21.えっ!エマ様が要注意人物!?
エマが外出出来るようになった事を祝うため約束していた通り三人の婚約者候補とレオナルド皇太子の4人でアメリア国内を視察旅行することになった。
ー テキサル ー
「今日はお世話になるよ。カインにラミ」
「ええ。ゆっくりしていって下さい」
豆は保存が出来るためテキサルでは豆の生産が盛んに行われていた。だが、栽培が過剰となり備蓄が溢れてしまったとラミさんより相談されていた。前世の記憶を活かし青い鞘の状態で食べられないか訪ねてみたところ『枝豆』の収穫が行われるようになった。
「へぇー未熟の大豆ってこんなに美味しかったんだね」
「私はこの枝豆餡のお饅頭が好きですわ」
「私は枝豆の天麩羅が好きですね」
カイトラミーユが其々が一押しと思う枝豆料理をレオナルドに進めていた。
それにしても、前世の記憶により枝豆を食べていると凄く懐かしく思える。お風呂上がりにお摘みとしてよく食べたあの頃の記憶を思い浮かべながら枝豆を食べ続ける。
「枝豆食べるとビールが欲しくなるわね」
「「「えっ!」」」
しまった!前世の記憶の話だったわ。
ー フジョー ー
ここはフジョー公爵領でメキシア国と結ぶ橋がある。そしてここフジョー領にはもう1つ観光地として有名な場所がある。
『神の指』と言われる場所だ。
アメージアの爪痕といわれる隣国との間に大きな谷で遮られている。
幅は広い場所で200m以上あり、深さは底が見えないため解らない。
その中で有名な場所『神の指』に来ていた。
『神の指』とは幅が5m~10m程で長さが100mと長く飛び出しており、隣国と最も幅が狭い場所で、その形から神の指と言われている。
「ちょっと、リサさん押さないで下さいます」
「ふふふ。ご免なさい」
「レオナルド様、この谷の底はどうなっているのですか?」
「う~ん。それがどの学者や書物にも解らないんだよね」
「エマ様の浮遊魔法なら降りられるんじゃありません?」
「出来るかも。でも何があるか解らないから無理に行きたくないです」
「因みに何人くらい可能なんだい」
「今のレベルですと15人くらいならなんなく。無理をすれば20人くらいですね」
「そうか。無理はさせたくないな」
「観光目的で行く場所じゃないですわね」
「ラミ、気を付けろよ。お前おっちょこちょいだから」
「大丈夫ですわカイン様。先程からラミさんは真ん中しか歩かず端に行こうとはしませんもの」
「こ、怖いわけではなりませんわ。ただ、崖が崩れたら危ないと思っているだけですわ」
「ラミ様、エマ様の側にいれば浮遊魔法で安全ですよ」
「そ、そうですわね。考えておきますわ」
と言いながら少しずつエマに近付きエマのドレスの端を掴むラミーユ令嬢の仕草が・・・
(か、可愛い。ラミさん見てると癒される。)
「それにしてもここは風も強いのですわね」
「た、確かにこの風は危険ですわ」
「こんなに風も強いと橋で両国を繋ぐもの難しいですわね」
「そうなんだけどね。だけど不思議な事に二つ程橋が繋がっているんだよね」
「確か神木をくり貫いて造られているのですわよね」
「そうなんだよね。ここからうっすら見えるかと思うんだけど、あれがそうだよ」
「あの、もう宜しいのではなくて」
ラミーユの限界が来たようなので次の観光場所の神木の橋に向う事にした。
ー 神木の橋 ー
「これは凄いですわね」
「確か神木が使われて腐らないとされているんですわよね」
「そうなんだよね。『誰が』『いつ』『どうやって』作ったか解らないんだよね。もう一つの橋も同じだよ」
「でも、ここの街の雰囲気は他の街と少し違いますね」
「よく解ったね。ここは隣国との取引が盛んなため隣国の文化が強く根付いているんだ。食材なんかも隣国のものが多く売られているよ。
ただ気を付けて、凄く辛いものだったり逆に凄く甘いものだったりするからね」
「今日の夜はここに泊まれるのでしょ。大丈夫ですの?」
「大丈夫だよ。ちゃんと観光客に合わせた料理を頼んであるから」
「助かります。私もリナも辛いのは苦手なもので。ラミさんやリサさんは大丈夫なのですか?」
「私は大丈夫ですがラミさんは苦手みたいですわよね。カレーも甘口を食べておられますし」
「何かラミさんらしいですね」
「エマさん、『らしい』とは何ですの『らしい』とは?」
「ふふ。ご免なさい。でもお仲間が出来て良かったです」
晩餐に出させれ料理は前世で言う『エスニック』風なものが多く出来るだけ辛さを抑えて頂いてあったためリナや私は食べる事が出来たが、ラミさんは駄目だったらしい。
「ラミさん、これリナが作りました携帯食用のサンドイッチですが宜しければ食べませんか?」
「あ、有り難く頂きますわ」
