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どさんこ女子高生ヒマワリの地元ダンジョン大攻略  作者: Leni
第二章 スキル制女子高生と夏のきらめき

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47.夏合宿五日目・ユニークアビリティ

 フロアボスとの大激戦を繰り広げたヒマワリたちは、勝利した勢いのまま、ダンジョン商店へと向かった。

 団体客の登場に、異世界出身の支店長は大喜び。さらにフロアボスを討伐した報酬分の『ダンジョンコイン』のおかげで部員たちの金払いがよかったため、支店長はホクホク顔になっていた。


 そうして買い物を終えたのち、一階直通の転移魔法陣で階層を移動したヒマワリたちは、ベースキャンプへと帰還した。

 すると、すでに三年生と二年生のパーティーは帰還済みであった。


「おー、三木。遅かったな」


「すみません。遅れました」


「時間ギリギリだったなー。三木にしては珍しい」


 と、そんなやり取りを横に、帰宅の準備を始めたヒマワリたち『ブルーフラワーズ』。そこへ、三木から六階到達の報告を聞き終わったダンジョン部部長の美園(みその)が寄ってくる。


「へいへーい、芝谷寺よう」


「なんですか、ぶちょー。過去一ウザいですよ、その声」


「ふへへ、聞いて驚け。十階を攻略したぜー! 先を越された気分はどうだー!」


 と、部長からまさかの言葉が告げられた。

 青熊村ダンジョンの特徴として、五階までの低層と六階以降は、一階層の広さが違う。ヒマワリたちが、夏休み前に六階をじっくりと攻略していた理由も、それも一つの要因だった。

 だが、三年生のパーティーはそれを物ともせずに、四日間で十階まで進んだ。そしてさらに、最奥のボスまで討伐してしまったのだという。階層の最奥で立ちふさがる通常ボスは五階毎に存在するのが、ダンジョンの仕様なのだ。


 そんな部長のパーティーの活躍に対する、ヒマワリの反応はというと。


「おお、それはおめでとうございます!」


 祝福の言葉が部長に向けられた。

 すると、先を越されたことによる、嫉妬の言葉が返ってくるものとばかり思っていた部長は、面白くなさそうにスンとした表情になる。

 そんな部長の表情の変化で、彼女の思惑にようやく気付いたヒマワリ。そこでヒマワリは、部長に反撃をすることにした。


「へいへーい、美園ぶちょーよう」


「ウザっ! なんだよ芝谷寺」


「ふへへ、聞いて驚きなさいな。六階のレイドボスを攻略したぜー!」


「なんだと!?」


 部長はヒマワリと違い、祝福の言葉は返さなかった。

 逆にうらやましそうな目でヒマワリを見て、そして一年のリーダー三木を見た。

 目を向けられた三木は、「ムフー」と鼻息を吐いて部長を挑発する。


「うぎぎ、うらやましい……花祭町ダンジョンでレイドボス戦なんて、めったに参加できないのに……」


「うへへ……。レイド戦の動画撮りましたけど、見ますー?」


 ヒマワリがそう言うと、部長は心底うらやましそうな表情で、声を絞り出すように言った。


「みっ……みるぅー」


 そんなこんなで、夏合宿最後の夜が過ぎ去っていった。


 なお、レイドボス戦の報酬である『ロックマンモスのマンガ肉』は、ベースキャンプで少量が開封された。

 焚き火であぶられたが、その大きさから丸ごと中まで火を通すことが難しく、ケバブのように焼けたところをナイフで削ぎ落として大騒ぎしながら部員全員で食した。と、翌朝になって部長の美園からヒマワリへ、詳細に語られることになる。


 特にこれといってマンガ肉へのこだわりがないヒマワリは、男子高校生のノリで生きているなこやつら、などと思う。一方、マンガ肉に憧れがあったサツキは、本気でうらやましがっていた。




◆◇◆◇◆




 ヒマワリとサツキがマンガ肉試食会の自慢話を聞かされた、朝の青熊村ダンジョン。夏合宿五日目のこの日は、攻略を行なわずにベースキャンプを片付けて、ダンジョンからの退出を行なう予定となっている。

