サブストーリー 【ハーミーは見逃さない① 旅立ち~】
「遅れてご免なさいユワンダ」
「もう貴女達エルフが時間通りに来る事なんか滅多にないから諦めたわ。寧ろ、今日は早く来てくれた方よ」
私はエルフ国東の森を治めるマッケンフィールド家の娘ハーミー・マッケンフィールド。
今日はドワーフ国三大部族のうちの1つワルゴ族族長の娘ユワンダとお茶をする約束をしていた。
10年前、ユワンダがエルフの森で迷子になっていたところを私が助けたのが最初の出会いであった。
それ以来、ユワンダとはちょくちょく遊ぶようになり、嫌われ者のハーミーにとってユワンダは唯一の友達であった。
「あれ、何だかユワンダ何時もと違うような感じがするけど何かいい事あった?」
「わ、解るかしら、ドワルゴ王子と婚姻する事になったの」
「凄いじゃない!えー、ユワンダが王妃になるんだ。早くユワンダの王妃姿を見てみたいわ」
「ふふふ。式の日が決まったら招待状を出すから必ず参加してね。その時は遅刻したら許さないんだから」
ユワンダとの楽しい時間は残念ながら永遠ではなく時間に制限があった。私は仕方がなく自身が住む森に戻ろうとする。だが、森に入る寸前のところでハーミーはいち早く森の違和感に気付く。
「隠れても無駄よ。私の能力の前では貴方達丸見えよ」
舌打ちと共に姿を現したのはマッケンフィールド家に仕える執事であった。この男は普段から明白に私の事を嫌っている。前にこの男が着服していた事を父にばらしたのを今も根に持っているみたいね。
「相変わらず化物ですねお嬢様」
「とうとう私、この森から追い出されるのかしら?」
「そうでございます。本日より、やっと貴女様はこの森から追放する事が出来るのです」
「ドワーフ国王家から結婚式の招待状が届く事になっているのだけど、それはどうするの?」
「穢らわしい娘が考える事も穢らわしいですね。ドワーフ国を盾にしても無駄な事です。彼方も我々に協力的ですので、貴女に招待状が届くことなどございません」
(圧力をかける気ね。でもユワンダが簡単に折れるわけないでしょうが!馬鹿な人達ね。エルフとドワーフの関係にヒビが入らなければいいけど・・・)
「解ったわ。ところで私の荷物を取りに行くことも出来ないのかしら?」
ハーミーがそう伝えると、1つの袋に纏められた荷物が投げ出された。
「貴女の荷物は私が準備致しました。他の物は全て処分致しますので気遣い無用でございます」
「そう」
ハーミーは踵を返しこの森から遠ざかる。
ハーミー・マッケンフィールドは今日から只のハーミーとして旅立つ事となった。
【ハロルド・マッケンフィールド】
私はエルフ国の東の森を治めている。私の悩みの種はわが娘であった。私の娘は正直に言って気味が悪い。あの何でも見通しているかのような瞳で様々な取引(悪事)を台無しになれたことか。
何度、あの娘の目を抉り出してしまおうかと思った事か。だが、昨日の商談を邪魔された事で私は我慢の限界を向かえた。
「レグタ!レグタはどこだ!」
レグタはこのマッケンフィールドは執事の名だ。
「何でございましょうご主人様」
「あの馬鹿娘は昨日も商談を1つ駄目にしおった!もう我慢ならん!あの気味悪い娘を追放する!」
私は娘の外出中に執事に娘の荷物をまとめさせ、娘を我が森に決していれてはならぬと告げる。あの目が気味悪く直接言えないが、森の外に出ていった今がチャンスに思えた。
「やっと判断されましたのね。此であの子憎たらしい雌ブタの娘を見ないで済むのね」
追放には当主の権限だけで可能であったが妻他の子達など誰も反対はしなかった。
この時程、あの娘が正妻の子でないことに感謝した。
ただ、当主の権限で追放出来るが王家への報告は必要であった。その為、私は娘は旅に出たと王家に嘘を告げる事にした。
【ハーミー】
私は生まれた時から1つの能力がある。
能力の名は〔千里眼〕
遠くを見透せる能力・・・だけではない。
実は色々なものを見透す事が出来る。その為、私は父から忌み嫌われていた。
そして、とうとう森から追い出されることになった。
目を閉じると、この森での思い出が思い浮かんでくる。
『この雌ブタの娘が!』
『お兄ちゃん!?勘弁してくれ、俺には紛い物の血なんて混ざってない』
『この不気味な娘が!私の前に現れるなと何度言ったら解るのだ!』
『あら、お嬢様にはこの髪飾りは勿体ないので私が預かっておきますね』
『あー化物ハーミーだ!あっちいけー!』
(・・・全く、いい思い出はないわね)




