閑話 ③
─ エマ 16歳 ─
エマはゲンブ様が管理する島に来ていた。
今やこの島の発展は凄まじいものでドワーフ国以上に発展した都市となっていた。その中で人族を始めエルフやドワーフ、そして各獣人族が武器を持ってエマの前に集まって来ていた。その中には冒険者ハーミーもいた。
ハーミーはとある理由でこの街の住人となっていた。
「いよいよスタンピードとナガン帝国の進行が始まったわ。予想外に聖国も暴れだして来たけど関係ないわ。皆、準備は良いかしら?」
「「「おお!!!」」」
「まずは聖国の進行に人族の部隊はハーミーさんと行動して天帝の一員のフリをしながら戦うわ。エルフの部隊はエルフ国からの応援部隊よ。質問がなければ行くけどいい?」
「ええ」
ハーミーが代表で返事をするとエマの瞬間移動で聖国との橋がある街に着いた。王国の部隊は暴動を鎮圧する意思はなく見守っているだけであった。エマにとっては予想通りな行動であった。
天帝の一員に扮した者とエルフ部隊で徐々に鎮圧していく。王国の部隊の大将が何か騒いでいて五月蝿い。私に向けて攻撃しようとしてきたのでその腕を切り落として上げた。傍観者となったのら静かに見ていれば良いのに。
聖国から次々へと襲って来るため早く鎮圧するためには橋が邪魔で仕方がない。そもそもこんな者があるから行けないのだ。エマは橋の一部を収納すると橋は崩れて落ちていった。
此で鎮圧は大丈夫であろう。
エマはハーミーに合図を送るとハーミーも気付き合図を返してきた。
(この場は任せても大丈夫そうね。次はグレイス領ね)
エマはゲンブの島に戻ると獣人と共にグレイス北東に転移した。
「其では皆さん、スタンピードの討伐宜しくお願いいたします」
「「「おお!!!」」」
エマは一度ゲンブの島に戻り残ったドワーフを連れアメリア国とナガン帝国の間に聳え立つ防壁に着いた。
ドワーフの鍛練された土魔法やエマの魔法により形勢は一気に逆転する。
途中でナガン帝国で何かあったようでナガン帝国の兵士が引き上げていく。
(こっちの方も大丈夫そうね)
エマはグレイス領に戻る。
残すはスタンピードだけであった。
─ 魔物使いモモン ─
最初はグレイス騎士団を弱らせるだけで良かった。たが東の地より獣人族が加勢に現れた。
私は慌ててドラゴンを解き放ち一気に蹴散らそうと思った。だが一人の冒険者に全ての竜が討たれてしまった。
私は目の前の光景が信じられないでいた。
竜は生物で最強ではないのか?
此ではこの冒険者が最強ではないのか?
いつの間にか件の冒険者は私が乗るドラゴンの背を取ると私も含め討ち取られしまった。
私は意識が戻り目を開けると私の廻りは獣人族に囲まれていた。私は自分の死を理解した。最後に我が妻、我が息子に逢いたかったが此も私が侵した罪だと諦める事にした。私は諦め全て彼らに話す事にした。
私の前にあの冒険者が現れた。
冒険者は仮面を外すと見たことがある者であった。
「貴女は・・・エマ・グレイス!?」
「ええ、此から貴方を裁く事にしたから覚悟はいいかしら?」
「ああ」
令嬢は私の返事を聞くと令嬢は姿を消す。再び現れた時は令嬢は一人ではなかった。私の妻と子が一緒にいたのだ。どういう事だ?
「此から貴方達はここで奴隷として働いて貰うわ。貴方にはこの二人も必要と思ったから連れてきたわ。後は此方のエルフが貴方を案内するわ」
「心配しなくても大丈夫です。私もここでは奴隷ですから」
エルフの男は自身の首に私達と同じ首輪がされているのを見せた。
「ここでは奴隷と言っても普通の生活をするだけです。この首輪は犯罪を侵さなければ何の問題もなく家族仲良くここで暮らして行けますよ。まずは貴殿方のお住まいを案内致しましょう」
「ここは・・・」
「ここは羊型の魔物が飼っている施設になります。貴殿方にはこの牧場の管理をお願いしたいのですがお願い出来ますか?」
私は一度死を覚悟した。
家族と会うことを諦めた。
だが今は目の前には幸せな家族との生活しか見えない。私には頷くしかあり得なかった。
私はこの日から魔物使いから羊使いになった。
─ ナガン帝国 ─
どういう事だ?