 立つ鳥跡を濁さず、来たときよりも美しく、などとはよく言ったもの。だがしかし、ダンジョン内での宿泊についてはその限りではない。設置物は二十四時間経過でダンジョンに飲まれて消滅するため、ゴミは見苦しく散乱させなければ、放置でよいのだ。


 それでも女子ダンジョン部の部員たちは、真面目に片付けを始める。合宿中、何度も位置を変更したキャンプ道具を解体し、小さくまとめる。

 道具に損傷があっても、ダンジョンを出れば不思議な力で直ってしまう。そのため、部員たちは割と豪快に最後の作業を行なった。


 そうして、退出の準備が完了したところで、夏合宿最後のイベントが始まる。

 それは、村役場の職員である剣崎が立てた企画。村の有志による、『ユニークアビリティ』の披露である。


 本日も、夜間のベースキャンプを見守るためにダンジョンへ詰めていた剣崎。その彼女が、少々疲れを見せながら説明する。


「あまり大勢でやってみせてもひとつひとつの印象が薄れますので、私を含めて三名で『ユニークアビリティ』を披露します。皆さんも、それぞれの『ユニークアビリティ』のすごさを肌で感じて、ぜひともレベル30を目指してみてください」


 そんな剣崎の言葉に、部員一同が拍手をする。

 すると、剣崎は照れながら、「私が一番手です」と言って、『ユニークアビリティ』の準備を始める。


 彼女の『ユニークアビリティ』は、≪オーバーブースト≫。自作のロボットやパワードスーツのエンジン出力を数倍、十数倍に引き上げるというもの。

 それを実現するには、メカが必要だが、本日の剣崎は、ロボットを引き連れていなかった。


「では、まずはロボットを出します。≪携帯工房≫」


 剣崎がそう宣言すると、彼女の背後にある空間がゆらめく。

 そして、じょじょに歪んでいく空間の中から、人型ロボットが出現した。

 それは、昨日ヒマワリたち一年生が倒した『ロックマンモス』に匹敵する体高を持つ、巨大ロボットであった。


 まさかのロボット出現に、整列した部員たちがざわめく。

 そして、ヒソヒソと隣同士で話し合う女子たち。その話題は、剣崎のロボットの威容……ではなく、このサイズを収納しておけるだけの『アビリティ』についてだった。


「『ポーター系スキル』……?」


「だとしたら、容量がヤバい」


「さすがに、何かの制限はあるでしょ」


 そんな女子の反応を耳にした剣崎は、自作のロボットを()められなかったことに少し残念そうな顔をする。だが、今優先すべきはイベントの進行だと思いを振り切り、人型ロボットを遠隔操作でひざまずかせ、内部に乗りこんだ。


 ちなみに、≪携帯工房≫は自作のメカに限った収納系の『アビリティ』である。ドロップアイテムの類は一切収納できないが、自分で造ったメカならば、なんでもしまえる。そして、熟練度に応じて収納量が増えていくため、日々『アビリティ』を使い続けた果てに、このサイズのロボットですらしまえるようになっていた。


