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14 猿退治で冒険者デビュー

 俺がギルドで受けたのは猿の駆除依頼だった。

 エラン村から持ってきた狩りの装備で十分だと考えていたが、手持ちの武器が弓矢とナイフだけなのは心許ないかもしれないと考え直した俺は急いで目を付けていた武器屋に駆け込んだ。


 武器屋の中は狭く、奥に繋がる扉の前で店主が座り、柄の部分をバラした剣を手入れしていた。見るからにお高そうな鍔の装飾だ。


 手持ちの資金は17ギル程度。この額を全部使うわけにはいかないので10ギル程度で買える剣を探すことにした。


 武器は剣や槍、斧、フレイルなど陳列されているが、弓矢は無かった。そして各商品には値札が無い。

 値段が商品ごとに書かれているイメージを勝手に抱いていただけに一々値段を聞いて値段の交渉するのかと考えたら億劫になるが仕方ない。

 安そうな剣を探してその値段を聞いてからどのランクの剣を買うか判断しようと思い、安そうな剣を探していると壁に掛けられている抜き身の直刀に目が惹きつけられた。

 昔の日本刀に見られる直刀のような形状ではなく、幅広のブロードソードを片刃にしたような剣で長剣ロングソードの標準からはやや短い。


(これなら峰打ちができるし、刃を相手に押し当てる時に刃の裏を片方の手を添えて押し込むことができるな。)


 武器屋に並んでいる剣はこれ以外は全て両刃だが、調理用のナイフや工作用のナイフが両刃では扱いに困る様に片刃には片刃の利点がある。

 ただし、効果的に扱うにはそれに合った剣術が必要になる。しかしその点は日本の剣道を原型にしている剣術で訓練したので心配はしていない。目下の課題は実戦慣れだけだろう。


「店主、これいくら?」


 さっきまでの煩わしさが吹き飛んだ俺は気になったこの直刀の価格をまず聞くことにした。


「面白い剣だろ?それは20ギル。そこの下に置いてある鞘付きだ。そういう剣を打ってくれという依頼で鍛冶屋に特注で打たせた剣だが、注文した冒険者が受け取りに来なかったんだ。」


「持ち合わせが少し足りない。」

「じゃあ、諦めな。」


 値下げに応じる気は一切無さそうだ。

 小金貨20枚、小銀貨で200枚か。剣の値段を聞いて、長兄は良質な剣を買えたんだろうかと長兄との記憶がよぎる。

 報酬貰って少しは金持ちになった気がしたんだけど、町は物価が高いし、欲しいものが多すぎる。これでは全然裕福になった気がしない。

 これが間に合わせで生きるしかない自給自足の村の生活と金を稼がないと物乞いになるしかない町の生活の違いなのだろう。


 結局、考えた末、金が貯まるまで間に合わせの装備で凌ぐことにした。

 そこで店主に安い剣を3本出してもらって手に持って振り心地は重さなどを確認してから、その中で一番短めの長剣を小金貨2枚で、剣帯を小銀貨2枚で買った。


 それから店主に弓矢を買える場所を教えてもらって、武器屋を出た。

 剣を腰から下げると一人前の戦士になった気分がして気持ちが弾む。足取り軽く弓矢の店に急いだ。


 弓矢を扱っているのは店というよりは工房だった。弓と矢はエラン村から実用に耐えうるものを持ってきたので、お金が貯まったら矢でも買いに来ようと思う。

 今日は場所の確認だけ。

 


