サブストーリー 【ハーミーは見逃さない② 北へ】
東の森から追い出されたハーミーは進むべき場所を考えていた。エルフの他の森も父の手が回っていて入ることは不可能であることは明確であった。そのため、ハーミーがエルフの国に留まる選択肢はない。そうなるとハーミーにはドワーフの国に向かう選択しか残されていなかった。。
だが、ハーミーは執事から告げられた言葉を考えるとドワーフの国にも協力者がいることが解る。
ユワンダがハーミーを遠ざける事はない。しかし、ユワンダと違う部族が邪魔する可能性は高い。ハーミーは万が一にドワーフ国へ入国出来なかった時のためにユワンダ宛に手紙を書くことにした。
ハーミーは再びドワーフ国に訪れた。まさか1日に2度も訪れる事になるとは思わなかった。
ハーミーはドワーフ国の入り口に辿り着く。すると案の定、門衛に止められてしまった。普段であれば、一般のエルフでさえ止められる事はない。それほど、エルフとドワーフの関係は良好であった。
「ハーミー様ですね。ドドルゴ族長より追放されたエルフをドワーフ国に入れさせるなと指示が届いておりますゆえ貴方様を我が国に入ることは許されません」
「ユワンダに聞いて貰うことは出来ないかしら」
「出来ますが、それをなされますとユワンダ様の立場が弱くなられ、ご結婚の話も流れてしまえかもしれません」
「脅迫するつもり?」
「事実を述べているだけです」
「そう。なら仕方がないわね。この手紙をユワンダに渡して貰えるかしら。ご結婚の祝いの席に出れなくなった事が書いてあるから必ず渡して頂戴。そうじゃないとエルフとドワーフの関係に大きなヒビが入るわよ」
「・・・解りました。私が責任をもってユワンダ様にお渡し致します」
(多分、渡されないわね)
ハーミーが北へ向かうと手紙を預かった門衛は門火に手紙を投げ込んだ。
「おい!いいのかよ、そんなことして」
「俺達は門衛だ。郵便係じゃない。だから俺が責任を以てと言ったが、俺には手紙を渡す責務など最初からないのさ」
「しかし・・・」
ハーミーの手紙がユワンダに届けられる事はなかった。そして、彼らはこの時は思いもしなかった。此が切っ掛けでドワーフとエルフの関係に亀裂が入るなどと。
そして、彼らは事が大きくなりすぎて言い出すことが出来ず、何十年も亀裂が入った関係が続いたのであった。
一方、ハーミーはドワーフの岩山を登っていた。
ハーミーはドワーフ国内を通って北の獣人の国に向かう予定であった。しかし、ドワーフ国内に入る事が出来なかったため、ハーミーはドワーフ国の岩山を登って北に向かう事にした。。
この岩山を登るものなどいない。誰しもがドワーフ国内を通って北に向かうからだ。その為、岩山は登山道などの整備された所など一切なく、人が登れるような場所ではない。
しかし、ハーミーは軽快にビョンピョンと岩山の登っている。跳躍と共に風魔法で勢いを増すと数メートルある壁もなんなく飛び越えていた。その早さは凄まじく、その日の夜には岩山の反対側に入る事が出来た。
ここまで、岩山に住む魔物に出会っていない。全く会っていないと言う訳ではなく、遭遇はしているが全て弱い魔物ばかりであったため一瞬で討伐する。此もハーミーが持つ能力のお陰であった。千里眼を使い、魔物の居場所を把握すると強い魔物を避けるように移動していた。
決して、この岩山にハーミーが倒せない程の魔物がいるわけではない。ただ、魔物との戦う時間が欲しかったのだ。
何度も言うが、岩山は整備されていない。よって野宿する場所もない。その為、ハーミーは闇夜で足場が見えづらい中でも進むしかなかった。そして、それを可能にしたのがスキル千里眼であった。千里眼で視野を確保しながら休むことなく岩山を下っていく。
下りは登りよりも楽であった。飛び降り、風魔法で衝撃を和らげるだけであった。
その為、夜が明ける前にハーミーは岩山を下りきる事が出来た。念のため、こちら側からドワーフ国への入国を試みるが対応は同じであった。
ハーミーはもうユワンダに会えないのかと思うと寂しく思うが、諦めて獣人国に向かうため、ドワーフ国に別れを告げ踵を返し北へと進むことにした。
~~ ドワーフ国内 ~~
「どうしたんだユワンダ?やけに嬉しそうではないか?」
「私が特別製の結婚式の招待状をハーミーにだけ作ったのよ。ハーミーに祝って貰えるの楽しみで待ち遠しいわ~」