『では、発動しますよ。よく見ていてください。≪オーバーブースト≫!』


 ロボットの中から剣崎が『ユニークアビリティ』の発動を宣言すると、ポーズを取った巨大ロボットの胸部装甲が輝き始める。

 さらに、胸部から全身に向けて光のラインが走り、ロボットの全身の装甲表面が黄金色に変わっていく。


『これが≪オーバーブースト≫で超強化された状態のメカです。とは言っても、どう変わったか分かりにくいでしょうから、大技を撃ちますよ』


 そうして、剣崎はロボットにさらなるポーズを取らせる。それは、ボディビルのポージングで言う、『ダブルバイセップス』であった。


『行きます! ネオ・ビクトリー・ビーム!』


 黄金に染まるロボットの光り輝く胸部から、(ブイ)字型の巨大な魔力ビームが、奔流のごとく放出される。

 その魔力ビームは、遠くの草地に命中すると、大爆発を起こした。


 遠くで土煙が上がり、上空まで雲のように砂埃が舞い上がった。


 あまりの威力に、女子ダンジョン部の部員たちは、全員でポカンとした表情を浮かべた。

 その女子たちに向かって、剣崎がロボットの中から告げる。


『これが、『ユニークアビリティ』。レベル30に到達した者だけが使える、『特別』です』




◆◇◆◇◆




『ユニークアビリティ』を披露する二番手は、なんと青熊村の村長であった。

 彼は、どうもどうもと挨拶しながら前に出て、『ユニークアビリティ』の前置きとして話を始めた。


 自分はアイヌ民族の末裔で、語り()を継ぐ者だ。始めに彼はそう語った。


 そんな語り部の村長が伝えている物語の一つに、青熊村の名前の由来となった『晴天とオオクマニソロ・ネワ・ウェンカムイ』という伝説(ユーカラ)がある。


 かつてアイヌの多くは、肉や毛皮をもたらす存在であるヒグマを『山の神の化身(キムンカムイ)』と信じ、ヒグマ狩りを神聖な行為であると解釈した。

 だが、ヒグマは人を襲うこともある。さらに、人の味を知ったヒグマは、何度も人を襲うようになる。

 そういったヒグマを『悪しき神の化身(ウェンカムイ)』とアイヌの人々は呼んだ。


 現在の青熊村がある場所にも、遠い昔からアイヌの人々が集落を作っていた。


 特にこれといった名が付いていなかったアイヌの集落。その集落をあるとき、一頭のヒグマが襲う。

 そのヒグマは、ただのヒグマではなかった。『悪しき神の化身(ウェンカムイ)』と呼ぶにふさわしい、恐るべき化け物。小山と見間違えるほどの大きさであり、集落の者たちはその威容に逃げ惑うしかなかった。


 そんな中、一人、集落を取り戻すためにヒグマへ立ち向かう若者がいた。彼は勇気を出して罠を仕掛け、毒矢を射かけた。

 だが、その程度では、山のごときヒグマは倒せない。

 それでも、若者は諦めず、ヒグマに挑み続けた。


 すると、その様子を見守っていた神が、ヒグマを倒すための宝を若者に授けた。

 その神は、山の神ではなく天候を支配する空の神であった。

 空の神は、空のごとき輝きを宿す宝刀を若者に与え、若者は宝刀を(たずさ)えヒグマと戦った。


 その戦いの結果、集落の近くに存在した山が宝刀の力で消し飛び、ヒグマは倒れ、山の跡地に横たわったヒグマの死骸から無数の花が咲いた。花々が一面に広がる光景は、まるで晴天の空のようであったという。


「神から剣を授かり、化け物を打倒する。アイヌの伝説(ユーカラ)では、王道の流れですね」


 村長が笑ってそう言うと、一部の女子生徒が目を輝かせた。

 伝説に登場する聖剣・魔剣の類が大好物のファンタジー好き女子たちである。ダンジョンシーカーにはこの類の人間は割と多い。剣崎のようなメカ好きは、どちらかというと少数派であった。


「そんな伝説(ユーカラ)を再現する『(アビリティ)』を私は持ちます。『ジョブ』は『トゥスクル』。若い子たちに分かりやすく言うと、『シャーマン』ですかね」


 そう言いながら、村長は一つの『アビリティ』を発動する。

≪化身召喚≫。山の神の化身であるヒグマを呼び出す『アビリティ』である。


 光と共に、呼び出される一頭のヒグマ。

 そのヒグマは、剣崎が先ほど操った巨大ロボットに匹敵する大きさを持っていた。


「魔力で形作ったクマに、神霊の欠片(かけら)を宿らせた『化身』です。今回の役割は、標的。(まと)ですね」


 これだけの大きさを持つ怪物をただの的だと言い切る村長に、生徒たちがどよめく。

 その反応を楽しそうに見ながら、村長は言葉を続ける。


「さて、このサイズのクマを相手するのは、おじさんにはちょっと辛いので、代役を呼びましょう。≪英雄召喚≫」


 再びの『アビリティ』行使。光の中から呼び出されたのは、アイヌ民族特有の文様が刺繍されている衣装を着た、一人の青年だ。


≪英雄召喚≫はアイヌの伝説(ユーカラ)に語られる英雄を逸話に沿った勇姿で、一定時間呼び出す『アビリティ』である。


 口頭でそんな説明を入れた村長は、さらに言う。


 過去の地球には今のような『ジョブレベル』の力なんてなかったし、超常的存在もおそらくは地上に跋扈(ばっこ)していなかっただろう。

 それでも、アイヌの人々は信じた。山の神と、その化身の存在を。


 彼らにとってヒグマは畏敬(いけい)すべき神の化身であり、人を襲うヒグマは悪に堕ちた神の化身だった。

 そして、名もなき集落の英雄は善なる空の神から宝刀を授かり、悪に堕ちた小山のごときヒグマを討ってみせた。少なくとも、過去にこの地で生活していた人々は、それを信じていた。


