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多数決は悪

「それでは、これより島開拓への代表者会議を開会したいと思います。先ず最初に基本的には協議は多数決で可決していきますが『只の多数決』は悪だと思っております。例えば、戦争を行う事に多数が賛成しても私はそれが正しいとは思えません。ですので少数派の意見も聞いて如何に少数派の意見も取り入れていくかも協議していく事が大事だと思っております。その為、一つ一つの事に時間が掛かってしまうかと思いますが妥協はしたくありませんのでご理解とご協力をお願いたく協議に入りたいと思います」


エマのこの『多数決は悪』と言う考えは前世にて思っていた事であった。

この世の中は多数決の多数派の意見で成り立っている。だが、前世ではその多数決について疑問に思っていた。学校のホームルームでも多数決を取り入れて多数派の意見で全てが決まっていた。政治の世界でさえ多数決に可決してしまう。

だけど本当にそれで良いのだろうか。

1+1=1と答えるものが多数いた場合、此を多数決で決めた場合は、この間違えた答えが正解となってしまう。クイズ番組でもよく一人だけが正解と言う場面があるが、此も多数決の理論で言えば彼が不正解となる。


本当にこれで良いのかと思っていた。確かに多数決で決める事が一番楽で早い。だけど大事な事を決める時こそ多数決の少数派の意見を聞いて、その少数派の意見をどのように多数派の意見に組み入れていけるのかを検証していく事が重要なのではないのかと疑問に思っていた。

その為、この島の開拓については極力、少数派の意見を聞いていきたいとエマは思っていた。


「先ず、島を開拓するに向けて最初にやるべき事を相談していきたいと思います」


セバスが進行を務める。

尚、この会議には幾つかルールを設けている。1つが発言する前は挙手をする事。二人目は発言中は野次等を入れないである。


「ちょっといいかしら?」


手を挙げたのはマリア・グレイスであった。


「島の開拓場所を見させて貰ったのだけど、今、農業都市と港都市を計画中と聞いたわ。だけど、港街にしては少し奥地に計画し過ぎじゃないかしら?これだけ奥だと海岸に港を作っても、ちょっと往来が大変だと思うのだけど?」


マリア・グレイス(この島ではお母様ではなく一代表者として呼ぶことにした)の指摘の通りエマは海岸近くに港街を作ろうとしておらず、少し奥地に計画していた。その理由を説明するためにエマは皆に港街の構想図を渡して説明をする。エマの考える港街にはエマのスキルとロイの土魔法が必須であった。

エマの構想図を見て納得したマリア・グレイスから続きの質問があがる事はなかった。

次に手を挙げたのはシードであった。


「土作りはロイ様に協力して頂き十分な状態になっておりますが、如何せんこの予定地には水がございません。河川からも離れております。農業都市をお作りになるのならば河川沿いの方が良いのではないでしょうか?」


「確かに生活にも『水』は必要だな。今は魔道具で凌いでいるが街を作るなら魔道具だけでは無理だろう。井戸を掘る計画があるなら良いのだが、それがないのなら河川近くの方が良いように思えるのだが?」


シードの発言に続き、ビルも同意の意見であると伝えてきた。皆も頷いているから同意見のようだ。

確かに二人の言っている事は最もの事であった。本来なら集落を作ろうとするなら河川沿いにするものだ。アメリカ王都もグレイス領都も河川が近くにある。前世で習った黄河文明、インダス文明、メソポタミア文明、エジプト文明の四大文明も全て河川沿いにあった。

尚、この四大文明と言う名はヨーロッパ等の世界には通じないらしい。この他にはインカなど様々な文明があったが昔のとある学者が『語呂が良いから』と四大文明と名付けてしまったらしい。

脱線してしまったが、エマが河川沿いに都市作りを計画しなかったのには理由がある。


「シードやビルの指摘は尤もだわ。本来なら河川沿いに街を作るべきものよ。ただ、海沿いや河川沿いは津波や川の氾濫による危険性が高いわ。その為、少し離れた場所に農村土地を計画しているの。水に関しては河川から水路を引いて来る予定よ」


前世の記憶から川の氾濫や津波についてのニュースを見たり聞いていたりしていたため、このような被害が起きないように考えていた。後には干ばつ対策のためダムも計画予定であるが、それには更に人が集まらないとならない。その為、川沿いではなく、少し離れた場所に計画を立てたのであった。

エマの返答にシードやビルだけではなく他の者も納得してくれた。


多数決により『先ずは水源の確保』に殆どの者が手を挙げたがセバスだけ手を挙げないでいた。本来の多数決制ならこれで終わりなのだが、エマは良いしとしない。前述でも述べたようにこれで終りにしてしまうのはエマにとって悪であったからだ。

エマは手を上げなかったセバスの意見を聞くことにした。


「セバス、何か他に意見があるなら教えて頂戴」


皆が水源確保でまとまると思っていただけに、『他に何があるのだろうか?』と不思議そうな顔でセバスを見つめていた。


「『水源確保』はエマ様とロイ様がおられれば出来るのではないでしょうか。本来ならばそれで宜しいかと思うのですが、エマ様には余りお時間がないのではないでしょうか?ならば、お二人が『水源確保』をしている間に我々は開拓の為の人材を確保するためのリスト作りを行ってはどうでしょうか?」


セバスの言う通りで水路作りはエマとロイがいればある程度完成する。エマが邪魔な土砂を収納してロイが土魔法で補強していけば良いのだ。

(ヨザクの樹の伐採も必要だけど)

セバスの意見に皆が同意を示し、『水源の確保』と言う計画から『水源と人材の確保』へと変更となった。


水源の確保組は私とヨザク、ロイ、リナ、マックとなった。他の者は人材の確保を行う事となる。

尚、人材確保と言っても数名の補佐がいてくれれば良い。その他の下仕事は犯罪者奴隷を使う予定である。


エマは水路を作る前に大雨の時に水の捌け口となる溜池を作ることにした。農村都市予定地から少し離れた場所の樹木をヨザクが伐採するとエマが大地を収納魔法にて掘り起こし、崩れないようにロイが土魔法で強化していく。この作業が楽しく感じてしまい、一先ずこんなものかと出来上がった溜池予定地は想像よりも大きく作ってしまい、ここに水がたまれば溜池と言うよりも遥かに大きい人工の湖となってしまう。

取り敢えずは水の捌け口が完成したが、このままではただ水が溜まり過ぎて氾濫する危険性があるため、この人工の湖から水を逃がす水路を作る。


これで漸く水路作りが出来る。ただ、やることは同じであった。ヨザクが伐採し、エマが掘って、ロイが補強するだけであった。

簡単な作業であるがエマはアメリアでの生活をしながらなので、一日中作業を行うわけには行かなかった。その為、水路作りに約1週間を費やしていた。


水路作りも後数メートルのところまできた。エマが最後の数メートルを収納すると河川の水が勢い良く水路に流れ始めた。途中の高低差がある場所などはロイの土魔法で調整しているので問題がないはず。それでも、心配となり水の流れを確認使用と踵を返すとロイに呼び止められた。


ロイが指差す方向を見ると水路に少量の土砂が水と共に入り込んできている。このままにしておけば水路が詰まる原因となるため、エマは水路の入り口に後で網を張ることをロイに伝えると、ロイは『違います』と言う。


再びロイが土砂を指差すのでエマも再びロイが指差す方を見る。漸くエマも気付く事が出来た。ロイが指差す先の土砂が何やらキラキラと光っている。最初、エマは太陽に反射して水がキラキラ光っているものと思っていたが、キラキラ光っているのは土砂からであった。


「もしかして・・・砂金?」

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