20.えっ!健康ですよ
ー マック ー
「なぁ~エマ様、最近冒険に行かないがどうしたんだ?お、俺としては稽古が出来ていいんだが、たまには『リナの(小声)』弁当が食いたいと言うか少し鍛えた剣術を試してみたいっていうか、ちょっと行ってみるのもいいんじゃないか?」
「リナが怪我したらどうするのよ!」
「でもたまには弁当食べたいというか・・・」
「解ったわ。今度、稽古場にリナと一緒に見学行くからそこでお弁当食べるのでどうかしら?」
「本当ですか。楽しみにしてます!」
ー セバス ー
「以上が今月の収支になります」
「ありがとう、また宜しくね」
「・・・」
「どうしたの?」
「最近、エマ様が商会に来られる事がなくなり皆が寂しがっておりまして。今月の収支の報告も本来なら本館で行っていたのが最近は領主館の一室をお借りして行われるようになり皆が心配もしております」
「そう。ごめんなさい、今は外出する気になれないの。もう少ししたら皆に会いに行くから少し待って貰えるかしら」
「・・・。解りました。エマ様が回復されます事楽しみにしております」
ー ラミーユ ー
「大丈夫ですの?」
「えっ!」
「し、心配したわけではありませんわ。さ、最近グレイス領主館でのお茶会ばかりでテキサルやグレサルに来てくれないではありませんか。少し寂しいですわ」
「ご免なさい。少し外出するのが怖くて・・・」
「・・・」
「ごめんねラミーユ嬢。僕としては一緒に参加出来て嬉しいのだけど」
「ほ、本当ですの?エニス様!
じゃなくてですわ。私はエマさんが心配で・・・少し痩せてきてますし・・・」
「エマの事を想ってくれてありがとう。多分、もう少ししたら元気になると思うから」
(眩しすぎますわ。そんなに見つめられますと恥ずかしいですわ)
ー リーサオーラ ー
「今年の夏はシルクを使ったドレスを流行らそうと思いますの」
「ファッションについては全く疎いのでリサさんが商会に入って下さり助かりました」
「あら、私も楽しくて仕方がないのですわ。でも、今度王都で服飾専門のお店を開店なさる予定なのでしょ?嬉しいですわ」
「リサさんが、次から次へと新しいデザインを考えてくれますから助かります」
「あら、褒めて下さり嬉しいですわ。そうだわ、今度ラミさんも誘って王都へ買い物に行きませんこと?」
「・・・」
「まだ駄目ですの?」
「はい」
「無理をする必要はありませんわ。少しずつ良くして行きましょ」
「すみません」
ー レオナルド ー
「予定より遅くなったが魔道モーターが完成したよ」
「本当ですか!これで王都まで1日で行けるのですね」
「次はアメリア国外周を結ぶ魔道モーターを計画しているよ」
「素晴らしいですわ。完成したら皆さんで旅行に行けますね」
「・・・」
「どうしましたか?」
「ごめん。女性にこんな事聞くべきではないのだけど、エマちゃんと食事とれているかい?ちょっと痩せすぎじゃないかな?」
「少し食欲がなくて・・・でも大丈夫ですわ。『ウドン』とか『雑炊』とかを食べておりますので」
「エマ・・・」
「はい?」
「大丈夫。何も起きないよ」
「ありがとうございます」
ー リナ・エンブラント ー
「あの、エマ様・・・」
「何?」
「エマ様が近くに居て下さるのは嬉しいのですが少し近過ぎです。これでは仕事が・・・」
「そう?」
「大丈夫ですよエマ様」
「リナ様、諦めた方がいいよ」
「ですが、これでは仕事が・・・」
「グレイス様から一週間程リナ様をサポートするよう頼まれました。後少しの辛抱ですね。俺からしたらそれだけエマ様の側にいられて羨ましい限りです」
「そんな~」
そう今は私が12歳となった夏。8月7日、夢の中のリナが亡くなった日。
夢の中の私はこの日以降笑うことが殆どない。
もしかしたらレオナルドもそれが嫌だったのかもしれない。
でも今は夢の中と違う。グレイス家で三男が生まれている。王家も三男が誕生した。夢の中では誕生しなかった生命。
現実は夢の中と違う。
現実は2年前に盗賊に襲われなかった。
だから大丈夫。大丈夫なはず。解っているけど・・・
だが、今年になりリナが風邪で少し寝込む事が起きた事でエマが夢の中の出来事が現実に起きるのではと過剰反応するようになってしまう。
風邪から復帰したリナに「体、大丈夫?」と口癖のように毎日聞くためリナも「えっ!健康ですよ」と毎日答える日が続いた。
日に日に心配が強くなるエマは過保護となり、冒険で魔物の毒に侵されるのではと思い今年の冬明け頃から冒険活動を控え、街で暴漢から毒を掛けられるのでと思い外出を控え、食事をとられる量も少しずつ減り、日に日に痩せて行くエマを皆が心配していた。
※因みに現実のリナは冒険により『キュアヒール』を取得しレベルもかなり高いため毒は簡単に浄化出来てしまう。
それも後数日・・・
リナ自信も本当は心配で仕方がなかった。
でも、隣に自分以上に心配してくれる方がいるため自分自身で心配する暇がない。
ー 8月7日 ー
いよいよこの日が来た。
私が抱き付いたままで離れないためこの日は私の部屋で過ごすようグレイス家からお願いされたリナはエマのベッドに座り込んでいた。
カチッ!カチッ!
