11.えっ!農地改革
「エマさんとのお茶会、天気に恵まれ嬉しいですわ」
「私もグレイス領でお茶会が出来るとは思えませんでした」
今日はリーサオーラ公爵令嬢とお茶会をする事になった。
数日前にグレイス領とエリュード領を結ぶ街道が結ばれ今まで片道だけで一月以上も掛かっていたのが1日程で行き来出来るようになり新しい物流の流れが始まる。
これによりグレイス領への注目が増し更にグレイス領景気が良くなって来ていた。
「ところで、エリュードの者達はどうしているかしら」
王妃主催のお茶会に献上したこともあり、エマの商品は貴族からの受注注文からじわじわと庶民にも噂が広がり順調に売上を伸ばしている。
また、新しい魔道具として〔テント〕〔ライター〕〔コンロ〕〔掃除機〕〔床暖マット〕などを開発。
新商品として『鉛筆』『消しゴム』『算盤』『マニュキュア』『ウィッグ』などを開発。
ここまで新商品を産み出すと人材不足となり悩んでいたところ、リーサオーラさんより「エリュード公爵領の民を人材として融資しても良い」という話を受けていた。早速、エマの浮遊魔法でリーサオーラさんに会いに行ったところ、「見返りとしてエリュード領にもエマさんの商品を販売させて欲しい」と要望を受けたのであった。
エマとしては願ってもない申し出であった。
エマ自信も領外の出店も視野に入れていたためエリュード領で20名程人材が確保出来た事により人材不足も解消する事が出来た。
「教えたことを直ぐに覚えて優秀だとセバスが行っておりました。早ければ来月にはエリュード領でお店を開けるようになるかと思います」
「まぁ~楽しみですわ」
既にグレイス領には『雑貨屋』と『訪問販売店』の2店舗ある。今度エリュード領で新しく店舗を建てると3店舗となり口座残金も十分にあるため、次の査定会ではFランクになる事は間違いない。
商会としての条件である複数領地での店舗と商業ギルドでFランク以上の資格を有するを達する事になり、商会として名乗る事が出来る。
商業ギルドに登録してから数ヶ月で商会に昇格するのは過去に例がない早さであった。
尚、商会の名は『エマ商会』という名に決まった。エマ自信が一生懸命に反対したのだが賛成多数により抗う事が出来なかった。
「そういえば冒険者としても活躍されているようですわね」
「ええ。先日はキラービー退治をしました。それに明日は領地巡りをする予定ですのでギルドでも丁度良い依頼がないか探してみようかと思っています」
「領地を回られますの?」
「はい。今度は農地改革にも力を入れたいと思いまして」
「えっ!農地改革ですの?」
「はい。凄く楽しみですわ」
ー翌日ー
エマは領地巡りをする前にギルドに寄り丁度良さそうな依頼を幾つか請け負い一番近いの村に向かう事にした。
村にはゼニス侯爵の依頼で代官が管理している。代官は大きい町で子爵。通常で男爵の爵位を授かっている。
尚、グレイス領内に子爵がいる街は峠の街だけであった。
エマは代官領事館に向かい代官に地区内の農業の話を聞いたり農業していた農家の話を聞き歩いた。
エマはいつも以上にやる気に溢れていた。
前世では農家補助を行う団体職員として働いていた。
その知識が現状の農業方法や農家が抱える問題に活かせるのではないかと思っていたからである。
ただ、そのプロセスも含めエマ一人では難しかった。
家族に協力して貰わないと難しい。
そのため、領地巡りから戻ったエマは兄エニスに相談するため、農地改革の計画書を作成し兄エニスに見て貰ったところ驚きが隠せないでいた。
資料に目を通しながら私が見て聞いた事やそれに対する改善案などを細かく説明すると兄も興味が湧いたらしく数日に渡り話を煮詰めた結果、改革案が出来上がった。
父ゼニスに改革案を提示し説明を行ったところ、幾つかの訂正や追加事項などの修正を行いグレイス領農地改革マニュアルが完成したのである。
まず、水稲の改革を行う。
育苗方法にて現在では不良種子も一緒には種しているため、収穫量に影響が出ていた。これを『塩水選』によって改善する計画である。
『塩水選』とは、濃度の薄い塩水に種子籾を入れると不良種子が浮くため、浮いた種子籾を取り除く事で水稲苗の質を良くする。
また、今までも種子米専門の農家がいたが塩水選による不良種子の含有率により品質を分け種子単価に差を設ける。その為の『種子検査官』という資格を設ける事とした。
次に育苗期の管理の改革となる。
育苗管理は個々が田んぼの一部を利用して行っていたが、かん水過多により芽が窒息したり、逆にかん水不足により芽が枯れてしまったりしていた。
更に夜温が下がり過ぎて低温障害となったり、逆に保温のためのゴザを剥がし忘れ高温障害になったりもしているとのこと。他にも風害や病虫害も多く発生しているようであった。
