19.えっ!王命ですか?
エマ11歳の春、夢の中では特に何も起きない。日々弱りつつあったリナを看病するだけであった。
だが、現実世界では大きな事件が起きた。
グレイス侯爵家に次男が誕生した。
それだけではない、王妃も懐妊された。
どうやらエマが贈ったシャンプー&リンスや化粧水により再び仲が深まったようである。
夢の中ではなかった。
夢の中と違い、現実世界では新しい生命が産まれた。
エマ商会では車の開発に成功していた。しかも魔石を燃料とするため完全なエコカーを完成させていた。
尚、テキサルからエリュードを高速道路として結び今までの馬車での移動より4倍以上早く移動する事ができテキサルからエリュードが半日程度で行けるようになっていた。
「このあいだカレーを食べにミナカ村に行きましたの。驚きましたわ中央にエマさんの銅像が建っているのですもの」
今やミナカ街はカレーの産地として観光客が多く訪れ人口も倍以上に増え村から街へとなった。三年間税金免除等もあり景気は良く復興支援で頂いたお金が余っていたので代官と相談し大変にお世話になったと銅像を建てたそうだ。いい迷惑よね。
「色々なカレーがあり迷いましたがチキンカレーにしましたのよ。美味しかったけど次は違うものも食べたいですわ」
「私はグリーンカレーが好きですわね」
「私は野菜カレーかな」
「そう言えば聞きましたわよ。『電車』を計画中らしいですわね」
「ええ。実際には『リニアモーター』みたいなものね」
「何ですの?電車とかリニアモーターとは?」
「自動車より早い乗り物ですわ。多くの人を運ぶ事が出来るのですが専用の道路も必要になりますの」
「これはエリュード領やテキサル領というよりも王都と結びたいと考えてました。これが出来れば王都まで2日程で着きますわ」
「は、早すぎません」
「ええ、でもこの計画は断念するしかないかも」
「どうしてですの?」
「途中に峠が三つありますけど、穴を掘って進む必要があります。穴は私の『収納』でどうにかなるのですが穴の補強がどの程度した方が良いのか解らないのです。それに他の領の協力が必要となりますし、周辺の騒音防止や安全性、避難対策や補償問題などグレイス領やエマ商会だけでは解決出来ない問題が多いのです」
「そうですわね。車の事故などは資格制度やルール規制や自動移動機能によってかなり減りましたが0ではありませんものね」
「でも、馬車の事故の方が多いのではありません?」
「スピードが速ければ速いほど人の命の危険が高まりますから事故率を減らす必要があるのです」
「そんなに早いと乗り降りはどう致しますの?」
「どこでもという訳には行きませんね。各領に1ヶ所乗り降りが出来る『駅』を設けるようになります」
「あら?テキサルとエリュードには通りませんの?」
「テキサル~エリュードを往復する『高速バス』を計画してます。これならば、車の免許がなくても皆が楽しむ事ができますが」
「今、エリュードでは前からありました南の隣領との街道も車が通れるように計画中ですわ。南部方面は平地が多いためかなり車が通れるようになっているそうですから完成したら皆で旅行致しませんこと」
「「・・・」」
「な、何か変な事言ったかしら?」
「逆ですわ。リサさん素敵ですわ」
「そうですね。学園に入る前に皆で行きたいですね」
「一周するのに何日必要でしょうか?」
「最低2ヶ月は見た方が良いですわね」
「何でしたらリニアモーターというので一周つなげなれると便利ですわね」
「「・・・」」
「な、何ですの?」
「ラミさん天才ですわ。確かにそれが出来ればアメリア内の経済が一気に変わりますよ」
「お、落ち着きになってエマさん。それこそ多くの領の協力が必要になりますわ」
「王命じゃないかぎり難しいですわね」
「「・・・」」
「だ、だから何ですの?」
「ラミさん、天才ですわ」
「り、リサさん?」
「レオナルド様に頼んで見ませんこと」
「ち、ちょっと待って二人とも。経費が莫大過ぎます」
「そうとも限らないよ」
「「「レオナルド様!?」」」
「どうにか間に合ったようだ。エリュード領経由の方がグレイス領に早く着けるなんて不憫だよね。それと、さっきの件だけど実はグレイス領と王都の間の三つの峠に穴を掘る計画が王都でも出ているんだよ」
