エマが居ぬ間に
~~~ロイの呟き~~~
ロイで御座います。
只今、エマ様がご不在なためロイが皆様をご案内したいと思います。この島もだいぶ変わりました。
これも奴隷ギルドのドーミン様のご協力により犯罪者奴隷を250名程雇用出来るようになった事が大きいでしょうか。お陰でこの島の開拓は物凄い勢いで進んでおります。
先ずはシード様の指導の元で行っている農地開拓です。此方は既に小規模で御座いますが完成しており、現在は豆の栽培を行っております。シード様が言うには豆栽培にて土に根粒菌と言うものが生まれ他の作物が育ち易くなるそうです。
また、畑は幾つかに区画整備されており、将来的に犯罪者奴隷の人達が刑期満了された時に農業を希望された場合は区分けされた農地を分け与える計画となっております。この計画は契約時にも説明しており、犯罪者奴隷の皆様は土地が貰えると言う好条件に戸惑いを隠せないでおりました。
今は小規模の農地ですが、将来的には街や都市等の発展と共に拡大していく予定となっております。
そして、農地の一角に御座います此方がキュア様が管理しております薬草園と調薬の研究所となっております。
こちらにはキュア様がこの島で取れた薬草だけでなくアメリア国から持ち込まれた薬草を栽培しております。これ等の薬草を使って様々な薬を調合しております。
今はレシピを基に薬の調合を行っているが、この島でしか採れない薬草が加わる事で新しい薬が産み出せるかもとキュア様は大変に興奮しておりました。キュア様のお陰で風邪等の病気や怪我の治療も可能となりました。
将来的には病院を設立したいと思っております。
次に港都市を案内致します。
ここはエマ様が大地を抉り大きな人口の湖を作りました。エマ様か「ビワコくらいの大きさかしら」と呟いていましたがビワコとは魔物の名前でしょうか。
そのビワコ程の大きさがある人口の湖と海を大型の船が余裕で行き来できる程の幅の広い水路を繋げますと港都市の土台が完成致しました。
この人口の湖の周辺にビルが幾つもの建物を建築しております。
先ず、表通りは観光メインとした漁業市場を中心に商業施設がズラッと並んでいる商業施設を湖沿いに右に行くと宿泊施設が建築中ですが、出来上がるのは差程遠くありません。
その下の海港にはマリア様の指導にて集められた有志達により大型船が作られており、徐々に完成してきております。エマ様が元気になられましたら出航してみたいものです。
エマ様ですか?
エマ様は少々、病を患っておりまして長いことこの島に来ておりません。
ああ、心配御座いません。命に関わるような病では御座いません。ですが、やや拗らせてしまっているため島に訪れることが出来ないのです。
2年前にも発病致しましたが、ここまで酷くありませんでした。2年前前は一晩寝るだけでしたが、現在は数ヶ月にもなります。この島が暖かいからと冬の季節に水遊びをしたのが良くなかったのかもしれません。
マックウェル師匠ですか?
マックウェル師匠もエマ様も似たような病に掛かられておりまして、エマ様とは逆に凶暴化してしまいました。
だからと言って私達が被害はありません。
専ら被害に遭っていたのは、この島に済む魔物でしょうか。あまりにも凄まじさに一時はマックウェル師匠が魔物と間違われる程でありました。
今は治療にとグレイス領の訓練所でリナの弁当を食べているはずです。
リナの弁当を食べるようになってからはマックウェル師匠の病は治られましたので一安心です。
リナですか?
エマ様の看病?