ここでエマは事前に開発していた魔道具〔テント〕を活かす事に思い至った。
魔道具〔テント〕とはロイが冒険者の聞き取りを行ってくれた内容を教えて貰い開発した商品である。
一定の範囲に『防虫』『防水』『防風』『暗幕』の効果を着けたものであった。
これを範囲拡大して『防虫』『防菌』『防風』『防水』
『防寒』『防熱』機能を持たせた魔道具〔ハウス〕を開発した。
この魔道具〔ハウス〕を管理するため、『育苗管理者』という資格を設け管理を一括管理する事で水稲苗を安定供給出きるようにした。
次に田植えであるが、この世界の田植えは投げ込み式であったため、苗の密度にバラつきがあり密集しているところは光合成が悪くなり収量に影響していた。そこで、紐をはり列に沿って綺麗に田植えをする方法を導入する事にした。
最後に今まで田に水を張りるとそのまま張りっぱなしにしていたようなので、一度水を切らす栽培方法を導入する事にした。
また、米の収量は税金徴収量と比例しているため農家によって米の乾燥に差が生じており乾燥不十分なものは日保ちが悪くカビにより破棄するお米も発生していた。
この破棄するお米の発生を抑えるため米品質検査官という資格者による魔道具〔乾燥検査器〕にて乾燥具合を確認し、乾燥不十分の農家には再乾燥を義務付ける事にした。
次に農地拡大による新規名産の導入である。
前世ではトマトを担当していたため、トマトの知識には自信があった。そのためトマトを新規作物として導入する事にした。
現在でもアメリア国内でトマトを栽培しているところがあるが、トマトは雨により急激に水を吸収すると裂果してしまい品質・日保ちに影響する。そのためアメリア領内でも降雨の少ない地域で栽培されていた。
また、完全路地栽培で栽培技術も低かったため8月下旬には殆ど収穫出来なくなり約1月程しか収穫出来ないため率先して栽培する農家は少なかった。
だが、今は魔道具〔ハウス〕がある。
まず、グレイス領北部で夏秋用トマトを栽培しグレイス領南部で冬春用トマトを栽培する事でグレイス領内で一年中収穫出来るようにした。
そ
次に『定植』『かん水』『摘果』と言う新しい方法を導入した。
【定植】
従来は畑に直播を行っていた。
それを苗床で育苗を行い、第一花の蕾が咲こうとする頃から完全に咲くまでの間に定植を行う。花が二つ三つ咲いてから定植を行うと『老化苗』となって根の活力が低下して実の品質や樹の成長に影響してくる。
また、定植前の土づくりも重要で軽く土を握ると固まる程度の保水力がベストである。これがボロボロ崩れると保水不足で水が滴ると過水状態でどちらも根に影響してくるかと思われる。このように定植後いかに早く根の動きを良くさせるかが重要である。
そして保水性を保つため『保水シート』を張る事を推進する。この保水シートは『スライム』の体液を薄く伸ばし固めたものでエマが開発したものの1つであった。
【かん水】
土づくりがしっかり出来ているようなら定植時のかん水は必要ないが、早く活着させるために念のためかん水を行う。
五段目開花くらいまで樹の状態を見ながらかん水を行い、それ以降は1日に数度と出来るだけこまめにかん水を行う事を進めた。
【摘果】
トマトは一段一段と房毎に分かれて着果するのだが、着果したら着果した分、全てを実らせていたら樹が後半まで持たない。秋口まで収穫させるためには各段を3~4玉を平均として樹への負担を軽減させる。
人間に例えれば解って貰えるだろう。若いうちに無理をさせ体を壊した状態で生活し続ければ、健康的な老後を過ごせるだろうか?
このようにトマトの栽培マニュアルを完成させた。
また、グレイス領南部では薬草栽培が盛んで薬草の産地として有名であった。エマは夢の中で数年後に起こるであろう病気の特効薬である薬草の栽培も計画書に捩じ込ませていた。
計画書の最後には『農業研究部署』の設立に品種の研究や栽培管理の研究を行う部署の設立を提案した。
また、簿記を導入させ『税金管理士』により農業収支を確認させ、設備投資や育児費など幾つかの税金控除を設ける事により農家の規模拡大を後押しする事にした。
この計画書によりグレイス領の経営は一気に改善される事になった。
【エマ・グレイス】
9歳 女性 Lv18
職業 〖貴族〗 適応魔法 闇
体力 115 魔力 125
力 48 守 28 速 32 知 110
火 Lv0 水 Lv0 風 Lv0 土 Lv0 光 Lv0 闇 Lv0
剣 Lv4 槍 Lv1 斧 Lv1 弓 Lv1 鞭 Lv1 拳Lv10 拳豪 Lv2
スキル 〖浮遊 Lv7〗〖収納 Lv7〗
称号 〖アメージアの祝福〗〖皇太子の婚約者候補〗
魔法ギルド アイアンランク
商業ギルド Gランク
冒険者ギルド Eランク
エマの店 2店舗