33.えっ!商会長
エマ・グレイスも14歳になりました。
来年はいよいよ学園生活の始まりです。
エマとリーサオーラは同じ年齢でしたが、ラミーユはエマ達よりも1歳年下です。
なので本来ならばラミーユの入学は来年なのですが『試験』による入学を目指しているらしいのです。
王立学園は一般市民も通うことが出来ており、その際に必要なのが『試験』による合格なのです。
貴族は『試験』なしで入学出来るのですから無理をしなくても良いと思うのですが「私も一緒に行きますわ」と涙目で仰っておられたので私達もたまに受験勉強のお手伝いをしていました。
また、子爵以上のご令嬢・ご子息は従者も一緒に入学させます。ですので通常、従者は同年代か2~3歳程年上の者が務めております。よってロイとリナも一緒に通う事になりました。
夏・・・
いよいよ受験の日です。
ラミーユは緊張しておりましたがリーサオーラと私は何の心配もしてませんでした。
試験内容は私達が普段から家庭教師達から学んでいる内容であり、ラミーユは更に王家に嫁いでも良いようにハイレベルな教育を受けていたためである。
1ヶ月後の合格発表では首席で合格となってました。
当たり前ね・・・
そして今日は王都にて入学に必要な制服や雑貨等を購入しに皆で出かける事にした。
「新入生のリボンの色は青なんですね」
「赤ではなく残念ですわ」
「あら、青も可愛くありません」
リボンの話で盛上り次は制服作りのためのサイズを測っていた。
「リサオラさんのお胸、更に大きくなられてません?
もう罪ですわね」
「・・・」
「あら、ラミーユさんこそ、キュッと締まったお腹が羨ましく罪深いですわよ」
「善人は私だけですわね」
「「あっ!」」
そこは「そんなことないですわ」の一言が欲しかったわ。
従者も含め買い物を楽しんでいると「ここエマさんの店じゃありません」とリサさんが仰られた店を見ますと『和』テイストの『茶屋』であった。
「少し疲れましたしここで休憩いたしませんか?」
私が提案したところ皆が賛成してくれたので店に入ることにした。
「えっ!靴を脱ぎますの?」
ラミーユ令嬢が驚いている。
確かにこの世界は靴を脱ぐ文化はない。だが、前世の記憶がある私とリサは何の戸惑いもなく靴を脱いで下駄箱にしまった。
貴族は胡座をかいたり正座して座る事をしないため席は掘炬燵式にしている。
「あれは何ですの?」
ラミさんの視線の先を見ると『風鈴』の事であった。
『風鈴』は今年の夏に向けて生産したエマ商会の商品である。
「あれは風鈴で今年の春に売出したモノですね。音が綺麗で自然と涼しくなりませんか?」
皆で耳を澄ますと『チリリリーン、チリリリーン』とそよ風の度になる音色によって涼しさが感じる事ができた。
「素敵ですわ。音だけで暑さが和らだように感じられますわ」
「来年の夏はラミさんにデザインをお願いしたいのですが?」
「本当ですの?嬉しいですわ。是非やらせて下さいませ!」
装飾品のデザインを行っているラミーユが手掛ける風鈴を想像するだけで凄いことになるだろう。
思い耽っていたところ定員がメニューを持ってきた。
「お薦めは何ですの?」
「そうてすね。『団子』で『みたらし』『あんこ』『磯辺』『きな粉』等色々なモノがありますが一串3個ずつですので3人で分けませんか?」
「いいですわね。あと甘酒も頼みませんこと?」
私達は団子各種と甘酒、そして蜜豆を注文することにした。団子一つ一つをフォークに刺して食べる姿は妙に可笑しく感じる。それに一つ食べる度に幸せそうな顔をするラミーユが可愛い事。
「そういえば先程の『風鈴』ですが『デパート』で売ってませんの?」
