ハーミーの家族への思い
谷底の調査からエルフの里に行く事になったエマ達は、エルフとドワーフの関係性の回復を図るためにドワーフ国へ向かう。
そして、エルフとドワーフの因縁の切っ掛けがハーミーさん絡みであった事が解った。更に、それはドワーフの部族の派遣争いとハーミーの実家、マッケンフィールドの虚偽によって起きた事が解ると、エルフ国の王はマッケンフィールド家を追放処分とした。
~ マッケンフィールド一族 ~
エルフ国の東の森を治めるマッケンフィールド家。
60年にも渡るドワーフ国との関係悪化がマッケンフィールド家当主の虚偽が原因であったことが判明。60年間、ドワーフ国との国交を遮断させた罪で捕らえられるた。証拠集めのため執務室などを捜索したところ、賄賂や不正取引、奴隷売買などちょっと捜索するだけで次から次へと罪が露となり、あまりにも酷い有り様であったため、マッケンフィールド一族全員が聖国への追放処分となった。
聖国はエルフを魔物と位置付けており、討伐対象とされている。そのようなところへの追放は死刑宣告をされた事も同じであった。
彼らは追放される日まで王城の地下牢屋に収監されていた。彼らは違法で貯めたお金で贅沢三昧な生活を送って来たが、今は牢屋の中でパンとスープが一日一食与えられるだけとなっていた。
この日も一日一食の食事をお終え、次の食事の時間が待ち遠しくしていると、彼らの元に客人が訪れる。
監視から「客人だ」と、伝えられ、久しぶりに知らない者と会話が出来ると胸を驚かせながら待っていると、訪訪れたのがハーミーであることが解ると、明白に体中の力が抜け落ちるように崩れおちた。
「なんだ、我々を笑いに来たのか?」
「そうですね。60年前に一族から追い出された私が、今や一族の代表となって、追い出したあなた方が追放処分されるんですもの、可笑しくありませんか。まー同じ血を引くものとして恥ずかしいところもありますけど」
「同じ血を引くものか・・」
「ええ、よくもあれだけの罪を重ねられたものだなと呆れてしまいますわ。折角、怪しい取引の邪魔したのに無駄に終わってしまいましたわね」
「まさか、我々がこうなる事もお前には見えていたのか?」
ハーミーは実の父親の馬鹿馬鹿しい発言に呆れ返って溜め息が止まらない。本当に自分の血の半分は彼から来ているのかと己を疑いたくなってしまった。
「そんな未来が見えるのでしたら、とっくの昔に貴方達に引導を渡しておりましたわ」
「引導か・・・」
「今日、私が来たのは難しい事ではありませんわ。こちらの腕輪を着けて頂きたいの」
「これは・・・」
「従属の腕輪よ」
「!?」
「貴方達は私の下僕になって貰うわ。『私の言う事を聞く事』『私への反逆行為は禁止』『このルールは私の仲間にも適用する』の以上よ。これに従う気があるなら着けて頂戴。嫌なら別にいいわ。聖国に行くだけですもの」
「やはり、やはりお前は悪魔の子だ!お前さえいなければ・・・」
「ねぇ、聞いてる?私は腕輪を着けるか、着けないか聞いているのよ?別にいいわ、次から余計な事を喋ったら着ける意思なしとみなして契約無効にすらだけだから」
答えは既に出ている。
『死』か『奴隷』かと問われれば奴隷を選択するものの方が多い。特に目の前にいる者達ほど生に対する執着心が激しい。
彼らはハーミーを睨みながら腕輪を着けた。
「よく出来ましたわ。後で迎えに来ますわね」
ハーミーはもう用はないと牢屋を後にする。牢屋の出口にはエマが待っていた。
エマが立っているところまで彼らはとの会話が聞こえて来ていた。
なのでエマは思う。
「そんな役回りですね」




