41.えっ!第一級犯罪国
─ 時は遡る事、侵攻中のナガン帝国王城 ─
「報告致します。アメリア国との交戦はドワーフの参戦により我が軍は劣勢となっております」
「この、使えない者共がーーーー!!」
「王様、アメリア国の兵がナガン領内に侵入したもよう。一時退避をお願い致します」
「前線は何をしている。我は退避している間に状況を打開せよ。兵を引くことは許さん」
シナノン王は兵に付き添われ隠し部屋に移動していた。隠し部屋に入るやいなや腹部に激痛が走る。
シナノン王が我が身の腹部を見ると腹部は刃で貫かれていた。
シナノン王が後ろを振り向こうとした時、後ろから聞き覚えのある声がした。
「本当にあり得ないよ。皆が王の指示で死ぬ覚悟で戦っているのに、その王が先に逃げるなんて」
「お、お前・・・」
「貴方は王の器ではない。僕も王の器ではないけど僕は貴方と違い民を強いたげようとは思わない。僕は民と一緒に楽しみたいんだよね。だから貴方は邪魔だからそのまま倒れていてよ」
シナノン王の腹部から剣が引き抜かれるとシナノン王は前方に倒れ込む。そのままシナノン王は一言も発することなく静かに息をしなくなった。
「皆に告げよ。シナノン王は原因不明の病にて崩御したと。そして今すぐ兵を引きアメリア国に対し和平交渉をするものとする」
ー アメリア城 王の間 ー
王の間には三方の戦いの関係者が集まっていた。そこには天帝のリーダーであるハーミーさんやエルフ・ドワーフ・獣人の代表も参加していたがフードを被った冒険者はいなかった。
「先ずは聖国境界の町で発生した暴動についてからだ」
「報告書によると宰相は鎮圧には参加せず傍観していただけで、鎮圧はフードを被った冒険者と天帝の冒険者、それにエルフの民によって行われたとあるが本当か?」
「報告には悪意があります。私は被害が王都にも及ばないよう被害を最小限に抑えるための行動でございます」
「ソナタの最小限とは我が兵の事か?」
「そうでございます」
「民の命は最小限に含まれないのだな」
「そ、それは・・・あそこの民は聖国の者も燻っておりましたので、此を気に見分けようかと思いまして」
「わしは早急に鎮圧せよと指示したはずだが、お主はわしの指示が聞けないらしいな。まだお主より冒険者達がアメリア国に忠誠しておるように思えるのは何故だ?」
「冒険者の忠誠など紛い物でございます。奴らは神木の橋を落とした処か総責任者であった私の指も切り落としました。此は許される事ではありません」
「応援に参戦してくれた仲間の区別もつかずに魔法で攻撃しようとしたお主が悪かろう。『指を加えて見ることも出来ないなら指は入らない』と言われたそうだな。わしもその通りだと思うが」
「なっ!」
「ときにハーミーとやら、フードを被った冒険者が何故に神木の橋を落としたのか解るか?」
「申し訳ございません。フードを被った冒険者は私達天帝のメンバーではないため何処の何方かも解りません。ですが、あの状況にて聖国から次々とくる侵攻を抑えるには橋を落とす事が早急な鎮圧だったかと思われます」
「成る程。天帝にはアメリア国より謝礼も含み渡したいと思う。また、エルフの民には多いに助けられた。此度、応援に来ていただき感謝する。後日、エルフ王と話し合い感謝の気持ちを形に表したいと思う」
「それには及びません。前にレオナルド皇太子達に我がエルフ国は助けられました。此度の応援はその時の感謝の気持ちですのでお気にされないで下さい」
「忝ない。それと宰相よ、お主は『早急に鎮圧せよ』と言う我の言葉に反意した。」
「なっ!」
「お主の言い訳はもう良い。お主は3ヶ月の謹慎、街の復興や貢献者への謝礼などで掛かる費用をお主の私財で負担させる。良いな。」
「つ、慎んでお受け致します。」
宰相との話が終わると宰相をこの場から下げさせ次の話をした。
「次にナガン帝国との防衛についてか」
王は届いたナガン帝国からの書状を広げた。
「先ずはジョージア侯爵、此度は無事に防衛した事への感謝としてジョージア侯爵には公爵を受爵したいと思う」
「有り難き感謝致します。ただ、此度の防衛は近領の応援やドワーフやフードを被った冒険者によってでございます」
「あまり気にする事ではないわ。わし等もエルフの民達と同じでレオナルド皇太子達に助けられたからな。此はただの感謝の気持ちだ。気にされても困る」
「その言葉感謝致する。時にフードを被った冒険者はドワーフの民の知り合いか?」
「いや、そんな冒険者知らんぞ」
「さようか。では最後に北のスタンピードであるが。無事な鎮圧ご苦労であった」
「いえ、我々も近隣の応援や獣人国の応援があってこそでございます」
「獣人国か。此度は我が国の窮地を助けて頂き感謝する」
「我々はエマ殿に頼まれたから来たまでだ」