 市場でパンと干し肉を一日分買い、買い物を早々に切り上げて門を目指した。

 足早に西の門に行き、そこで待機している門兵に猿駆除依頼の村へのルートを教えてもらった。すると、村の方を指差す。


「あそこに小さく見える荷馬車がその村に帰るから、連れて行ってもらえばいいぞ。」


 俺は門兵に礼を述べてから走り出した。



 走ると案外すぐにロバの荷馬車に追いついた。荷は少なく、布と縄、そして藁に敷き詰められた木箱に蓋を縄で縛られた甕が2つだけ。御者は若そうな男が一人。


「こんにちは。俺はラネ、ギルドで仕事を受けたので村まで同行させてほしい。」

「あー、猿か。お前さん一人?お仲間さんは先に行ってるのか?」

「一人だ。」

「若いの、相当自信があるんだね。」

 そう言って笑う。屈託なく笑う男からは猿駆除に緊迫感は感じない。予想通り危険なものではなさそう。


「荷が少ないから、乗っていくといい。ちゃんとお願いしてな。」

 妙なことを言うと思ったが、「では、お願いする。」と頭を男に下げた。


「違う違う。あれに頼んでくれ。」

 そう言って荷馬車を引いているロバを指差した。


 言われたままロバに話しかけると、ロバはこちらを横目で見返して口をモゴモゴと動かした。

「じゃあ、乗りよー。」

 男にそう言われると俺はゆっくりと進んでいる馬車に乗り込んだ。ロバが乗ることを認めてくれたってことなのだろうか?俺にはよくわからなかった。



 男は道中が退屈なのか良く喋る。

 俺はエラン村での暮らしを話し、男は商売のことを話す。


 村との行き帰りで危険なことはないという。ロバは大人しそうに見えても狼よりも強いので、狼や野犬が襲ってきても自由にしてやれば蹴散らすんだとか。

 初耳だった。ロバは強いらしい。

 ロバの話をしていると、ロバは機嫌よく嘶いた。

 このロバ、ひょっとしたら人の言葉が分かるのかもしれない。


 日が高くなった頃、町に向かうロバの荷馬車が近づいてきた。その荷馬車とすれ違った時、男と相手は声を掛け合う。どうやら同じ村から来た同僚のようだ。

 俺は振り返り、離れていく荷馬車の積み荷を見ると、全体に布が掛けられていた。


 すれ違った荷馬車の男もそうだが、彼らは村から荷を運んで売る仕事をしているのだとか。

 日帰りできないのでカルタポルトで一泊して何か必要なものがあれば買い付けて村に帰るらしい。ちなみに今回買い付けた甕の中身は魚醤だとか。

 果樹園では前世で言えば桃に近い甘い果物プラーが採れる時期で、すれ違った荷馬車に積んでいるのもプラーの実らしい。この季節はこのプラーを村から町に運ぶ仕事ばかりだという。

 数年ごとにプラーの実がちょうど食べ頃を迎える直前に赤い毛の猿の群れがやってきて荒らしていく。

 それを駆除するのがギルドに出された依頼だという話。


 村にも狩人がいるのだが、肉は不味いし、毛皮は毛が抜けやすく町では売り物にならない、そして何よりも狂暴なくせに賢くて覚えた相手に報復もしてくる。

 厄介だから、これは冒険者案件なんだとか。

 冒険者を雇っても採算が合うほどにプラーの儲けも被害も大きいってことなのかもしれない。


 ロバの荷馬車に乗って揺られること数時間、日も暮れかけた頃、村に着いた。荷馬車の男はプラー販売の報告をするからということで村の代表者と言われる依頼主の下に連れて行ってくれた。

 どうやら彼の運んだ積み荷の荷主と依頼人は同じ人物ようだ。


 依頼主は果樹園の経営をしている中年の男で、お互いに自己紹介をしてから、寝泊まりする建物に案内された。

 そこには、俺以外に3人の青年がいた。ギルドにいてこの依頼を先に受けた3人だ。

 夕食は一緒、寝るための部屋は彼らとは別々だそうだ。

 明日、朝食後に猿が悪さしている果樹園に案内するということを決めて去っていった。


 

