9.えっ!王妃様とのお茶会ですか
秋深い季節。オークションにより元商家の子息子女の兄弟を雇う事が出来た。兄のアグニは18歳で幼い頃から商家で見習いとして働いていたため商売としての知識を十分に持ち合わせている。妹のマロンは17歳で此方も幼い頃からの教育が十分に行われていたようで所作は貴族の令嬢と見間違うほど綺麗であった。
他にも資金が可能な限り雇うことが出来た。
ここまで順調に事が進んでいる。
次はPRね。
そして今日は初めての王妃とのお茶会。言い換えれば婚約者候補達との顔合わせの日。新商品のPRには持って来いのばね。
「初めましてグレイス侯爵家長女エマ・グレイスと申します。此から婚約者候補として宜しくお願いします」
「初めましてですわ。私はテキサル侯爵家長女ラミーユですわ。此からも宜しくですわ」
●ラミーユ・テキサル
アメリア国北西部の国境沿いを領地とするテキサル侯爵家長女。テキサルの国境向こうのナガン帝国は何度か侵略行為を行っており、その都度国土を守ってきた堅守の要となっている。名産は『キャベツ』『大豆』。また、エメラルドやルビーの鉱山があり、宝石産業として盛んである。
「私はエリュード公爵長女でありますリーサオーラと申します。私、エマ様とは初めましてではありませんわ。実はレオナルド皇太子様の誕生日パーティーに私も参加しておりましたわ」
●リサオーラ・エリュード
アメリア国北東部に領地を有する三大公爵家の一つ。公爵家長女。東部は国境に面しているが国境向こうは大火山が連なり周辺は神の森として周辺国より神聖な土地として不可侵条約が結ばれているため国境の警備は緩めである。名産は『果樹』『酪農』である。
「今日は私のお茶会に付き合って下さりありがとうございます。皆さんはレオナルドの婚約者候補として日々勉学に負われ大変かと思いますが、今日はゆっくりしていって下さいね」
「ありがとうございます」
とは言うものの王妃とのお茶会で心が休まるわけない。これなら領地で勉強していた方がまだ休まる。マナーの勉強は例外だけど。
「皆さんとお会いするのはレオナルド様の誕生日パーティー以来ですわね。ラミーユさんは初めましてですよね。」
「はいですわ。お会い出来て嬉しいですわ」
「私も良かったですわ。暫くするとラミーユ様とエマ様には会えなくなってしまいますから」
「どういう事です?」
「テキサルやグレイスは冬になると雪で王都までなかなか出てこれなくなりますでしょ」
「なっ!」
「そうなんです。今年はまだ間に合いそうにないので諦めるしかないですね」
「今年は?」
「ええ。今、魔道具を開発中でして、上手く行けば街道沿いだけ雪を解けさせる事が出来ます。これをカディア王国まで繋げれる計画ですので、これによりカディア王国との物流の取引を一年中行う事が出来ますわ」
「ま、真ですか?」
此には王妃が驚いている。
それはそうだ。隣国カディア王国との交流は雪溶けの5月~12月で一年の1/3は雪で遮断されてしまう。其が可能となると言う事は国としても重大事項となる。
「まだ開発中なので確かではないですが、似た魔道具〔湯沸し器〕を侍女の方に渡しておきますのでお使い頂けると嬉しいです」
「湯沸し器?」
「はい。ボタン一つ押すと『微温湯』、二つで『熱湯』が出る魔道具です。取り付け方は説明書も入っております」
皆が魔道具に驚かれている中でリナが近づき本日の茶菓子として持ってきた物を手渡してくれた。
尚、リナを今回のお茶会に誘ったら「えっ!王妃様とのお茶会ですか」と気が気でなかったようだ。
「エマ様、こちらを」
「そちらは何かしら?」
「こちらもグレイス領で売り出す事となりますデザートです。お茶会のお茶菓子の一つとして合うのではと思い持って参りました」
お茶菓子として持ってきたプリンを毒味役の侍女が一つとり口に入れた。
「こ、これは・・・」
「どうしたの?エマさんもしかして・・・」
「す、すみません。誤解を招くまねをしてしまいまして。あまりにも美味しかったため言葉を失ってしまいました。毒は入っておりませんでしたので安心して召し上がって頂いても大丈夫かと思われます」
「そ、そう?」
「私も一つ頂きますわね」
「リーサオーラ様!」
「それでは私も」
「王妃様も!わ、私も頂きますわ」
「「「!!」」」
「なんて美味しいのかしら」
「プルンといった食感、茶色い部分がほろ苦く甘い部分と交わると後味も良くなり最高ですわ♪」
「王妃様、婚約候補の皆さんどうかしましたか?」
「「レオナルド様!?」」
「あらレオナルド。あまりに遅いから参加したくないかと思ってしまったわ」
「すみませんお母様。ご令嬢の皆も待たせてしまって申し訳ない」
「そんな、気になさらないで下さい。レオナルド様もプリンどうですか?」
「プリン!?」
「グレイス領で売り出される新しいデザートらしいですわ」
「開発は私ですが本日は侍女のリナが作りました」
「エマ嬢が?以外だな~」
以外!?
