サブストーリー 【浦○太郎② 絵にも描けぬ美しさ~】
目が覚めると青年は見知らぬ変わった布団の上にいた。後で知ったのだが、この布団はベッドと言うらしい。男は初めてのベッドの寝心地の良さに感動し思わず二度寝してしまった。低反発と言うものは何て素晴らしいのだろうか。再び目が覚めベッドから降りようとしたが、慣れていないためなかなかベッドから降りる事が出来ない。そんな、あたふたしている私の所に一人の女性が私を訪ねてきた。
彼女はジジョのタイコで私の身の回りの世話を任された事を説明してくれた。ジジョとは何なのか良く解らないが彼女の話の内容から察するに国のお殿様が抱える女中みたいなものだろうと男は思った。
しかし、噂にしか聞いた事がないために異性が身の回りの世話をしてくれる事に引け目を感じてしまう。
彼女が用意した服は普通の服であったが、男性は初めて見る服であったため、着方が解らず戸惑っていると、彼女が着付けまでしてくれる。此ではまるで夫婦ではないかと、顔を真っ赤にして着付けされる男性にタイコは思わず笑ってしまった。
無事に着付けが終わるとこの国の王が彼の事を待っていると彼女に伝えられる。私は彼女の案内のもと部屋を出ると部屋の外は金銀だけでなく七色に輝く珊瑚等や真珠により装飾された廊下のあまりの美しさに男性は絶句してしまった。
なんて美しいのだろうか。この美しさを語ろうとも語り伝える事が難しい。もし伝えるとすれば『絵にも書けない美しさ』としか表現するしかない。
王が待つ謁見の間に着く前に彼女から色々教えて貰った。この国は信じられない事に海底都市であること、この国を統べるのはオトと言う女王様であること、今の女王は三代目で百年前から今の女王が統治していることなどを教えて貰った。
この中で一番驚いた事がここは海の中だと言う事であった。私がいくら馬鹿でも海の中で呼吸は出来ない事は知っている。だから、海の中と聞いて慌てて空気を吸い込もうとした私の姿をみてタイコが再び笑みを浮かべる。
何て言うかタイコの笑みは可愛らしく、男はまた彼女の笑顔を見てみたいと思う。
謁見の間だ。扉が開くと部屋の奥に美しい女性が一人座っていた。彼女が女王のオト姫であった。その姿はあまりにも美しく、百年も生きているようには思えなかった。だが、男は目の前の絶世の美女より隣に立つタイコの笑顔の方が好ましく思えた。
オト姫の近くまで通されると男は再び驚く事となる。遠くから眺めた時は気付かなかったが、部屋の中を歩き近付こうとしてもなかなか近付けない。何百メートル歩いたのだろうか、目の前にいるオト姫は椅子に座っているはずだが、それでも3m以上の大きさはある。
「人間よ。お主は倒れている所をゲンブ殿が助けられた。お主が住む国に放置したままでは助からんと我が国に連れて来られたのだ。そこでお主に倒れる経緯を問いたい?」
私は倒れた経緯を嘘なく事細かく説明をした。そんなことまで話さなくても良いのにと思われるくらい細かくであった。あまりにも細かすぎる説明にタイコが再び笑みを浮かべてくれた。男はタイコの笑顔が見れた事により、より話が饒舌となり先程の海の中と知り慌てて空気を吸う姿を再現すると謁見の間にいた他の女中達もクスクス笑う。だが、男は他の女中の事などどうでも良い、タイコの笑顔さえ見られれば良かったのだ。
「成る程のう、ゲンブ殿が仰有った事は真の事であったか。時にお主の傷は既に治っておる。お主が望むのであればお主が住む陸に帰そうぞ」
オト姫の問いに対し男は横目でタイコを見る。確かに我が家が恋しくないかと言ったら嘘になるが、男はそれ以上にタイコと離れたくない気持ちの方が大きかった。
そこで男はオト姫の問いに対し本当の気持ちと嘘の理由を述べた。
「私の事を忌み嫌う村人の元に再び戻っても私はまた襲われてしまう事でしょう。今度は誰の助けも入らないかもしれません。ですので、もし可能でしたらもう暫くここに住ませて頂けないでしょうか?」
「成る程のう・・・良かろう、お主が帰りたいと言うまでここに住むが良い。タイコよ再びこの男の面倒を見るのだ」
「はっ!仰せのままに」
こうして、浦○太郎の海底都市生活が始まった。