「そうだったのですね」
「だから三領には王命を出そうかと思う」
「「「えっ!王命ですか?」」」
「簡単に出せると思うよ。だってエリュード、テキサル、グレイス、この三領は今やアメリア国の経済の中心と言っても過言じゃないからね。王都がおいて行かれる訳には行かないと皆必死になっているよ」
ー レオナルド ー
エマによるグレイス領の発展が尋常ではない。
通常の領地は30%の税金徴収で領内の運営を行う事が出来るようになる。
だが、グレイス領の税金は今や10%程だ。しかも、公共サービスや防衛など様々なサービスも行き届いているため就職先を探していた人達の殆どがグレイス領に集まり人口は軒並み増加している。
特に三領を繋ぐ街道に作られたエリイスとグレサルの発展が尋常ではない。
エリイスは今や最先端の街として移住者が日々増え先日、グレイス領から分領され代官のレレシアは子爵へとしょう爵された。これは一つの領地に経済が集中させると反乱の元となるため反乱抑制の措置でもある。
もう一つのグレサルも発展が凄まじくエリイス同様に分領についての話がされているところだ。
その中心にいるのがエマである。
そのため、三領の中ではエマを皇太子妃にするのではなく領内に居させるべきではという声が出始めている。
由々しき問題だ!
この声を抑えないと!
そのためにもグレイス領と王都の間で抱える問題の解決が必要であった。
その問題が経済効果の分断であった。グレイス領から王都まで1月も掛かるため人の流れが途切れてしまう。
そして、難関だったのが3つの峠であった。王家で穴を掘る事で研究を進めて来ていたがどうやって掘るかが悩みであった。まさか答えがここにあるとは。
この機会を逃すわけにはいかない。
「そこでエマ相談なんだが、先程の集団で早く移動が出来る『リニアモーター』というものについて王家の技術員も含め研究しないか?より危険性を洗い出す事が出来るし安全性確保のための費用や法律、領地確保や補償問題対策など悪い話じゃないと思うけど」
「レオナルド様からのお言葉大変に嬉しく思っております。エマ商会の会長としての立場としては今すぐお願いしたいのですが、グレイス領主の娘でもありますので領主ゼニスにも相談させて下さい」
「その必要はないよ」
「お父様!!」
「先程、レオナルド様と話し合っていて街道整備については王命で王家主導のもとグレイス領も協力する事となった。
なので存分に協力しなさい」
「解りましたお父様。レオ様、先程のお話お受けさせて下さい」
「助かるよエマ。ところでどうやって掘るの?」
「穴は私の収納スキルを使います」
この計画に王家より既に専門家が集められていたため話合いは直ぐにまとまり恐ろしいほど早く進められた。
王命による峠の道も半年程で完成予定。峠の穴もエマのスキルで数ヶ月で開ける事ができ補強作業も即座に完成する計画となっている。
此により王都からグレイスまで車で5日程で通う事が出来るようになる。更に安全性も研究され様々な工夫により『リニアモータ』、いや『魔道モーター』という方が正確かもしれない。魔法の専門化による安全性とスピードの限界を図りながら研究したことによりエマの想像を遥かに越えたものが完成する予定となった。王都とグレイス領を1日で通えるようになる。魔法の世界は恐ろしい。
いや、一番恐ろしいのは王家かもしれない。
エマが無理だと諦めていたものを更に想像を超えるものを完成させ実現させたのだから。
改めて王家の恐ろしさを実感したエマであった。
【エマ・グレイス】
11歳 女性 Lv60
職業 〖男爵〗 適応魔法 闇
体力 400 魔力 325
力 165 守 70 速 85 知 320
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv4 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 拳豪 Lv8
スキル 〖浮遊 Lv15〗〖収納 Lv15〗〖空間移動Lv5〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv2〗
魔法ギルド ゴールドランク
商業ギルド Bランク
冒険者ギルド Cランク
エマ商会 15店舗