「確かに殆ど食べていませんでしたものね」
「皆さん、よくあんなにお辛いもの食べられますわね」
「ラミさんは新婚旅行にメキシア方面は無理かもしれませんわね」
「ですね。兄に伝えておかないと」
「な、何でそこでエニス様が出て来ますの!」
ー アメージアの涙 ー
グレイス領から続くトーレ川が最終的にここで滝となって谷底に落ちていく。
「これがグレイスからここまで流れて来ているんですね」
「グレイスだけでなく、テキサルからもエリュードからも流れている川が一つとなりここで滝となっているんだ」
「確か滝の幅が300mほどでしたか」
「これどうやって向こうに渡りますの?」
「ここから川沿いに10kほど戻ると川幅が少し狭くなっているとこに橋があるからそこから向かおう。
ただ、そこから先は車を乗り換えて行かなくてはならないから橋を渡る時は荷物を手運びしなくてはならないんだよね」
「あの、浮遊魔法で渡れますが・・・」
「そうか。それじゃお願いしてもいいかな?」
「はい。大丈夫です」
ー ナイル ー
「ここが話をした川渡りの橋だよ」
「ここは車が通れるように出来なかったのですね」
「ここを治めるナイル伯爵がこの橋に歴史的美しさを見出だしていて壊したくないそうなんだよね」
「隣に建てるのも駄目なんですの?」
「景観的に反対されている」
「後は穴掘るしかありませんわね」
「「「・・・」」」
「な、何ですの?」
「おまえ、たまに凄い発想するな」
「エマ、可能かい?」
「はい。専門的意見も必要ですが理論的に難しくないかと思います」
「もし完成したらラミーユトンネルとでも名付けよう」
「遠慮しておきますわ」
エマの浮遊魔法で無事に対岸まで渡ることが出来た一行は次の街ユダンに向かった。
ー ユダン ー
「ここが二つ目の神木の橋があるユダン侯爵領だよ」
「ここは寄られないのですか?」
「この街はちょっと難しいんだ。車からおりないで通りすぎるだけさ。特にエマは聖国では要注意人物扱いされているかもしれないからね」
「えっ!エマ様が要注意人物!?」
レオナルド皇太子の言葉にリナが驚き声を上げる。私も身に覚えのない事であったため理解出来ない。
「橋の向こうのアメジア聖国では魔道具類の『持込み』『使用』『譲渡』などが禁止されているんだ。だからこの街の者達も魔道具を嫌っていてね。魔道具の母と言われているエマは注意した方がいい」
「こっちではエマさんが新婚旅行に来れませんのね」
「意外と大丈夫かもしれませんよ。アメジア聖国にもエマ商会の店が3店舗ありますから」
「エマ商会は魔道具だけでないからね」
「ラミさんとリサさんのお陰で服飾事業も始める事が出来ましたから」
リーサオーラがエマ商会のメンバーに入っている事は前述で述べてあるが、実はラミーユも商会に入っている。
理由は「仲間外れは酷いですわ」だったが、リーサオーラは服のデザインセンスが高く、ラミーユは宝石などの装飾品のデザインセンスに優れていたため、二人が手掛けたデザインの服飾をまとめた店をグレイス・王都・カディア王国・エリイスそしてアメジア聖国と5店舗ほどオープンしたが、今や注目の的となっている。三大令嬢が手掛ける店として話題となっていた。
それと初めて解ったことがある。
『魔道具の母』?
広まる前に早く火消しをしようかと思ったがリサさんの笑みを見て諦める事にした。
ああ、もう遅かったのねと。
「本日はどこで泊まりますの?」
「ユダン侯爵の領主館に泊めさせて貰う予定だよ。ちょっと一癖二癖ある侯爵だけどね」
レオナルド皇太子がここまで言う侯爵が気になってしまったが、一行が到着するとユダン侯爵は聖国とのトラブルで不在であった。
執事の者に案内され一通り問題なく一晩を過ごす事が出来たが、レオナルド皇太子が先触れも出して来たのに留守にされるとはレオナルドの言う通り一癖ありそうね。
【エマ・グレイス】
12歳 女性 Lv62
職業 〖男爵〗 適応魔法 闇
体力 410 魔力 330
力 170 守 72 速 87 知 325
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv4 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 弓豪 Lv1 拳豪 Lv9
スキル 〖浮遊 Lv16〗〖収納 Lv16〗〖空間移動Lv6〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv2〗
魔法ギルド ゴールドランク
商業ギルド Bランク
冒険者ギルド Cランク
エマ商会 20店舗




