう告白され、私は泣きながら頷きました。
相変わらずハルト君の“浮気癖”は治っていません。
それでも私は、彼のことが好きです。
恋は、綺麗なことばかりじゃない。
許せないことも、受け入れたくない瞬間もある。
でも、誰かを想う気持ちはそれでも消えなくて、
不器用にぶつかり合いながら、少しずつ形を変えていく。
この物語が、誰かの“それでも好き”という想いに
そっと寄り添えたら嬉しいです。




