モグラ族三人衆
私の名はセバス。
長年、グレイス侯爵家で執事を勤めておりました。そろそろ息子に仕事を継がせようと考えていたところエマお嬢様からのお誘いでエマ商会で働いております。
そのお嬢様から次は島の人事管理を頼まれたのですが、最近のエマ様は、訪れる度に見知らぬ者を連れて来て参ります。
アルルカン帝国と言う遠い国のの国王や一流冒険家のハーミー様など、連れて来られる者は大物ばかりでございます。そして、本日エマ様と一緒に来られたのは、何と言いますか、人ではないお方を連れてこられました。
全身毛むくじゃらで手の爪は何かを抉るためなのか、硬く尖っており、お顔は・・・モグラのようでした。
彼がエマお嬢様と一緒に現れた時、私は手に持っていた紅茶を落としてしまいました。一生の不覚でございます。
「セバス、こちらの方は獣人のモグラ族の方で左からモグラム、モグロス、モグダラさんよ。彼らに来て貰ったのは・・・」
~ モグラ族の巣穴 ~
「先程のお嬢さんじゃねぇか、エルフの里に向かったんじゃねぇのか?」
「モグラム!俺達の言葉は、あのエルフがいなけりゃ解らねぇよ」
「そう言えば、そうだな。グワハハハハハ!」
「ごめんなさい。言葉は解るわよ」
「な~~に~~!!!」
エマは腕に着けている翻訳機は非常に便利なものである。でも、レオナルドに内緒の魔道具のため、彼らの前ではブレスレットを外していた。
「実は貴方達にお願いがあって来たの」
「お、お願いってなんだー」
「モグラ族の皆さんは穴を掘るのが得意なようで、実は私達は砂金を発見致しまして、砂金が流れて着ていると思われる山を発見致しましたが、私共には穴を掘る技術を持ち合わせていないため、手付かずとなっております。そんな中でモグラ族の皆様にお会い致しまして、私共の仕事を引き受けて頂けないかと相談に来た所存でございます」
エマは説明をした後に契約の指輪を彼らの前に置く。
「ここから先はこの指輪を嵌めていただく必要があります。契約に了承して頂けるようでしたら、この指輪を嵌めて下さい」
モグラ族は顔をヒソヒソと話し合っている。時々、『胡散臭い』『騙されてる』などのワードが漏れて聞こえてくる。どうやら断られそうと半ば諦めかけていたところ、一人のモグラ族が手を挙げた。
「俺が行く!」
「モグラム!?」
「モグロス、お前だって外の世界を拝んで見たいって言ってたじゃねぇか!それにモグダラ、お前もたまには違った場所も掘ってみてぇって言ってただろう」
「「た、確かに・・・そ、そうだな・・・よ、よし、俺達も行くぞ!」」
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「と、言う訳なの」
エマはモグラ族の三人に来て貰った経緯をセバスに説明した。セバスも、まさか谷底に彼らが住み着いているなど思わなかったと思う。
セバスは、どうにかエマの説明を理解する事ができた。そして、彼の鋭く尖った固そうな爪を眺めた。
「確かに、その爪ででしたら固い岩も砕けそうですね」
「それだけじゃないわ。彼らは鉱石がどの辺りにあるか解るのよ」
実際にどうやって掘り当てているのかは解らない。もしかしたら、立派な髭から微弱な電波が発信され、その電波の反射具合で解るのかもしれない。
エマは彼らを金山と思われる岩山に移動する。すると、モグダラが目を大きく見開いて呟く。
「こ、こりゃすげぇー、金鉱石がわんさかとあるぞ!は、早くここを掘らせてくれ!」
「今は駄目よ。私達の調査が終わってから向かいにくるわ」
エマは1度、彼ら巣穴に戻す。そして、今回の調査が終了した後は金山の調査へと向かいに来る約束を交わした。