今のエマ商会は『食品』『魔道具』『雑貨』『衣類』『装飾品』『貴金属』『魔道車』『運輸業』など幅広い分野で手掛けている。そしてその全ての商品を取り扱うデパートを王都にて出店した。
そして、風鈴であるが置いてあるとは思うが季節的に処分セール品となっているかもしれない。
「多分ですが、まだおいてあると思いますよ」
「行ってみたいですわ」
本当にラミーユさんは愛らしい。
まるで東京に初めてきた修学旅行生のようね。
お昼を終えたエマ達はデパートに向かおうとお店を出た所、レオナルドとバッタリと出会った。
「私達は今採寸してきたところだ。ラミーユは終わったのかい?」
「ええ、お兄様。私達は既に終えて此処でお茶してましたの。
この後、エマさんのデパートで風鈴を買う予定ですわ」
「「「風鈴?」」」
「ええ、エマ商会で今年売り出したものです」
「エマさんの考えた『風の音』は素敵ですわ」
「『風の音』か・・・いいね。私達も一緒に行っていいかい?」
「あら、淑女の買い物は時間が掛かり大変ですけど宜しいのですか?」
「はは、少しお手柔らかに頼むよリーサオーラ」
皆でデパートに向かった。1階は食料品を中心となっており、新商品や雑貨類は2階のため皆で2階に行く。
2階に昇ってすぐ目の前には最近売り出したものばかりを品揃え、皆が知らない商品が数々置いてあったことで、リーサオーラさんやラミーユさんだけでなく男性陣からも店員に質問が飛び交った。
店員も貴族の団体による質問攻めでかなり緊張していたようである。
名札には新人の文字が書かれている。
涙目になっていた店員もいたので申し訳ない。
お目当ての『風鈴』を買い終る頃には日が暮れ初めていた。
ー エマデパート ー
私アリエッタはエンブラント領内にあった小さな商会の次女として生まれた。商会の娘であり嫁ぎ先も何処かの商会か下級貴族かと思われていたため、経営についての勉強は幼い頃から行っていた。
私はかなり算術が得意だったようで要領掴めば簡単で三桁同士の掛け算も暗算で出来た。
だが、18歳になっても未だ一つも異性とのお付き合いすらない。
申し訳ないが顔には自信がある。だが、男には下らないプライドがある。特に下級貴族の令息や商人の令息などはプライドの塊だ。
ちょっとしたミスを女性が指摘すると『五月蝿い』『生意気な』などやっかみが飛んでくる。
なんて下らないのだろう。男は女を下でしか見れない生き物なのだ。対した実力もないくせに異性への高望みをし尚且つ高望みをした異性が自分より下でないと気にくわない。
(あのハゲが!!大人しくしてればお茶や食事に行こうだの、疲れてないかいって勝手に肩揉み出すわ、挙げ句にちょっと指摘しただけで違う分野に担当変えするなんてムカつく)
この日も勉強がてら他の商会で働いていたが、上司との関係が上手くいかずストレスがかなり溜まっていた。
(エマ商会?確かグレイス領で今噂の商会よね。そう言えば、エンブラント領にも初店舗が出来たって聞いてたわ。どんなものがあるのか覗いて見ましょ)
エマ商会の品物は自分の家の商会でも取り扱っていたり、今働いている商会でも取り扱っていたが、ストレス発散がてらに覗いて見ることにした。
(何これ?同じ『ドライヤー』でもデザイン・サイズなどの品揃えが凄い。えっ!左手用もあるの?)
自身が知っているエマ商会の商品との違いに驚いたが、其よりお店の雰囲気が違う。
キョロキョロと見渡すと1枚の張り紙を見つけた。
『お客様へ、当店では異性へ無断に触る行為や異性を誘う行為などは禁止しております。
もし、見掛けましたら当店への出入りは禁止させて頂きたく思います。
また、あまりにも酷い場合は警兵に連絡する場合もございます』
(す、素敵!!)