「オレはラネ。よろしく。」

 ここは先手必勝。名乗って挨拶をする。

 これで「おいテメー、ナニモンだ?こらぁ。」という喧嘩腰だった場合に対処する。


「オレはモーナ。」

「ディルだ。」

「オレはゴルだ。」

 長剣を腰に帯びた大柄な奴がモーナで、俺より背が低い奴がディル、そして槍を自分の肩にかけている細身の背高のっぽがゴル。


「あんたら、カルタポルトのギルドにいたな。」


「あの時いたのか?」

 俺の言葉に怪訝そうな顔をするモーナと名乗った青年。


「ああ、ちょうど割のいい依頼を探してるところだった。」


「へぇ?それがこれ?」


「エラン村から出てきてギルド登録したばかりだが、違約金が発生しない金払いが良い依頼がなかなか見つからなくてこの猿駆除の仕事を受けたんだ。」


 それを聞くや鼻で笑う様に「一人であいつらを仕留める気?」と聞いてくる。


「君らは以前にも経験があるのかい?」

 相手の態度に少しムっとしたが、狩人が嫌がる仕事だから難しいのかもしれないと思い直し、謙虚に情報集めすることに切り替えた。


「ああ、こいつの故郷でも似たような猿の群れが出るんだよ。だから、この手の依頼はギルドでは初めてだがやり方は知ってる。あんたみたいに一人で弓を使うなら接近戦で複数に狙われる。あんたが剣や槍を構えるなら石を木の上で距離を取りながら投げてくる。」

とモーナ。


「そういうこと。まあ、お前がどんだけ強いかは知らないが猿の連携への対処は一人じゃ厄介だぜ。」

 ゴルという青年にそう言われて3人の装備を見る。

 

 クロスボウと長剣、小さめの弓と短剣。小さめの弓と短槍。各自遠距離と近距離両方で対処できるような装備。これなら猿の群れがどう動こうと誰も遊兵状態にならない。


 猿ってのは複数が木々の枝を飛び移りながら森林という空間を利用して戦うらしい。

 それに対応するには、一方向からの敵を足止めるような盾役は機能しにくい。

 個人個人で得意不得意はあっても盾役、切り込み役、後方支援といった役割分担をするのではなく、各自が常に個人の戦力として動くみたい。

 これが現実の戦闘への備えなのだろうなと一人で関心してしまう。


「ウサギや鹿を狩るような仕事と勘違いしていたようだ。少し見学させてもらっていいかな?」


「あんたの持ってきた矢を見せてくれ。」

 モーナからの返事は期待したものとは違っていた。俺は自分の矢筒をモーナに渡す。


「ああ、これなら俺らの矢と区別がつく、こちらを見ながら自由に討伐に参加するといい。あんたが仕留めたものはあんたの報酬とするのというのでいいか。」

 モーナは矢を一通り確認し終わるとそう答えた。

「?」

 俺はモーナが何を言いたいのか飲み込めないでいると、

「やつらは賢い連中で、大きく群れにダメージを与えられるとここら一帯から群れごと逃げ出すんだ。そうなると同じ群れは数年ここに近づかない。そうなるともう一匹も退治できないってことになる。だから逃げる判断をするまでにどこまで多く狩れるかが大事なんだ。」

 そう教えてくれる。

「見ているだけだとおそらく一日目で猿どもは逃げ出す。ここまで来て無報酬は嫌だろ?」

 ゴルはそう付け加えた。

 のんびり構えていたら稼ぎ損ねるということらしい。

 悪い奴らではないらしい。


 夕食は簡素なものだったが、熟したプラーも添えられていた。これは飛び切り甘くて美味しかった。

 


 翌日、依頼主に案内してもらって被害が出ているという果樹園まで来た。

随分と広い果樹園のようだ。

 果樹園は森に隣接していて、猿はそこから侵入してくる。森と果樹園の植生の違いが遠目にもわかる。あそこが猿と人がせめぎ合う境界線らしい。


「キーキィーキィー」

 遠くで猿たちの鳴き声が響く。


「後はお任せします。狩り終わったら死骸を村まで運んできてください。」

 そう言って足早に去ってしまった。


 俺は背負った荷物をどこに置いておこうかと荷物を降ろしてキョロキョロしていると

「荷物は奪われることもあるから、持ったままがいい。それと首を噛まれるなよ。」

 モーナがそう言う。よく見ると、3人とも首に布を巻きつけて守っている。

 俺も慌てて、アビーから貰った首巻を頭から被った。



 猿はすぐに見つかった。隠れる気もなくプラーの実を食べ散らかしている。

 目視できるだけで10匹程度。

 前世の知識で言えば、どの猿にも該当しない。目の前にいるそれはチンパンジーより少し大きめで尾が長い。毛は褐色。プラーを齧る瞬間に大きな牙が見え隠れする、いかにも獰猛そうな獣だった。


