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旅の二刀流

「はぁ~~~」


私は憂鬱であった。魔道具〔航海図〕も無事完成し文明が栄える大陸を目指し出向したのだが、早くもエマに災難が降りかかっていた。


「どうしましたか、エマ様」


「いよいよ明日かと思うと憂鬱で仕方ないわ」


そう明日の事で溜め息が止まらない。

明日はいよいよアメリア国内を旅する日であったからだ。私がリナリナ病に患っている時に適当に返事をしていたら、まさか実際に行ってくるとは思わなかった。

リーサオーラさんやラミーユさんとの旅行はこの上なく楽しみなのだが、あの男も着いてくる事が問題なのだ。


ちゃんと愛想笑いが出来るだろうか・・・

思わず口を滑らせたらどうしよう・・・


悩み続ける私の元にロイが何かを手渡された。

ロイから手渡されたのは指輪であった。

と、思ったら契約の指輪であった。


「エマ様、此方を使えば口を滑らせる事もないかと思います」


確かに、ロイの言う通りだ。私はロイと契約を結び指輪を填める。出来れば填めて欲しかったけど、契約の指輪は自分で填めなければならない。

私は少し安心出来たが少し残念にも思えてしまった。


(何時かは本物の指輪を填めてくれるかしら・・・)


「ところでエマ様は明日からどうされるのですか?」


明日からアメリア国内を旅行するのだが、現在は航海のまっただ中である。その為、今後について心配してくれているのだろう。


「向こうでは疲れたからと言って早めに就寝するつもりよ。そしたら、此方に転移してくるわ」


エマはその準備のため船に魔道具〔マーカー〕を設置する。エマが此方に転移する際に船に戻れるとは限らない。場所に戻るのだから海の上に転移する可能性が高い。その為、この船に魔道具〔マーカー〕を設置すれば、エマが此方に転移したときズレが生じても船の場所が解るようになる。

そして新しく作って貰った。

魔道具〔ベル〕である。

この魔道具〔ベル〕は対になっている魔道具で、遠く離れた相手に合図を送ることが出来る魔道具であった。此によりエマが不在の時にトラブルが発生した場合に駆け付けられるようにした。

但し、音がなれば皆にバレてしまうため、バイブ昨日も取り付けた。


翌日、エマはアメリア国内の旅へと向かった。

次に船に戻るのは約12時間後である。この間は船長が不在となる。船長補佐のロイがいる。だが、申し訳ないがロイとエマでは皆に与える信頼・安心・求心力など全てにおいて大きな差が出てしまう。航海士として船に乗船しているゼクトは皆がそういった差を感じさせないよう細心の注意を払いながら航海をし続けた。


航海も順調であったが、エマ様がアメージアの爪を見学された夜に船に戻られた時のエマ様は何が起きたか解らないが大変に疲れきった様子であった。


「どうされましたかエマ様?」


ロイが心配そうな顔でエマな話し掛けた。


「アメージアの指に行ったのだけど、彼に殺された時の事を思い出してしまって、もしかしたら突き落とされるかもと思ったら気が気でなかったわ」


彼とはレオナルド皇子の事である。エマが言う『殺された時の思い出』とは、夢の中でレオナルドに濡れ衣を着せられ処刑された時の事であった。

なお、夢の中とはエマがそう思っていただけで、実際に起きた出来事をアメージア様の力で過去に戻ったのである。


「私が着いていければ逆に崖を崩してアレを崖から落としましたのに」


「何なら俺が切り刻んでもいいぞ!」


「いやいや、彼を殺めちゃ駄目でしょ。アメージア様の希望はアメリア国を守る事なのだから、彼を殺めてはアメリア国の存亡に関わるわよ」


「エマ様は浮遊魔法があるのですから、突き落とされても大丈夫なのではないのですか?」


「リナの言う通りなんだけど、処刑時の記憶が恰もさっき経験したかのように脳の裏側にこびりついてしまって、頭が上手く働く状況じゃなかったから、そんな事を思うことも出来なかったわ」


私はロイより休むよう促されるが、航海士をして頂いているゼクト叔父様に状況確認をするまでは落ち着いて休むことも出来ない。

ゼクト叔父様に状況確認をするが特に問題ないと言う返事が得られて初めてエマは心を落ち着かせることが出来た。


暫くアメリア国内と大海原の両方の旅は順調であった。

だが、アメリア国内にいる頃に事件は起きた。突然、魔道具〔ベル〕が震えだしたのだ。

船に何か起きた?

エマはお手洗いに行くふりをして瞬間移動で船に戻る。


「どうしたの?何かあった?」


エマの問い掛けにゼクト叔父様は答える事なく海の方を指で指し示している。

エマはゼクト叔父様が指差す方を見ると大きい烏賊がいた。兎に角、海の魔物はスケールが違い過ぎる。

チームマリアが造ったこの船は全長200メートルを越える巨大船であるが、巨大な烏賊はその船よりも大きかった。

その巨大な烏賊の足が船に絡み付き、船を沈めようとする。しかし、そんな巨大な烏賊もエマの収納魔法により数本の足だけ残し、その巨大な姿は消え去った。


航海士のゼクトは魔道具〔ベル〕を使うことに最後まで反対していた。こんな危険な状態の場に彼女を呼ぶなど彼は考えられなかったからだ。

だが、ゼクトの反対を押しきり、ロイは魔道具〔ベル〕を使う。魔道具〔ベル〕を使った事に怒りを覚えたゼクトはロイに詰め寄るが、返ってきた言葉が「この状況はエマ様がいないと無理です」であった。

ロイもロイだが、もう一人、彼女の側で仕えるリナと言う者も「エマ様なら大丈夫ですよ」と応えるだけであった。側に仕える二人がこんな二人で大丈夫だろうかとゼクトは二人の存在を疑問に思った。


が、彼女は一瞬にして魔物を消し去った。私は目の前の光景が夢でないかと自身の眼を疑う。

彼女は何もなかったかのように、「今日の夕食は烏賊尽くしね」と笑っていた。


宴が始まる。

彼女は既にアメリア国に戻っていた。私はロイとリナに謝罪をした。彼らは何も考えない情けない使用人ではなかった。ちゃんと彼女の事を理解し信用している。


エマは魔物の討伐も無事に終り、アメリア国旅仲間の元に戻っていた。少し時間が掛かってしまい慌てて皆の元に戻ったエマに彼が放った言葉は、


「長かったけどお腹大丈夫?無理せず休んだ方がいいよ」


であった。

こいつ、殺す。

レオナルド皇子に殺意を覚えた瞬間であった。

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