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ヨ○クは木を伐る

島の開拓の最初の一歩は先ずは樹を伐る事からとした。街を作るのにしても先ずは場所を確保しないと行けない。エマの収納では大地毎削ってしまう。リナがレベルが低いが火魔法が使える。しかし、伐採した樹は建築資材として再利用したいので炎で燃やすなど以ての外である。

その為、エマは新たにこの島に住人を招待することにした。その人物へ会いにエマは自身の商会に顔を出していた。


「本日はどうされましたかエマ様」


「久しぶりねセバス、元気そうでなりよりだわ。今日は『ヨザク』に会いに来たのだけど今回は何処に言っているかしら?」


「ヨザクでしたら3日程前から『アマツユの原木』を集めに言っております」


アマツユの樹は幹に耳を当てるとコポコポと音がする珍しい樹である。音がすると数時間後に雨が降るため事から別名『アマシラセの樹』として知られている。この樹は水に強く腐りにくいため風呂など水場に重宝されていた。


この近くでアマツユの樹の群生地は1日程で辿りつく事が出来る事からもうそろそろ戻るかと思いヨザクが戻るまで待つことにした。

エマが探しているヨザクとは素材集め『木材』のエキスパートで、グレイス領だけでなくアメリア国全体及び隣国のカディア王国も含む樹の群生場所知っている。そして樹の群生場所を知っているだけでなく伐採と植林の素早さは最早神の域に達していると言っても可笑しくない程であった。

エマはそんなヨザクを商会の帳簿を見ながら待つ。数時間後、ヨザクが戻って来た連絡を受けヨザクに会いにいく。


「おう、エマ嬢ちゃんじゃねぇか。今日は冒険の帰りか?」


エマ商会の中でヨザクは特殊である。その為、他の者は『エマ様』や『会長』と言うなかでヨザクが嬢ちゃん呼びをするため最初は皆から敬遠されていた。だがヨザクの木材集めの優秀さに直ぐに打ち解ける事が出来たのだった。

そのヨザクは冒険者をしていた。だが、ヨザクは決して強くはなかった。ただ木材集めが得意であった。だけどギルドの依頼に木材集めなど殆ど入らない。その為ヨザクは冒険者として生計を立てるのが厳しく悩んでいた。そんな中でヨザクはエマと出会う。エマはヨザクの才能をかってエマ商会に勧誘したのであった。


「今日は貴方に会いに来たの。貴方にお願いがあるのだけど、もしかするともうエマ商会・・・だけではないわね、アメリア国にさえ戻れなくなるかもしれないわ。それでも私の依頼を受けてくれるなら明日また商会にくるからその時に返事を聞かせて」


突然のエマ嬢ちゃんの勧誘にヨザクは困惑した。

その晩、ヨザクは酒場に顔を出していた。ヨザクは決して酒が強い方ではない。だが、今日はいくら飲んでも酔えそうもなかった。

ヨザクは悩んでいた。

エマ嬢ちゃんには感謝をしている。そのエマ嬢ちゃんが真面目な顔をしていたのだから冗談ではないはず。ヨザクはエマ様に恩を感じているが、今の生活に満足しており今の生活を捨てる事はヨザクにとって難しかった。

ヨザクはいくら飲んでも酔えない酒を飲みながら明け方まで悩み続けた。


「エマ様、ヨザクから良い返事は聞けるでしょうか?」


正直に言って難しいとエマは思っている。久しぶりに会ったヨザクは今の生活に生き甲斐を感じているかのように楽しそうであった。そのヨザクから今の生活を奪う事になる。エマ達は断れる覚悟で商会に向かった。

商会につくと玄関の前でセバスが申し訳なさそうに手紙を渡して来た。ヨザクからである。


「直接会って断るのが申し訳なく思って手紙を書かれたのでしょうか?」


「そうかもね」


引き受けるつもりなら手紙など渡して来ないはず。ロイの言う通り断りづらく手紙など書いたのだろうとエマも思っていた。仕方がないと手紙の封を開け手紙を読み始める。


『頭が痛くて起きられん。すまんが明日また来てくれないだろうが』


想像をしていなかった内容にエマの思考は止まってしまっていた。セバスからヨザクが酒場から数時間前に帰ってきたようなので少し寝かせていたらしい。私が来る約束の時間となったのでお越しに行ったら酷い二日酔いでお会い出来るような状態ではなかったらしい。

