38.えっ!暗殺者!?
黄熱病の騒ぎも落着き学園での生活も再開する事になった。
「エマさん、信じられませんわ」
「えっ!何がですか?」
「『何がですか?』じゃありませんわ。病原体の中に行くなど信じられませんわ」
ラミーユさんが私が不可侵の森に行ったことにお怒りの様子であった。だけど、怒り方が可愛らしいので全然恐くない。
「ふふ。エマさん、ラミさんはエマさんが病原体を探しに行ってしまい、エマさんの御身体に何もなければと心配していたのですわ」
「それは申し訳御座いません。伝書鳥や文等は感染の恐れがあるからと禁止されていたもので。大切なラミさんとリサさんにだけでもとお願いしたのですが許可されませんでした」
そう、エマは王家よりグレイス領内で行動制限を受けていた。あくまでも病原体の近くにいた事での感染拡大の抑止であったが、聖国との取引が終るまで管理下にあったため、学園への復帰は他の者よりも遅れてしまった。
「大切・・・」
ラミさんの顔が少し赤くなった。本当にラミさんは扱いや・・・可愛らしい。
「ところでエマさん、本当に起きますの?」
「ええ、夢の中の通りなら夏の終わり頃には」
学園に入学するタイミングで二人にエマの秘密を打ち明けた。今回は伝染病事件やこの後起きる事件は二人も無関係とは行かなかったからだ。
「そうですのね。それとなく父に進言しておきますわ」
「エマ様、そろそろ時間です」
「あら、とうとう侯爵様にあられるのですね」
そう、この後、エマは今回の働きにより侯爵を受爵する事になる事を前回のレオナルドとのお茶会の時に教えて貰っていた。
その関係でエマは王家に呼び出されているため午後の授業は休むことになっていた。
「侯爵様になっても変わらないで欲しいですわ」
「当たり前じゃないですか、リサさんとラミさんは大切な親友ですよ、二人なくしては私の人生はあり得ません」
そうあり得ない。
あり得ないから今後のためにも秘密を打ち明けたのだから・・・
王城には父ゼニスと兄エニスがエマが来るのを待っていた。
今回、授与はエマだけでなく父ゼニスも公爵を授与される事になっていた。また、兄エニスは子爵を授与され、学園を卒業すると共にグレサルの地域がグレイス領から分領され兄エニスが領主として納める事になった。
後日、グレイス領ではパーティーが開かれる事になった。
ー ナガン帝国 ー
「クソッ聖国の奴らめ!何がアメリア王家を潰すチャンスだ。奴らが潰れているではないか!」
各国のトップが集まった会議にてアメリア国を予定通り断罪する事が出来ずナガン帝国の王は怒りを爆発させていた。
「王、ここはアメリア国と和平交渉した方が良いのではないでしょうか?」
「貴様!アメリアごときにこの俺に頭を下げろと申すか!」
「ですが、ここ最近では我がナガン帝国とアメリア国との経済格差が激しく国民の不満が怒りへと変わりつつあり、既に小さな暴動が起きております。此が大きな暴動に繋がる前に早急の対応が必要でございます」
「ふん。今まで何も文句言わなかった愚民共が、少し魅力があるからと騒ぎやがる」
「ですが、人の流出は激しく、ここ五年だけで少なくても5万人が隣国に移住しております。エマ商会が1店舗でも我が国に出店してくれるだけで違うのですが」
「ここでも、あのエマと言う娘か。黄熱病の時も邪魔しおって・・・」
ナガン帝国の王は自身の言葉に少し沈黙するとニヤリと禍々しい笑みを見せた。
「そうだ。邪魔なら排除させれば良いでわないか」
「なっ!そんな事したら永久に令嬢の恩恵を得られませんぞ」
「五月蝿い!これ以上逆らうなら貴様の首を先に飛ばすぞ!『影』に件の令嬢の始末をさせろ!」
「わ、解りました・・・」
ー グレイス領主館 ー
授爵を祝うパーティーがグレイス領で行われた夜に領主の館に複数の影が揺らめく。
影は徐々に3階のエマの寝室に近付きつつあった。
一人・・・
また一人・・・
・・・
あれ!?