いえいえ、今回のエマ様の病の原因は彼女にありますので、彼女には責任をもってエマ様の相手をして頂いております。
本当に彼女には困ったものです。
この島が暖かいからと服を着たまま海で遊んだまでは良いのですが、アメリアが冬であることを忘れて濡れた服のまま戻ってしまいました。お陰で風邪をひいて寝込むものですからエマ様のリナリナ病が再発してしまったのです。本当にリナリナ病は厄介です。
「・・・」
「どうしましたか師匠?」
「いやお前、さっきから誰に向かって話してんだ?」
「ああ、気にしないで下さい。それよりも、もう食事を終えられたのですか?」
「おう!お陰で怪我も体力も全回復したから、もう一狩り行くぞ!」
(師匠・・・食事で怪我は回復致しません)
「どうした?」
「いえ、エマ様が元気になられましたら、この島に鍛冶職人を招き、この島の素材を使った武器を使う師匠の姿を早くみたいと思っておりました」
本当に早く良くなって貰いたいものです。
ただ、エマ様もリナが亡くなったとされる日が過ぎれば治られると思いますので、それまでの辛抱で御座いましょう。それまでにエマ様から与えられた宿題を成し遂げなければなりません。
ですが、此方も厄介な宿題でして、数ヶ月経ちますが未だに進展がなくエマ様に会わせる顔がありません。
「例の件で悩んでいるのか?」
「はい」
「安心しろ、もうそろそろだ。なんだったら今日かもしれないぞ!」
「その根拠は?」
「俺の感がそう言っている」
マックウェル師匠は笑いながら魔物の討伐にと森の奥に行かれました。私もマックウェル師匠くらい気楽な考えでいられたら良いのですが。
遠くの方で私を呼ぶ声がします。
声の方へ向かうと彼は私が観察を依頼した者の一人です。
まさか・・・
「ロイ様!海岸で観察しているものから合図が来ました。どうやら玄武様が目覚めようです。再度、お眠りになる前に早く参りましょう」
私はマックウェル師匠が歩いていた方を振り向くが既に姿はない。私は思った、脳筋の感ほど恐ろしいものはない。
私は急いで港の丘の上にある吊らされた椅子に座り、海に向けて下って行った。
此れはエマ様が早く海岸に行けるようにと作られた『ジップライン』と言うものである。移動は早くて良いのですが、最後は着水するようになっているため、エマ様が元気になられた時には改良して頂けるよう頼もうと思っております。
因みにリナが風邪を引いたのはコレが原因で御座います。
「玄武様、お久し振りで御座います。此方はこの島で採れた果物で御座います。玄武様が教えて下さった物を集めて参りました」
「おお、それでは久しぶりの食事を楽しもうか」
山盛りになっていた果物は玄武の数口によって瞬く間に無くなってしまった。
この勢いで島中の果物を食べ尽くされたらと思うと恐ろしいものがあるが、その心配をする必要はない。
玄武様は気が向いた時にしか果物をお食べにならない。
それも、ちょっとした味見程度なのです。
そもそも玄武様は食事をする必要がない。彼等は大気にある魔祖を食事変わりに吸収して生きているのです。
玄武様が再びお眠りになる前にエマ様からの宿題をこなすと致しましょう。
「玄武様、我々はこの島から船で貿易出来る国を探しております。つきましては、玄武様に人が済む陸に心当たりがありましたら教えて頂けませんでしょうか?」
「人が済む陸か・・・」
玄武様は一生懸命に思い出そうとしてくれております。目を瞑り、記憶を辿っているようで御座います。
「・・・」
どれくらい経ちましたでしょうか。少し日が傾き始めました。寝てないよね?
「起きているぞ。ずっと昔だが、向こうの方角から朱雀が飛んで来た時があったのだが、あやつが言うには知り合いの魔物に会いに行っていて、その魔物が済む山の近くの大陸に人が住む国が有ると言っていたな」
玄武様が示す方角を忘れないように記録致しましょう。私は玄武様に感謝致しますと、玄武様は再びお眠りになられました。
さー、これでエマ様に報告に行ける。
エマ様にお会いするのが楽しみで仕方がありません。
私が島を出ようとすると丁度、マックウェル師匠も帰る準備をしておりました。
「おう!その様子だと、出会えたようだな」
「はい!今すぐエマ様に報告に行って参ります」
ロイが嬉々としてエマ様の元へ向かう姿を見てマックは思う。
(ロイのエマエマ病は重傷だな)