「エマ・グレイス侯爵にか?」
「ああ、貴国には凄い令嬢がいて羨ましい。今は飛び疲れて我が国で休んでおられる。暫くしたら回復して戻られると思うので安心して欲しい」
「成る程。エマ・グレイス侯爵の事はご迷惑をお掛けするが宜しく頼みたい。それと、フードを被った冒険者が怪しい人物を捕まえてお主達に引き渡されたそうだが」
「我が国には相手の考えていることが読める獣人族がおります。その者に調べさせたところ、件のスタンピードは聖国の魔物使いと言う者達による仕業だと解った」
「やはり聖国か・・・」
「また、前回の黄熱病の事件も魔物使いによってだそうだ」
「証拠として提示は出来るか?」
「考えを読める獣人族を信用して貰うしかない。後は取り押さえた者にこのような刺青がしてあった」
刺青のデザインをガルディア王に提示した。その図は聖国の上位職の焼き印であった。
「この後に行うナガン帝国との和平交渉で何かしらの証拠が得られるかもしれん。これ等の証拠を踏まえ各国と相談しアメジア聖国を『第一級犯罪国』に定めようかと思う」
「えっ!第一級犯罪国ですか?」
【犯罪国】
国全体を悪しとしその国との取引や行き来した者も犯罪に問われてしまう。その第一級となると更に酷い。その国に援助も行わないし、理由なしにその国に責めても他国から批判されない。簡単に言うと空地状態となりどの国が武力で手に入れても問題ないとされる。
尚、その国の民は奴隷落ちとなってしまう。
「うむ。その方向で話を進めようかと思う」
「次にグレイスギルド長よ、フードを被った冒険者について何か解らぬか?」
「発言失礼します。私はスタンピード討伐に参加しておりましたが、あのような能力や格好の冒険者に該当するものが解りません」
「そうか」
「宜しいか?」
声を上げたのは獣人族の代表者であった。
「もしや知っておられますか?」
「スタンピードに現れたフードを被った冒険者と似たような背格好や似たような能力を持った者は我が獣人族にいる。ただ、3ヵ所同時に現れる事は難しい。なので3ヵ所に現れたのは別人なのでは?」
「別人とは?」
「3ヵ所各々に現れた人物の話を聞くと同一人物のように思えるが、あのような姿なら多くの者が真似出来る。そこに似た能力の者が集まれば同一人物が同時に現れたように見せたかもしれん」
「だが、それをやる根拠がないと思うが」
「我が国はひねくれ者が多く、エマご令嬢に頼まれても断った種族も多くいる。そして一度断った手前表立って助けに行くのが恥ずかしくあのような格好をしたのでは」
「成る程」
「此を裏付ける根拠として能力がエマご令嬢に似ている。我々が知っているアメリア人はエマご令嬢だ。なので怪しまれずに能力を使うためエマご令嬢の力に似せたのではないかと思う。私もこのように能力を似せる事が出来る」
獣人族の代表が手を翳すと風の薄い刃が飛び遠くにいる護衛騎士の盾が真っ二つに切り落とされた。
目の前に各々の戦況から話されたフードを被った冒険者の能力と話で聞いた限りでは同じであったため、獣人の話に信憑性が出てきた。
「もしかしたらお主はそれらしい人物を知っているのか?」
「知っていると言えば知っているし知らないと言えば知らん。何せ『ひねくれ者』『似た能力』など多々いる。『似た姿』については獣人には変態機能を持った獣人が多くいるため判断基準には難しいだろう。知っているとすれば我が国王から隣人となってしまう」
「断定は難しいと言う事か・・・」
「すまない」
「いや、こちらも神木の橋の件は不問にするつもりであった。我が要求『早急な鎮圧』には必要な事だったかと思う。ただ、感謝の気持ちが伝えられないのが残念であった」
「エマご令嬢が行ったとは考えられませんか?」
レオナルド皇太子がガルディア王の言葉が終わったと共に話始めた。
「エマご令嬢は獣人国で休まれておりました。それが私が最後に見たエマご令嬢の真実です」
【エマ・グレイス】
17歳 女性 Lv158
職業 〖侯爵〗 適応魔法 闇
体力 800 魔力 620
力 385 守 155 速 200 知 620
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv8 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 弓豪Lv10 弓神Lv2 拳豪Lv10 拳神Lv10
スキル 〖浮遊 Lv35〗〖収納 Lv35〗〖空間移動Lv12〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv9〗
魔法ギルド オリハルコンランク
商業ギルド AAAランク
冒険者ギルド AAAランク
エマ商会 120店舗




