プロロ1
もうこの国はダメだな。
出て行こう。
他の未開の惑星で一からやり直しだ。
神様たちはそう思った。
どこから間違ったのだろうか。
間違いと言うのなら古くから間違いがあった。
それは戦乱の世になってから、女と言う生き物が統制されるようになって間違いは始まった。
今日の日本人の頭の悪さの諸悪の根源を辿るならそれは遊郭という制度が出来てしまったせいだろう。
だが語弊がある。
別に遊郭自体が悪いのではない。
家族の借金を自分の娘に押し付けるような父親や、お金を得るために女性を攫って遊郭に売り飛ばすようなクズが現れたことがこの国にとっての最大の不幸である。
特に明治後期から昭和の初めにかけては「からゆきさん」と呼ばれる女たちが外国に売り飛ばされたのである。
男とて女から生まれてくるのにこの仕打ちは一体何なのだろうか。
奈良時代から平安時代にかけての女はとても自由だった。
教養もあった。
だが、この時代から後に、紫式部や清少納言のような女傑を聞くことがあるだろうか。
否である。
何故なら彼女たちの時代より後は女が活躍できない時代が長く続いたからである。
いや、この平成の世の中でも紫式部や清少納言のような女傑は生まれてこないだろう。
何故なら、戦乱の世の後で頭の悪い男たちが女を束縛した後、女たちは自由を忘れた。
そして男たちに飼われることで生き延びたからである。
自由を忘れた女たちは急速に知力が低下した。
知力が低下した女たちは子供を産むがその子供の知力も低下するのである。
その負の連鎖が現世まで続いている。
神々は思った。
まるで無間地獄ではないか、と。
神々は言った。
こんなものは日本ではない、根の国よりも闇が深い暗黒の国である、と。
「誰がこんな国にしたのよ!」
アマテラスは激怒した。
するとアメノウズメが答えた。
「鎌倉武士と豊臣秀吉と明治政府とGHQです」
それを聞いてアマテラスは深いため息をついた。
「もう嫌だわ、こんなクソキモイ国。最近はまだマシになってきたけど、江戸時代が終わってから不細工が増えすぎてんのよ。誰よ、『産めよ殖やせよ』なんて言った馬鹿は?」
「日本帝国政府厚生省予防局優生課です」
「流石、廃仏毀釈をするだけの知能を持ち合わせているお馬鹿さんはえげつないわね」
「その当時、仏界隈から『今の日本がキモすぎるからどうにかしてくれ』とクレームが来たりしてましたね」
「なんで頭の悪い人間って増えることへの弊害って考えられないのかしら?」
「いざとなればリスクを他人に押し付けるからでしょう」
「なるほど、性根が腐ってるのね」
アマテラスはそう言って3回目のため息をついた。
そしてこう言った。
「出てってやるわ、こんなクソキモイ星。アメノウズメ、計画はいつ頃開始されるのかしら?」
「2015年7月1日、それから二人目を同年の7月7日に送る予定です」
「勿論、美男子よね?勇者たるもの美男子ではなくては」
「はい、両方とも現代的な知識と知性の持ち主です。ですが二人目は聊か知識の面で一人目に劣るようで…」
「問題があると?」
「経済学の知識に偏りが観られます」
「具体的には?」
「極端なMMT論者だそうです」
「あぁ、あの日本性善説論の…」
「如何いたしますか?」
「女性関係は?」
「何も問題はありません。むしろ女性に対して距離を置くようなフェミニストのようです」
「いいじゃない。イケメンでフェミニストは貴重よ。多少の知識の偏りには目をつむるわ。思う存分『出荷』してちょうだい」
「かしこまりました」
こうして、『神と人の惑星移住化計画』は進められた。
その先遣人として二人の男が選ばれることになった。
一人が京都出身の元財務相の官僚、西村京介
二人目が広島出身のフリーター、黒淵政孝
何故この二人が選ばれたのか。
それは両者とも自殺志願者だからである。
神は考えた。
今、幸せなものから幸福を奪うようなことはしてはいけない。
行かせるならば、逝こうとするものが妥当であると。
そしてこの二人に移住計画がかかっている。
目指すは異世界。
星の名前はメゼファー。
この物語は計画の運命を託された一人である黒淵政孝の人生を彼と、彼の近くに居る人々の主観で描かれる物語である。
あと、アマテラスが語り部になることもあるのでその時はよろしく!