私はあまりにも興奮して下働きでも良いから雇って欲しいと嘆願し、返事を貰えた翌日にはハゲ頭に辞表を投げつけエマ商会で働き始めた。
なんて、素晴らしい環境なのだろう。こんな素晴らしい商品や職場雰囲気を私より年下の女の子が作ったなんて信じられない。
私も天才やら才女やらと騒がれて来たがレベルが違う。
それに、あそこまで突出していると異性からも崇められるのだと思い知らされたわ。
神よ。神。私も『エマ様のお人形』を購入して崇める事にした。
そんな私もエマ商会で働いて3年。取得できる資格はどんどん取得して今では王都にある初の大型商店『デパート』の支配人に抜擢された。結婚もする事ができた。エマ商会に来ていい事ずくしね。
「さぁ、皆さん今日も元気に頑張りましょう!」
「はい!!」
エマ商会の店員は正直大変だ。次から次へと新商品が出てくるから商品の説明が出来るようにしないとならない。
なので、職員は3ヶ月の教育期間がある。今日も教育期間を無事終え、本日デビューする新人がいる。
「リリナさん、今日の午前中は先輩の後について学び午後から一人で頑張ってみて」
「は、はい」
「緊張しなくても大丈夫だから。何かあったら『目配せ』して。直ぐに助けに入るから」
このデパートにはいくつかのハンドサインがある。
『応援頼む』『交代要請します』『今は離れられません』『要注意客あり』『了解』などお客様に解らないようにサインを送り会うようにしている。
「あ、ありがとうございます」
そんな新人も午前中は先輩と一緒に行動し問題なく仕事が出来ている。いや、それどころかかなり優秀に感じる。この調子なら午後も大丈夫なようね。
お昼も順番にとり午後の仕事に励むことにした。
「ザワザワ」
「!?」
「ザワザワ」
「何か外が騒がしいわね。何かしら?」
フッと、ざわついている元へ視線を向けてみた。
「レオナルド王子!!」
(いや、他にもテキサル侯爵ご子息のカイン様とご令嬢のラミーユ様。それとエリュード公爵ご令嬢リーサオーラ様に・・・)
アリエッタの時が止まったように感じた。
(あれは・・・)
(嘘・・・・)
(間違いない!)
(エマ様!!!!)
「えっ!商会長」
新人のリリナも思わず声を出してしまった。エマ様は両手を合わせリリナに向かって申し訳なさそうに会釈した。エマ様に認識して貰えるなんて羨ましい・・・
「ちょっといいかい?」
「ひゃい!?」
「此れはどうやって使うんだい?」
「こ、こちゃらは・・・」
新人のリリナが初めて一人で接客する事になったお客様がレオナルド王子や高貴なご令嬢ご子息の方々。それを商会長が見ている前で行わなければならない。
様々は品物の質問をされ何時倒れても可笑しくない状態だと思うが、私はエマ様のご尊顔を拝めたことに感極まり頬にツーっと涙が流れていた。
(て、店長~もう無理です助け・・・って、泣いてる?)
リリナさんから『応援頼む』のサインが送られてきた。
(ごめん、ムリ)
私は『今は離れられません』のサインを返す。
リリナにはこの日『特別手当』が支給する事にした。そして皆から尊敬の眼差しで見られ次にオープンするエマ商会の店舗の新しい店長に選ばれるなど、スピード出世していくのであった。
私は今日の事を忘れないわ。教えてあげなくては。
お腹の中の子に・・・
【エマ・グレイス】
14歳 女性 Lv110
職業 〖伯爵〗 適応魔法 闇
体力 655 魔力 500
力 280 守 115 速 135 知 500
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv7 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 弓豪 Lv8 拳豪Lv10 拳神Lv7
スキル 〖浮遊 Lv25〗〖収納 Lv25〗〖空間移動Lv10〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv6〗
魔法ギルド プラチナランク
商業ギルド AAランク
冒険者ギルド Aランク
エマ商会 78店舗




