トップランカーの秘密
エマは島に訪れた。だが、今日のエマには皆が見たこともないが人物が隣にいる。
皆は見たことはないが誰なのかは解った。
その者は見た目からしてエルフであることが解る。そして、アメリア国にエルフは一人しかいない。そして、そのエルフは国王に匹敵するほど有名な人物であった。
アメリア国唯一のトリプルAランカーで、天帝のリーダーであるハーミーだ。
だが、そのような人物がなぜエマと一緒にこの場に現れたのかが解らず、共にいるエマも何処か様子が可笑しい事に気付き、セバスを始め島の者達が困惑した。
時は遡る。
エマはアメージアの爪痕に向かう道中に一度島に戻った。
その時は天帝の女性陣と同じコテージで夜を過ごしたが、自身の部屋で転移していたため、まさか見られていたとは思わなかった。
次の日、エマが同じように自身の部屋に戻ろうとすると、天帝のリーダーのハーミーに呼び止められた。
「ちょっと、天帝とエマ商会で直接取引の話をしたいから少し部屋に入れて貰っても良いかしら?」
エマは嘘だと気付く。そんな話し合いは皆がいるなかでも出来るし、態々このタイミングでする必要はない。それにハーミーの笑みには何処か見透かされているような恐ろしさがあった。
『ちょっと体調が・・・』とか、嘘を着いて彼女の申し出を断るなど彼女を部屋に入れない選択肢はあるが、彼女の笑みは何処か嘘が見透かされる恐ろしさを感じたため、エマは「ええ、どうぞ」と彼女を部屋の中に招き入れた。
「ご免なさいね。リナがおりますと、もっと美味しくお茶を入れられるのですが」
「そんな事ないわよ、充分に美味しいわ」
紅茶のおもてなしをするが、取引の話を始めないハーミーにエマは警戒を強める。すると、ハーミーは一言「私の事、怖い?」
と訪ねられたため、エマは「正直な話、怖いです」と正直に答えた。
「私のスキル〔千里眼〕で昔は家族だった者からも怖がられていたわ。私のスキルは遠くを見るだけではないの。色々なものが見透せるわ。例えば、部屋で遮られた壁の向こうとかね」
エマはその言葉を聞いて昨夜の転移が見られていた事に気付いた。エマはこれから彼女から何を提案されるか解らない。場合によっては力ずくで制圧することも考えたが、自身がトリプルAランカーの冒険者に勝てる自信が持てそうにない。
「大丈夫よ、そんな警戒しなくて。実はね私、不思議な体験をしたのよ」
「どのような?」
「私ね、貴女が処刑されたのを見ているのよ」
エマはハーミーから告げられた言葉に返す言葉が思い付かない。無言でいるエマに構うことなくハーミーは話を続けた。
「それとこの国も滅んでしまったわ。だけど、気付けば時が戻されていたの。知り合いの皆に確認したけど、誰も私のように記憶を持つものはいなかったわ。恐らくだけど、私のスキル千里眼には絶対記憶の能力があるから、その力のお陰で覚えているのかもしれないわね。それでね、どうして時が戻されたのか探ろうと思い天帝のグループを作ったわ。グループが
あった方が色々と調べやすいから。そして明らかにエマ商会を始め、貴女の周辺が以前と違う事が解ったわ。だから、貴女の事を注意しながら見ていたのだけど、まさか瞬間移動が出来るとは思わなかったわ。以前の貴女は処刑される時に例の王子から『無能女』って罵られていたはずよ。どういう事か教えてくれるかしら?」
やはり、昨日の事を見られていた。
それよりも、ハーミーは処刑された世界の事を知っている事に驚く。だが、彼女は嘘は着いていない。夢の中の私はトリプルAランカーのハーミーさんの事を知っていた。それだけ彼女は有名であった。
しかし、天帝とグループは夢の中では聞いた事がない。よって彼女の言っている事は真実であとエマは思った。そして、エマはハーミーを絶対に仲間に率いれないといけない。そうでないと、何時、彼女の口からアレにばらされるか解らない。
「其れを話すにはこの場所では少々お話が出来ません。お話しするには此方の〔契約の指輪〕を填めて頂けませんでしょうか?」
エマは契約の指輪の事を説明した。後は彼女が指輪を填めてくれるだけなのだが、填めて頂けるだろうかと心配するも、ハーミーは「これね」と何も躊躇することなく指輪を填めた。
「これで私と戦うと言う選択肢は取り除けたかしら?」
「!!」
エマは、まさか心まで見透かされたのかと思い、驚きの表情が顔に出てしまった。エマの頬を一粒の汗が滴る。
エマは認識した。彼女には勝てないと。