仕方がなくエマ達は翌日また訪れる事にした。


「ヨザクさん、確かお酒に弱かったはずですよね」


「もしかしたら一晩中悩んでくれたのかもしれないわね。なんか申し訳ないわね」


エマはヨザクに飲めないお酒を飲ませてしまったようだ。それだけヨザクは真剣に考えてくれたのだと思いエマは嬉しく思う。

翌日となりエマ達は再び商会に顔を出すとヨザクがエマ達の前に駆け寄る。


「申し訳ない。恩人に対してこんな仕打ちをしてしまうとは自分が恥ずかしい」


エマ達に土下座をしながら謝罪をしていた。

ヨザクの二日酔いの原因はエマ達にあることを理解していたので土下座をされると逆にエマ達が申し訳なく思ってしまう。

エマは謝罪をやめて貰うようにお願いして漸く話が出来る状態となった。


「それでヨザクさんどうかしら?」


「エマ嬢ちゃん、申し訳ない・・・」


(やっぱりね・・・)


「こんな俺を信用して声かけてくれたのに二度も手間を取らせてしまって。こんな俺で良ければエマ嬢ちゃんに協力したい」


「えっ!」


まさか引き受けてくれるなんて思わなかった。それにしてもヨザクはなんて紛らわしい返事をしてくれたのだろうか。お陰で間抜けな声を上げてしまった自分が恥ずかしくて仕方がない。


何はともあれ良い返事を貰えたエマはヨザクを連れて玄武様の島に転移をした。突然に目の前に海が現れた事でヨザクは驚愕する。エマはさっきの仕返しが出来たようでヨザクの驚いた顔に笑みを浮かべる。


「ヨザクさん驚かせてご免なさいね。此は私のスキルの1つで遠くの島に転移をしました。ヨザクさんにはこの島の開拓として周辺の樹の伐採をお願いしたいのです」


「樹の伐採ですか・・・」


「!!」


今まで海を見て驚愕していたヨザクはエマの依頼を聞き海の真逆の方にある森に視線を向けると更に驚愕することとなった。

森には見たこともない樹があるばかりか珍しい樹が所々に生えていた。


「此を伐っていいのか?」


「ええ。それと珍しい樹があったら今までのように植林もお願いします。それと伐採した樹は建築などに再利用したいのでどの樹が何に向いているのかの調査もお願いします」


今まで見たこともない樹や珍しくてなかなか調査も出来なかった樹が目の前にあり調査もさせて貰えるなんてヨザクはまさか天国に連れて来られたのか夢の中にいるかかのようであった。頬をつねるが痛い。夢の中ではないようだ。

ならここは天国なのかと調べるため自身の胸に手を当てるが心臓は動いていた。

ヨザクはここは現実なのだと漸く理解した。


「ヨザク?」


なかなか返事を貰えない事で心配となり、エマはヨザクに問いかけた。ヨザクはエマの問い掛けに現実世界に戻される。


「すみません。あまりにも素晴らしい森でしたので驚いてしまいました。解りました。この森の伐採と調査を行いたいと思います」


ヨザクは一本の大樹に近寄ると担いでいる大斧を勢い良く大樹に振り下ろす。すると大樹はものの見事に切断された。


「何!一振だと!」


マックが対抗心を燃やして『手合わせを』とヨザクに近付こうとするマックをエマが止める。

マックが対抗心を燃やす必要なんてない。ヨザクの斧さばきは樹木だけにしか効果がないのだから。


「マック、彼が一振で大樹を切断出来るのは彼のスキル『伐採』のお陰よ。彼のスキルは樹にしか効果がないから武術は三流以下よ。だからマックがムキになる必要はないわ」


エマの一言でマックは一瞬にしてヨザクへの興味をなくす。伐採はヨザクに任せエマ達は其々の仕事に励む。エマは伐採された木材の収納、リナは残った切り株を魔法で根っこまで燃やし尽くし、ロイは土魔法で整地をする。マックは周辺の魔物調査及び食料確保のための討伐を行う。エマによって収納され木材は1ヵ所に集められる。ヨザクによって伐採は順調に進み3年後には第一の都市である農業都市の土地が確保できそうであった。


ヨザクの伐採が行われてから一月がたった。ヨザクは相変わらず楽しそうに伐採している。


「ヨザクは今日も樹を伐るのですね」


リナの一言にハッとした。


(此って著作権的にアウトかしら・・・)

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ヘイヘイホ〜ヘイヘイホー いきなり!サ◯ちゃんですか(≧▽≦)w
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