 3人が弓に矢をつがえて猿に向けて構えようとすると、猿たちは一斉にこちらを見た。


 矢が放たれるが早いか、飛び跳ねるのが早いか、反応は早かった。しかし1匹が木から落ちた。


「キーキー」

 猿の誰かが発した甲高い鳴き声が響き渡ると、森の方で葉が擦れる音と何かが騒めく。


 その後は青い実やら、石があちこちから投げられてきた。

 3人は矢で応戦するも、石つぶてを避けながらでは中々当てられないようだ。

 いつの間にか明らかに猿の数は増え、周囲を囲まれている。

 戦局があっという間に変化していくのに理解が追いついていなかった俺もようやくここで参戦することにした。



「クソっ、当たらねぇ。」

 あまりの苛立ちにお下品な言葉が口を衝く。

 猿は俺たち人間より遥かに運動神経と反応速度が優れている。矢の軌道もわかっているように着弾する瞬間に避ける。

 それでも、3人は着実に1匹ずつ落としていく。5匹くらいは最低でも手負いにしただろうか。


 どうやっているんだろうと矢をつがえながら青年の一人を見た。

 無口だったディルは、矢を2本つがえて弓を引く。放った矢は一発命中した。

 どうやら、一発は猿を狙い、もう一発は猿の移動予測場所を狙っているようだ。


 曲芸みたいな技を前世も含めて俺は初めて見た。


 他の青年を見たが、クロスボウのモーナは幾分ぎこちないが、ゴルが近くに居て牽制しながら弓の弦を引いている。

 ゴルが足を滑らせた時、猿数匹がゴルに飛び掛かろうとした。一瞬の隙で致命傷を与えようとする猿に驚いた。

 俺は矢を素早くゴルに向かってくる一匹の首を射抜く。

 ようやく一匹倒した。


 俺は引っ掻かれたり噛まれるだけで何かの病気に感染しそうなので、終始弓で応戦していたが猿は動き回っていて狙いが定まらず、まだ次の戦果が上げられない。

 3人を見ると、矢はそろそろ残りが少なくなってきている。

 それなのに軽く見積もってもまだ20匹はいる。


(これ下手したら俺たちが狩られるんじゃないか?)


(初めのクエストで全滅なんてシャレにもならん。)


「もう少しでやつらは逃げる。」とモーナ。


「逃がすな!一匹でも多く仕留めろ。」とゴルが叫ぶ。


 追い込まれているのはこっちだと俺は思ったんだが、3人は傷も打撲程度でまだまだ元気だった。


 俊敏な猿相手に弓では分が悪いと思った俺は、木の上の猿を何とか接近で仕留められないか考え、さっきのゴルに襲いかかろうとした動きを思い出していた。


 一か八か、やってみるか。


 少しずつ開けた場所に矢を構えながら移動して、猿の石つぶてが腕に当たった瞬間、

「あっ!」

と大きな声を出して左半身から横に倒れてみた。


 俺が倒れると、猿たちはトドメを刺そうとこちらに走って向かってくる。俺に噛みつこうとしたところを俺は新品の愛剣で仕留める。もし噛まれたら霊薬の素を飲めばいい。

 これが俺の即興で考えた作戦だった。


 あと一秒というところで、俺に襲いかかろうとした猿が3匹、矢に打たれる。途端に、走ってきた猿は俺から遠ざかってしまった。

 

「おい、大丈夫か!?」

 ゴルがこちらに走ってくる。

 俺は起き上がり、目をゴルと合わせ、剣の柄を握りしめて苦笑いする。

 恥ずかしかったのだ。

 俺の倒れたふり作戦の意図を察したのか、ゴルも笑った。


「キーキー」

 笑い声に形勢の逆転が望めないと分かったのだろうか。猿が退いていく。殺気と音が引いて行って俺にも終わったことがわかった。


「終わった。だが気を抜くな。警戒しつつ、死骸を集めるぞ。」

 モーナが指示を飛ばし、俺たちはそれに従った。



 彼らは使えそうな矢を回収していた。矢も買うと結構高いのだろう。

 戦闘場所の周囲を隈なく探すと全部で14匹の死骸があった。その内で俺が仕留めたのは1匹。3人は合計13匹。

 今日のこの成果の差を見て、俺は長兄の狩人のスキルが羨ましいと思った。


 駆除なんて書かれているからこっちが一方的に狩る側だと考えていたが、やるかやられるかの戦いだった。猿は意外と凶悪だった。

 もし1人で挑んでいたら、囲まれて殺されていたかもしれない。殺されなくても即霊薬の素を飲むハメになっただろう。

 3人が居てくれて良かった。



 村に戻って死骸の頭数を確認してもらい、合計14匹分の討伐証明を依頼主から貰って、明日に猿が来ないかを確認してからカルタポルトに帰ることにした。

 