レオナルド皇太子には私がどういう人間だと思っているのだろう。少しカチンと来たけど笑顔笑顔。
「エマ嬢は冒険者したりしているかと思ってたよ」
「レオナルド!失礼な・・・」
「あっ!そちらも登録済みで依頼も何回か達成しております」
「「「えっ!」」」
「やっぱりエマ嬢らしいね」
私らしい?冒険者しているのが私らしいっていう事はレオナルド様の中での私は暴漢を退治したあの時の私なのね。
「ところでエマ準男爵、『シャンプー』と『リンス』はまだありますか?」
「そういえばエマ様は準男爵でしたわね。爵位を付けて呼ばず申し訳御座いませんでした」
「いいえ、今まで通り爵位なしでいいですよ。王妃様、『シャンプー』と『リンス』は帰りに皆様にお渡ししようかと思っておりましたので後で侍女の方に渡しておきます」
『シャンプー』と『リンス』は商品化したと同時に王妃に献上品として渡していた。そろそろなくなる頃かと思い新しいモノを持ってきていた。
「そう。楽しみだわ。あれのお陰でガルディアも喜んでいたわ」
「・・・」
「どうされましたかリーサオーラ様!?」
「エマ様、エリュード領と街道を結びませんこと?」
「はい!?」
「エリュード領からグレイス領に行くのに一度下ってから本街道に出て行くようになりますから一月以上ほどかかってしまうでしょ。でもエリュード領とグレイス領は隣接した領ですから街道を作れば1日程度で着けると思いますの」
「リーサオーラ令嬢!?」
「あらエマさん、私の事は「リサ」と呼んで頂けると嬉しいわ。それと令嬢や様もなしでもっと親しくなりましょ」
「え~と、リサさん。街道となるとかなり大変かと・・・」
「大丈夫ですわ。エリュード公爵家が全面的に行うように私が強迫・・・お願い致しますから」
(今、強迫って言いませんでしたか?)
「ラミさんはどう致しますの?」
「ら、ラミさん!?」
「あら駄目かしら?」
「いいわね。私もリサさん、ラミさんと呼ばせて貰うわね」
「お、王妃様」
翌月、グレイス領に戻るとお父様宛にエリュード公爵から手紙が届きエリュード公爵側が全面的に出資する事で街道を繋げたい旨の内容が届いた。
どうやらリーサオーラによるエリュード公爵への強迫まがいなお願いが上手くいったようだ。
「エマの発明した商品は想像以上に価値があったようだ。エリュード領の領都と我が領都が直接街道で結ばれると1日程で行き来することが出来るため物流の流れが大きく代わってくるだろう」
エリュード領とグレイス領の間は比較的に雪が少ないこともあり冬の三ヶ月の期間で街道が本当に出来上がった。リーサオーラ恐るべしである。
【エマ・グレイス】
8歳 女性 Lv5
職業 〖貴族〗 適応魔法 闇
体力 50
魔力 50
力 15 守 6 速 6 知 30
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv3 槍 Lv1 斧 Lv1 弓 Lv3 鞭 Lv1 拳Lv10
拳豪Lv1
スキル 〖浮遊 Lv5〗〖収納 Lv5〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
魔法ギルド ブロンズランク
商業ギルド Hランク
冒険者ギルド Hランク