逆に影が減っていっている。
先頭の影が後ろを振り向くと己以外誰もいない事に気付いた。
「お前ら馬鹿だろ」
影は声がする方に向くと仲間の影が倒れ行く中に一人の騎士が立っていた。
「師匠。此方は全て終わりました」
「師匠ではない。其処にいる者が迷い混んだ最後の客人らしい」
「そのようですね。さて、こんな夜更けにグレイス家にどのようなご用件でしょうか?我が主は今宵のパーティーでお疲れになられておりご就寝になられておりますので我々がお伺い致しましょう。あっ!他の者達は先に永眠されております」
「貴様に選ばせてやるよ。一、抵抗して両腕を切られ捕まる。二、抵抗しなくても念のため両腕を切ってから捕まえる。三・・・」
残された影はロックウェルが喋り終る前にこの場から逃げようと踵を返す。
が、ロックウェルの一閃の方が早く、影の両足が本体から離れた事で影はその場で倒れてしまう。
「なーお前らが夜襲を仕掛けようとしている相手はAAランク冒険者だぞ。しかもグレイスの騎士が集まる中で成功するとでも思っていたのかよ」
「貴方は我々に誘い込まれただけなのですよ。武力で我々に勝てるわけないのにナガン帝国の王が馬鹿なのかあなた方が馬鹿なのか」
両足を切られ悶えていた影は騎士の口から『ナガン帝国』と言う言葉が出てきて驚きを隠せないでいた。
「おや!?何で知っているか不思議ですか。其処はお話する訳にはいきませんね」
「早い話、お前が歯に仕込んでいる薬を飲んで死んでくれても別に構わん。此から行う尋問は食後に飲む紅茶みたいなモノだ」
「夜明けまでまだ長いですよ」
ー ナガン帝国 ー
「なっ!影が消えた!?」
「はい。定期連絡が途絶えました。消されたと考える方が良いかと思います」
「ナガン帝国の精鋭達だぞ」
「彼方はアメリア国北方の魔物から日々領民を守るアメリア国一といわらる騎士団の本丸です。更にエマ・グレイスはAAランクの冒険者ですよ」
ナガン帝国の王は此度の失敗により一人の令嬢に恐怖を感じ始めていた。
その中で聖国より一枚の手紙が届いた。
「フッ、フハハハハハハ」
手紙を読むとナガン帝国の王は笑いが止まらない。
「どうされました王よ?」
「夏の終わり頃にアメリア国に責め込む。全軍準備に掛かれ」
「何ですと!」
「二度と言わぬぞ。全軍準備させるか、この場で処刑されるか好きな方を選べ」
「軍隊長に指示をして参ります」
ナガン帝国の宰相は部屋を出ると一人の男が立っていた。
「兄さんはどうだった?」
「アメリア国を攻めるようです」
「本当に?とうとう兄のネジが取れたかな?」
「ローレン様、準備をして下さりますと助かります」
「そうだね。本当はもう少し遊んでいたかったけど仕方がない」
「ナガン帝国の将来の為・・・」
ー グレイス領主館(夜襲の次の日) ー
「えっ!暗殺者!?」
「気付いておられたのではありませんか?」
「来るとは思っていたけど、まさかこんなに直ぐに来るとは思わなかったわ」
「呑気ですね」
「失礼ね。それでその者達はどうしているの?」
「(斬り)離してあげました」
「あら、意外と優しいのね」
【エマ・グレイス】
15歳 女性 Lv135
職業 〖伯爵〗 適応魔法 闇
体力 725 魔力 575
力 350 守 140 速 170 知 575
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv7 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 弓豪Lv10 拳豪Lv10 拳神Lv9
スキル 〖浮遊 Lv30〗〖収納 Lv30〗〖空間移動Lv10〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv8〗
魔法ギルド プラチナランク
商業ギルド AAAランク
冒険者ギルド AAランク
エマ商会 108店舗




