閑話 ②
─ エマ 10歳 ─
✳ ラスボス・ココニイル宰相
「盗賊らと連絡が取れないだと?」
私は部下からの連絡に怒りが込み上げてきた。
私はアメリア国を手に入れるため裏である令嬢を探していた。ダンダーク公爵の血を引く令嬢であった。この令嬢を手懐けレオナルド皇太子と結ばせ将来の王妃にする。私の計画は順調に進み王妃も見方にする事が出来た。
なのに・・・なのにだ!
あの暴漢によって私の計画は全て崩れてしまった。
二年前・・・
「王妃様、どういう事ですか?あのパーティーでは婚約者は見つからず婚約の話は先延ばしになるはずだったのではないのですか?
「仕方がないのです。息子が田舎娘を好いてしまって婚約候補にするだけでも大変だったのですよ」
「ですが・・・」
「何を慌てて入るのです?宰相が言うご令嬢が見つかりましたら婚約候補に加えればよいだけの事では?ですが息子が田舎娘を好いている限り候補者となっても変わらないわよ。あの田舎娘が生きている限りわ」
あれから二年が経ち見方と思っていた王妃は今や田舎娘の方に着いてしまった。だが、私には以前に王妃が用意して下さった荒くれ共がいる。私は彼らを盗賊に仕立て上げ、今回王都から帰るあの田舎娘を襲うはずであった。だが、盗賊との連絡が取れないと言う。
どういう事だ!
✳ オイ
俺には名がなかった。
だがラスボス様が私に名を着けて下さった。
『オイ!アイツを始末してこい』
『オイ!今すぐ噂を流せ!』
『オイ!ここに顔を出すな!』
俺は名を下さった宰相様のために盗賊を使い件の令嬢を始末する命を受けていた。
だが、その盗賊が見つからない。俺は直ぐに伝令を出したがこのままでは宰相様に見捨てられてしまう。
どうすればよいのか・・・
俺は妙案を思い付く。
雨上がりの緩んだ地盤を利用すればよいのだ。
俺は崖上から件の令嬢が乗る馬車が通るのを待つと崖崩れを起こし馬車毎谷に落とすことに成功した。
計画は成功した。私は喜び宰相様に喜んで欲しく馬を走らせ報告に戻る。
だが、宰相から件の令嬢は生きていると聞かされた。件の令嬢が作った魔道具で王家に連絡が届いたそうだ。
信じられない。あの崖崩れから助かるものなのか?
俺が考え込んでいる不意を着いて宰相様の剣が俺の体を貫いた。何が起きたか解らず俺は宰相様の方を見る。
「貴様は証拠を残しすぎた。貴様には用はない」
俺は意識が遠退きながらも宰相様に懇願した。
俺はキサマでなくオイだ、間違わないでおくれよと。
✳ エマ・グレイス
崖崩れに巻き込まれていたエマ達は目を開けると海岸に立っていた。隣にはロイが立っており私にここは何処かと聞くが私にも解らなかった。
リナの意識がない!?
私は慌ててリナの応急措置をしようとすると一人の男の子が話し掛けて来た。
あれ!?私、以前にもあったことがあるかも・・・
「やっぱり君は僕の事を忘れてしまったみたいだね。アメージアと言えば思い出してくれるかな?」
「アメージア様・・・」
エマはアメージアとの出会いを思いました。そしてここに連れてきて下さったのはアメージア様なのではないかと思った。
「ここにはアメージア様が!?」
「うーん、半分正解かな。正確には君の新しいスキル〖瞬間移動〗を使って転移したんだ。転移は本来訪れた事がある場所にしか行けないんだよね。だけど時間がなかったから僕の親友のゲンブの所に来ちゃった」
「ゲンブ様?」
「そう。ここはゲンブの神域に出来た島なのさ。その子は僕が見ておくから島全体を見てみるかい?」
私とロイはアメージア様の行為に甘え浮遊魔法で島中を廻る。しかし島は大きすぎて廻り切ることを諦めた。
そして私は全ての記憶を思い出して1つの決心をした。
「ロイ、私はレオナルド様を赦す事は出来ないわ」
「はい、エマ様」
「今のレオナルド様は悪くないと思うわ。でも、夢の中の話は夢ではなかった。だからロイやリナや家族の命を奪った彼と一緒になることは出来ない!」
「私もエマ様のお心に賛成です」
「でも今回のレオナルドは私の事を諦めてくれないわ。だから・・・だから私、この島に私の国を作ろうかと思うの」
「私も最大限ご協力を致します」
「ねぇロイ、この島に国を作ったら私と結婚しない?」
「!?」
「ふふ。返事は直ぐではなくても良いわ。まだレオナルド様から逃げられるか解らないもの。そうね、学園を卒業したら返事を聞かせて貰えるかしら?」
「はい」
「そろそろリナが心配だからグレイス邸に戻りましょ」
✳ レオナルド皇太子
私はエマの話を聞いてとある牢獄の前にいる。私の前にいるのは私を襲うとしてエマに撃退された暴漢であった。
「あら、皇太子様が私の前に現れてくれるなんて感激しちゃうわ」
私はこの者を以前から知っている。この者は王城で勤めていたが私がこの者の罪を裁きクビにした。
性格が少々違うように思えたがエマに男の象徴を潰された事が関係しているのだろうか?