刻一刻と時が進む。
ブォーン!ブォーン!ブォーン!ブォーン!ブォーン!
鐘の音が夕刻を知らす。
リナが亡くなったとされる時は既に過ぎている。
だが、私はリナに抱き付いたままだ。
日が変わるまで安心出来ない。この日はリナにお願いして一緒に寝る事にした。
エマは寝言で「リナ死なないで」と繰り返し呟く。
リナはその呟きを聞いて4年前のエマが高熱時に魘され呟いていた事を思い出していた。
リナは思う・・・
(ね、眠れない・・・)
ー 朝 ー
エマが目を覚ますと既にリナは目を覚ましておりエマを優しく見つめていた。
「おはようございますエマ様」
「リ、リナが生きてる~」
エマは泣きながら再度リナに抱き付く。
「生きてますよエマ様。そろそろ放して頂けませんと身支度の準備が出来ないですよ」
「そ、そうね。昨日はごめんなさいね」
「いえ、こんなにも心配して頂いて嬉しいです。ただ、ご家族の皆さんや領地の皆さんなど様々な方がエマ様の事を心配しております。まずはご家族の方に元気なお姿を見せに行きませんか?」
「そうね。何だか凄くお腹が空いちゃって」
身支度を整いエマは家族が待つ朝食の場へ向かった。
姿だけでなく久しぶりにみるエマの食事、エマの笑顔に家族の皆も喜びと同時に涙が出てくる。
朝食の後は街に出る事にしたエマ達はマックも連れ久しぶりに『グレイスの女神』が集結した。
久しぶりに商会に顔を出すとエマを姿を見た皆が喜ぶも痩せ細った姿に「重病なのでは?」「もしかして最後の挨拶?」と泣き出すものもいた。
今日のお昼は久しぶり外でリナのお弁当だ。
「やっぱりサンドイッチは外で食べるのがいいわね」
「リナの料理はいつも美味しいです」
「そうだったわマック。リナの料理が食べれるなんて私すごく幸せだわ」
「私達はエマ様の食欲が元に戻られた事が嬉しいです」
食事後、街を散策していると街の皆もエマの姿を久しぶりに見て街が騒ぎ出す。痩せ細った姿に心配する声もあったが街の人達から貰ったものを食べ歩きながら笑うエマの姿を見て再度安堵するのであった。
領主館に戻るとリーサオーラ、ラミーユがエマの帰りを出迎えてくれていた。
父ゼニスがエマの食欲が戻り外出もした事を伝書鳥で報告したところ、直ぐに会いに来て下さったようだ。
「すみません。来て頂いた事を知らずお待たせしてしまって」
「ふふ。久しぶりの外出はどうでしたか?危険はありませんでしたでしょ」
「ううう・・エマ様~!元気になられて嬉しいですわ」
ラミーユ令嬢が感極まりエマに抱き付き泣き出してしまった。まるで前日のエマの姿のようだ。
(私、こんなことしていたのね・・・)
【エマ・グレイス】
12歳 女性 Lv60
職業 〖男爵〗 適応魔法 闇
体力 400 魔力 325
力 165 守 70 速 85 知 320
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv4 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 拳豪 Lv8
スキル 〖浮遊 Lv15〗〖収納 Lv15〗〖空間移動Lv5〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv2〗
魔法ギルド ゴールドランク
商業ギルド Bランク
冒険者ギルド Cランク
エマ商会 15店舗