北では魔物の進行、南は聖国が暴徒化、此によりアメリア国のテキサル領の進行は難なく遂行出来るはずであった。だが、何故グレイス領から応援部隊が届くのだ。何故ドワーフ国が参戦する。
どういう事だ?
もしや・・・また・・・あの令嬢なのか?
「国王陛下、我が軍は最早勝てる見込みがございません。戦地にいる兵のためお早い判断をお願い致します」
「・・・びよ」
「すみません、良く聞き取れませんでした。何と仰られましたでしょうか?」
「滅びよともうしたのだ!我が思い通りにならん使い物にならぬ者達は滅びてしまえば良い。全員滅びるまで引くことは赦さぬ全軍侵攻を続けよ!」
ナガン国王の言葉にその場にいるのも皆がこの国王に失望した瞬間であった。国王は気付かなかった。この発言により自分を守る者は誰もいなくなったことを。
「ええい!使えぬ者達ばかりだ!早く伝達せよ!私は喉が乾いたぞ!酒を持って来い!」
宰相は王の命により「アレを用意せよ」と告げる。皆が「アレ」を用意するために準備をする事になった。
全線で戦う兵士に伝令を、王弟ローレン殿下に至急王の間に頂けるよう伝達をした。
国王に盃が手渡される。国王は不満げに盃を一気に煽ると突然に手が痺れ盃を床に落とした。
「おやおや、大変な事になりました。国王陛下は突破性のご病気になられた。直ぐに医師を呼ぶのだ」
「き・・・貴様・・・」
「安心して下され国王陛下、城お抱えの医師の奥方は貴方に手篭めにされ命を絶っており既に我々の見方でございます。そしてここにいる兵達も皆家族が貴方に殺されております」
「私は妹を」
「私は息子を」
「おやおや、兄上がご病気になられたと言う事で駆けつけてしましたぞ」
「お・・・お前・・・!?」
「兄上、私にも教えて下さい。我が妻がテラスから落ちてなくなった時に何故兄上が我が妻の部屋にいたのですか?」
「し・・・知らぬ・・・」
「近くにいた者が聞こえたそうなのですよ妻の声が『貴方に瀆されるのなら自らこの命を経ちます』とね」
「わ・・・私は・・・国王・・・」
「やだなー死ぬ人間が国王な訳ないじゃないか。兄上はこのまま病気が回復せず逝去されるのですよ」
「な・・・何を・・・」
「心配する事はありませんよ。兄上の墓は準備してありますから。ああ、勘違いしないで下さい。兄上の墓は王家歴々の墓ではなく王家の犯罪人が埋められている場所になります。それと私達は恥を偲んで兄上が行った酷い仕打ちを全国民にお伝え致します。良かったですね兄上は昔から『俺は歴史に名を残すのだ』と言われてましたが大罪人としてちゃんと名を残すことが出来ますよ」
「わ・・・私は・・・」
「おや、漸く医師の方も来ましたようですので始めますか」
ローレン王弟は剣を医師に渡すと皆で国王を囲む。各々が剣を抜く。
「ま・・・待て・・・」
「「「この恨み我ら家族のために!」」」
剣が床に突き刺さり床の絨毯は赤い染みが広がっていった。
「国王が逝去なされた。不承ながら次の国王を王弟であるローレンが継ぐ。まず最初に今すぐ全軍撤退せよ!」
「ローレン陛下、既に文は出しております」
「迅速な対応ご苦労である。貴殿には引き続き宰相としてこの国を共に良くして貰いたい」
「畏まりました」
「其と、床にゴミが落ちているため片付けを頼む」
「畏まりました」