私はこの者に訪ねなければならない事がある。
「貴様は何故私を襲った?逆恨みか?」
「うふふふ。レオナルドちゃんって相変わらずお馬鹿ね。あの犯罪は私ではなくあの者達が侵した事を私が気付いてしまい邪魔になった私を犯人に仕立てたのよ。だから逆恨みではなく普通のう・ら・み!」
「馬鹿な、ちゃんと証言も証拠もあったはずだ!」
「あんなのあの娘達がグルだと思えば簡単に解ることじゃない。あんな物は証拠とは言わないのよ。レオナルドちゃんって昔から自分を頼る者の言葉しか信じないから危ういと思っていたけど思ってた通りね。ご自分から王位継承権を返上しちゃった方が国のためよ」
「黙れ!」
私は男の言う事に返す言葉がなくただ怒鳴るだけであった。そして私に出来る事は王城に戻りあの時の事件を再調査することにした。
─ エマ12歳 ─
エマ達はアメージアの爪痕から東の国々の冒険から無事に戻ったあと瞬間移動で再びエルフの国に訪れていた。
「エマ殿、此度はどのようなご用件かな?」
「ハーミーさんご家族の処罰は決まりましたでしょうか?」
「彼らは国外通報にする事になったよ。場所は聖国だが」
「其では彼らを私に頂けませんでしょうか?」
「どういう事か?」
私はエルフの王に私の秘密を打ち明けた。エルフの王は私の話を信じて下さった。いや信じるしかなかったのだ。その方が全てが辻褄があう。
「ならば、私からエマ殿が作られる国に生きたいものを集う事にしよう」
「ありがとうございます。其と数年後に聖国が西の森を病原体とした疫病を発生させようとします。其を此方に届かせないようにするためにこの魔道具を等間隔に設置して欲しいのですが」
「了解した。直ちに取り掛かろう。ソナタらの国ににも同じ物を設置するのか?」
「いえ、私達の国は私の説明だけでは取り組んで頂けないかと思います。領地も別れておりますのでアメリア国は発生してから対応を取るしかないかと思います」
「作用か、面倒臭い国だなソナタの国は」
「はい。ですので私が作る国ではそのような柵は極力取り除いていきたいと思っております」
エルフの王の協力により多くのエルフがエマの島に来てくれる事になった。
同じようにドワーフ国や獣人国からも人材や物資を集めることができ、この年よりエマの島は急発展する事となった。
─ レオナルド皇太子 ─
件の令嬢ソフィアを見つける事が出来た。グロレンス男爵より早く見つける事が出来たのは良かった。令嬢を調べる歳に解った事実であるが彼女はダンダーク公爵の隠し子のようであった。
此は都合が良い。
私はダンダーク公爵にご令嬢を合わせると私はとある計画を告げる。
私の計画はダンダーク公爵に一年間ソフィアを教育して貰い、後日偶然を装ってグロレンス男爵の養子にさせることであった。
此でグロレンス男爵を潰せる。
此でエマと幸せな国を作れる。