 青熊村の伝説(ユーカラ)晴天とオオクマニソロ・ネワ・ウェンカムイ』に語られる英雄『山を切り裂く者(ヌプリトイェクル)』。

 仮に実在していなかったとしても、彼は伝説の中で生きており、そしてその伝説を語り継ぐアイヌの末裔が身に付けた『アビリティ』にて顕現(けんげん)するのだ。


「化身と英雄を呼び出す『トゥスクル』の私が習得した『ユニークアビリティ』は、≪伝承顕現(でんしょうけんげん)≫と言います。伝説の宝刀を現実の物として呼び出す、不思議な力です」


 宝刀『空色の剣(ニソロタム)』を喚び出す。ただそれだけの『アビリティ』。

 だが、その宝刀を≪英雄召喚≫で呼び出された青年が手にしたとき……。神の化身を討つ力が、現代に(よみがえ)ることとなる。


「うおー、剣ビームが出た、剣ビーム!」


「エグいわー」


「ヤバヤバ」


 宣言通り、ヒグマは宝刀の的になった。




◆◇◆◇◆




 最後の『ユニークアビリティ』を披露する人物。

 それは、ダンジョンシーカーを引退したはずの、一人の老人であった。

 ヒマワリの剣の師匠、『サムライマスター』であるヒロシだ。


「久しぶりにロッカーの中から引っ張り出したが、錆びていなくてよかった」


 そう言って、ヒロシは腰に吊した鞘から、一本の打刀(うちがたな)を抜いた。


「村長の『ニソロタム』には及ばないが、これも『空色の金属』を鍛えて造られた日本刀だ」


 ヒロシは語る。

 青熊村ダンジョン二十階のボスのドロップアイテム。それは、このダンジョンでしか出現が確認されていない、空色に輝く特殊な魔法金属なのだという。

 それをヒロシは『刀匠』の『ジョブ』を持つ、北海道室蘭(むろらん)市の刀鍛冶に持ち込み、日本刀にしてもらったのだとか。


「俺の『ユニークアビリティ』は、寄って斬る。それだけの技だ」


『サムライマスター』ヒロシ曰く。


 斬撃が飛ぶわけでもないし、光るわけでもない。

 攻撃範囲は刃の届くところまで。

 刃渡りの分しか斬ることができないから、大きなモンスター相手には今一つ決め手に欠ける。


 それでも。

 その一刀は、どんな存在でも切り裂いてしまう。


 そんなヒロシの言葉をまだダンジョンから退出していなかった村長が補足する。


「以前、私とヒロシさん、あと、村の老人がた数人でパーティーを組んで、ダンジョン深層のボス『リトルドラゴン』を倒しました。『リトルドラゴン』は鋼のような鱗を持つ強敵でしてね。やつとの戦いは、ヒロシさんの『ユニークアビリティ』である≪一閃≫で喉笛を切り裂いたことが、全滅の危機から脱する逆転の一手になりました」


