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雑談② 流行はすぐに過ぎ去るもの
船内では駄洒落が流行っていた。
エマが船に戻ると皆が渾身の駄洒落のいい合いを行っている。
『布団が吹っ飛んだ!』
『車が来るまで待とう』
駄洒落が飛び交う中で、エマは航海士のゼクト叔父様に報告を受ける。今回も特に異常はないようであった。
「ゼクトも渾身の駄洒落とかあるの?」
ゼクト叔父様は「ええ」と返事をすると自慢の駄洒落を披露する。
『航海士になって後悔している』
「えっ!?」
「あくまでも駄洒落ですよ駄洒落」
「そ、そうよね」
「エマ様は何かないのですか?」
「えっ!?」
エマは突然の降りに脳内をフル回転させた。
そして思い出す。
前世にて考えていた渾身の駄洒落があった。エマは皆驚けよといいたいような顔で自慢の駄洒落を言う。
『紅海の航海を狡獪に公開して後悔した!』
皆が静まる。
エマは両手で顔を覆うと「お願い忘れて!」と呟く。
こうして船内だけで流行った駄洒落は一気に潮時を迎えた。




