18.えっ!ゴブリンキングとクイーン
時間は遡ること、『紅蓮の絆』と別行動でゴブリンの探索をする事になったエマ達。
「それじゃ、探索初めましょうかしら」
エマは皆への掛け声と共に魔道具〔レーダー〕を取り出した。
魔道具〔レーダー〕
ロイのレーダーを基に作成した魔道具。スクリーンに半径5kmを上限として縮小表示され魔物の場所を探知する。ロイのレーダーでは、大地を動く生き物しかとらえる事が出来ず、人間か魔物の区別はつけられない事や動かない魔物や樹にぶら下がる魔物、空を飛ぶ魔物等反応しないケースがあったが、この魔道具はスクリーンを立体的に写し全ての魔物に反応する。
ただ、このスクリーンという技術は将来のために他の者達には内緒にしたいため商品化をしていない。
「結構、周辺に魔物が多くおります。どれがゴブリンか解りませんが」
「どんどん討伐していきましょ。魔物の密度が高いところが巣である可能性があるからレーダーでの探索は継続しておいて」
ゴブリン1体1体は弱い。成人男性でも勝てるくらいだ。だが、団体で攻撃してくるため一般人では対処できない。
エマは周辺の魔物を次々と倒す。エマの収納で行きたい方向の木々を収納するだけで道が出来るためスムーズに進む事が出来た。
「エマ様!スクリーンの端の方に魔物の反応が密集しているところがあります」
「もしかしてら巣かも知れないわね。いきましょ」
反応する方へ向かうと洞窟があり、魔物の反応は洞窟の奥の方であった。
「どうやら、この洞窟が巣みたいですね」
「洞窟・・・」
「どうしたのリナ?」
「紅蓮の絆のリーダーは火の魔物を得意としますが、洞窟内で火を使うと息が出来なくなってしまうため注意した方が良いでしょうか?」
「向こうもCランク冒険者なのだから大丈夫だと思うけどリナの言う通り少し心配だからそれとなく伝えときましょ」
ー 現在 ー
「さぁー洞窟に着いたわ。作戦通りお願いロイ!」
「解りました。」
ロイの土魔法で天井を補強して、大地を針状に盛り上げて串刺しにする。
元に戻して中に入ると串刺しになったゴブリンが倒れている。これを繰り返しながら洞窟内の探索を続けた。
「・・・」
紅蓮の絆の皆さんがやけに静かだ。
「皆さん、どうかしましたか?」
「いや、ゴブリン退治がこんなに簡単だったとは」
「最初は紅蓮のリーダーに炎魔法を洞窟内に放り込んで頂き、ゴブリンを窒息しさせようと思ったのですが、そうなると私達も洞窟内に入れなくなってしまいますし、村の住民は拐われた者がいなくても可能性がゼロではない限りその方法は危険だと思いいつもの討伐方法にしました」
「此がいつもなのか?」
「ダリル少しおかしい。倒れているゴブリンの数が多すぎる」
確かに。
洞窟に入ってから1時間程経つが洞窟はまだまだ奥まで続いている。其なのに倒したゴブリンは既に50匹を越えていた。更に進むと更なる異変が現れた。
「おい、ここで倒れているの『メイジゴブリン』じゃないか?『ゴブリンナイト』『ゴブリンアーチャー』なんかもいるぞ」
巣の奥に進むと上級種のゴブリンが群れで倒れていた。尚、上級種はDランク扱いで紅蓮の絆達の実力があれば余裕で勝てる魔物である。
だが、倒れている数が多すぎる。上級種だけで50匹はいたかもしれない。
「もうすぐ、巣の最奥かと思う」
「「「!!」」」
最奥に着くと『ゴブリンキング』『ゴブリンクイーン』が多くのゴブリンロードと共にいる。
「えっ!ゴブリンキングとクイーン」
尚、ゴブリンロードはCランクの魔物でキングとクイーンは各々がBランクの魔物である。あまりにもゴブリンが多い事からこのクエストはBランククラスだったかもしれない。ギルドが読み間違えたようである。
「最悪だわ。私達では無理よ」
「エマ男爵引く返え・・・」
「えっ!」
ゴブリンキングとクイーンがエマの収納魔法で既に倒れていた。ゴブリンロードも同様でエマの収納魔法で倒され、残っているものもマックとロイにより次々と倒れていき一瞬の間に全てのゴブリンの討伐が終わってしまった。