「これなら来年は来ないでしょうな。」

 依頼主は死骸の数を数え、満足そうにしていた。


 次の日に4人で果樹園を広範囲見まわったが猿は現れず、これにて任務終了となった。

 明日の朝に歩いて4人で一緒にカルタポルトに帰ることに決まり、夕食に豪華な食事と酒が振舞われ、俺は充実感を感じながらいい気分で寝付くことができた。



 朝、依頼主に別れの挨拶をして去る時、帰り道に食べられるようにパンとチーズ、そしてお土産に袋いっぱいのプラーを貰った。

 エラン村はあんな凶悪な魔物は出てこないけど、ここは町が近いせいか比べ物にならないほど豊かな気がした。



 カルタポルトまでの帰り道、今回の猿駆除の依頼は意外と儲かったと3人はホクホク顔だった。

 確かに3人が4日間で小銀貨130枚になるのなら悪くない仕事だ。

 俺は小銀貨10枚だけど。



 道中、俺たちは速いペースで歩きながらいろんな話をした。3人はとても機嫌が良くて、俺は昨晩の酒の席での会話を続けているような気分だった。


 例えば、猿の射抜く方法を煽てながら聞いてみたら話してくれた。

 あの猿はどこかに足を付けている場合、矢を放っても躱してしまう。だから、飛び跳ねた直後に着地するまでの動きを予測して矢を放つらしい。慣れれば群れを相手に数匹は仕留められるようになるという。

 簡単なことのように話すが、かなりの高等技術である。


 そう言えば、飛ぶ鳥を射抜いていく長兄と気付かれない状態で枝に止まった鳥を狙うしかない俺には大きな差があった。こういうセンスの違いはスキルの有無なのだろうか。それとも経験の差なのだろうか。



 ディルは昨日酒を一緒に飲んだせいか、普通に会話してくれるようになった。人見知りであって、無口ではなかったようだ。

 それで彼が猿を仕留める時に見せた曲芸のような二本の矢を放つ技、あれについても聞いてみた。

 彼曰く、スキルのおかげだという。

 しかし、そのスキルは狩人(ハンター)ではないとか。

 狩人ではないのなら、弓兵(アーチャー)射手(シューター)かと推察を交えて聞いてみた。

 笑いながら否定された。

 どうやら本当にあの技の見た目通り、曲芸師としての弓使い(ボウマン)らしい。そういうイメージなんだとか。

 馬に乗りながら弓を射ることも彼にとっては造作も無いことらしい。

 彼は自身のスキルを隠す気はないようだ。羨ましい限りである。



 俺の話もした。エラン村で算術の教師のスキルに目覚めたが、冒険者として旅がしたいのでギルド登録したとかも。俺の嘘の設定で申し訳なかったが。


 そう話すとゴルは算術の才能を羨ましがったが、算術だけでは金持ちにはなれないと言うと残念スキルと認定するに至った。

 それはちょっと極端な気もするが、案外と間違っていない気もする。

 算数教師や数学教師が大金持ちになった話は前世の記憶には無いのだから。



 数日前に出会っただけの俺に3人はいろいろ教えてくれた。

 若くて擦れてないというか、性格が良い奴らというか、こいつら俺と同じで田舎者確定だと思った。


 実際、話を聞くと、彼らは半年前にカルタポルトにやってきた田舎者だった。

 ディルとゴルの2人が同じ山村育ちでモーナが隣村の大工の息子。全員幼い頃から友人らしい。


 話に夢中になって時間が過ぎるのが早かったのか、気づいたら日が傾く前にカルタポルトの白い町が遠くに見えるところまで来ていた。



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