「皆さん早く魔石集めしないと明るいうちに戻れませんよ」
リナの掛け声により紅蓮の絆達も魔石取りを始めた。
全ての魔石を回収し村に戻った時には夕刻になっていた。
「エマ男爵は?」
「ゼニス様に話があるそうなので戻られました」
グレイスの女神のリーダーが不在なため、ダリルがゴブリンの巣の討伐完了の報告を村長に行った。
そして、村長の頼みでリナはまたカレーを作る事になり皆で手伝っているとエマが戻ってきた。
「皆さん、集まっていて丁度いいわ。父ゼニス・グレイス侯爵からミナカ村の惨状を報告致しまして復興のための書状を預かって参りました。尚、アーベン男爵も関係しておりますのでお連れ致しました。それでは読み上げます」
『この度、ミナカ村の者達はゴブリンの巣が近くに発生したことにより多大なる被害が発生した事を確認した。ついては村の復興のために次の対応を行う。
一、村の住民の納税は三年間免除とする。ただし、現在この村に住んでいる者に限る。
二、村の復興のためプラチナ貨1枚と牛10頭、鶏20匹をグレイス侯爵より寄付する。
三、我が娘が発案したカレーの販売をこの村から行うものとする。
四、街道からこの村への道を車でも往来出来る道をグレイス領主の指揮のもと整えるものとする。
以上、ゼニス・グレイス。代読、エマ・グレイス』
「こ、こりゃたまげたですじゃ」
「プラチナ貨はこの村を統べる代官のアーベン男爵に預けておきます。尚、アーベン男爵にも早期の調査依頼など村の被害を最小限に抑えた功績で金一封と勲章を授与する事になりましたので後日お父様から連絡が届くかと思います」
「あ、ありがとうございます」
ミナカ村での夕食を済ませるとエマ達は紅蓮の絆達と共に浮遊魔法で戻ることにした。
戻った頃には辺りが大分暗くなってしまったのでギルドへの報告は明日行う事にした。
次の日、待ち合わせ場所に皆が集まる。
「エマ男爵は?」
「本日は家庭教師がこられる日で出掛ける事が出来ないからと私達だけで来ました」
「本当にお嬢様だったんだな」
私のいないところで失礼な発言があったようだが誰も気にしていなかったようで、ギルドの受付嬢に任務完了の報告に向かった。
「えっ!ゴブリンキングとクイーン!」
300をも越えるゴブリンの討伐部位の確認を行っているが数が多いため少し時間がかかっている。
「すみません。数が多くて時間がかかってしまいました。それと今回の討伐はギルドが査定を見余っていたようです。誠に申し訳御座いませんでした」
「問題なく倒せたから問題ない」
「殆どエマ男爵達がだがな」
「お待たせ致しました。依頼報酬ですが何もなければ当分分配による口座振り込みとなりますが宜しいでしょうか?」
「ちょっと待ってくれ。今回の依頼は殆どグレイスの女神達によるものだ。我々の取り分は少なくしてくれても構わない」
「いえ、そう言うわけにはいきません。そんなことをエマ様にばれましたら私達が怒られてしまいます。」
ロイの言葉にダリルも従い合同依頼を終えロイ達は領主館戻って行った。
「リーダー、彼らは本当に俺達と同じCランクなのか?」
「彼らは直ぐにSランクまでいくだろう」
「そうね。低く見てもCクラスレベルではないわね」
【エマ・グレイス】
10歳 女性 Lv55
職業 〖男爵〗 適応魔法 闇
体力 380 魔力 300
力 150 守 63 速 76 知 320
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv4 槍 Lv1 斧 Lv1 弓Lv10 鞭 Lv1 拳Lv10 拳豪 Lv7
スキル 〖浮遊 Lv14〗〖収納 Lv14〗〖空間移動Lv5〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
〖エマ商会の会長〗〖遠島の開拓者Lv1〗
魔法ギルド シルバーランク
商業ギルド Cランク
冒険者ギルド Cランク
エマ商会 9店舗