 その村長の説明に、ヒロシは恥ずかしそうにして白髪頭を掻く。


「さて、的を用意しなきゃいかんのだが……ここはダンジョンの一階だ。斬るべきモンスターもいないな」


 無計画だったのか、ヒロシが困ったような表情で言った。

 すると、そこで手を挙げる者が一人。女子ダンジョン部の部長の美園だ。


「こちらで用意していいですかー?」


「おう、弁償(べんしょう)はできねえから、それだけは気を付けてくれ」


「大丈夫です。『アビリティ』で用意するので」


 そうして、部長の美園は、己の魔法を使って、的を一つ用意した。


≪マジックブースト≫の『アビリティ』で魔法威力を上げに上げた、≪ストーンブロック≫の魔法。

 ダンジョン一階の草原に、墓石のような四角い石の塊が生まれた。


「硬さは、それこそ鋼並みですよ」


 部長がそう言うと、ヒロシはさらに困ったような表情で応える。


「鋼程度じゃ、『ユニークアビリティ』を使うまでもねえや。ヒマちゃんに教えた≪斬鉄剣≫の『アビリティ』だけで斬れちまう」


「では、ここから、補助の『アビリティ』を多重に掛けます」


 すると、女子ダンジョン部の三年生と二年生が、石の塊に様々な『アビリティ』をかけ始めた。

 そうして完成した的は、魔力の影響なのか、なにやら虹色に輝いていた。


「芝谷寺ー。試し切りしてみ」


 部長に突然話を振られ、ヒマワリは仕方なく剣鉈を手にして前に出る。

 虹色に輝く四角い物体に近づくと、ビシバシ全身に魔力のオーラが飛んでくる感覚をヒマワリは覚えた。


「これ、無理。私、斬れない」


「いいからやれー」


「んもー」


 部長に無茶振りされて、ヒマワリは本当に仕方なく、その場で剣鉈を構えた。

 そして。


「≪斬鉄剣≫! って、硬ァッ!」


≪斬鉄≫の『スキル』がこもったヒマワリの一撃は見事に弾かれ、彼女の持っていた剣鉈がひん曲がった。

 だから言ったのに……とヒマワリは手のしびれを抑えながらスゴスゴと下がっていく。一方、自身が打った剣鉈が折れ曲がったところを見せられた剣崎は、一人、悲しみを覚えた。


「では、お願いします」


 ヒロシにそう言って場を譲った部長が、ヒマワリのいるところまで下がる。


 そして、ヒロシは老齢を思わせない真っ直ぐな姿勢で、怪しく輝く石の前に立った。

 彼は静かに、空色にきらめく日本刀を上段に構える。


 次の瞬間。


 石のブロックは輝きを失いながら、縦に真っ二つとなり……ヒロシは音もなく納刀した。


 静かすぎる一連の動きに、女子たちは驚き声を上げることすらせず、草地に倒れたブロックをジッと見つめた。

 やがて、ポツリと、ヒマワリの隣に立つ部長が言った。


「なあ、芝谷寺。あの人、あの技で『リトルドラゴン』の喉笛を切り裂いたんだよな?」


「うん、そういう話だねぇ」


「刃に触れた物は、なんでも斬れる『ユニークアビリティ』なんだよな?」


「そういう話だねぇ」


「でも、斬ったのは喉笛だけなんだな」


「だねぇ」


「刃先だけ触れたのかな。でも、あの人なら、深くまで切り込んでいそうだよな」


「あー、そうですねぇ」


「首の骨を断ったとか、首をはねたとかじゃなくて、喉笛か……」


「まあ、仮に首を刈っていたとしたら、喉笛を切り裂いたなんて言わずに、トドメを刺したって言いますよね」


「つまり、『リトルドラゴン』って、首がめちゃくちゃ太い?」


「なるほど?」


「あの刃渡りで、喉笛を裂いただけなら、『リトルドラゴン』ってめちゃくちゃデカい? それこそさっきのロボットやヒグマ以上に」


「うわあ、ありそう。写真とか映像とか、残っていないんですよねぇ……」


「『リトルドラゴン』って、何階のモンスター?」


「四十階のボスです」


「深すぎだろ!」


 そこでやっと、ヒロシの『ユニークアビリティ』と、それをもってしても倒せなかった『リトルドラゴン』の非常識ぶりが、女子生徒たちの間に伝わりきる。

 場はざわめきに包まれ、今回の企画を立てた剣崎は、イベントの成功を確信してホッと胸を撫で下ろした。


 なお、隣町にある花祭町ダンジョンの最前線は、専業ダンジョンシーカーのクランが到達した五十階。最奥に待ち受けるボスは、まだ倒せていないのだとか。

 日本の首都圏の最前線は八十階だとか、世界に目を向けると百階に辿り着いたとか、日々ニュースになっている。だが、一地方のダンジョンでは、四十階は相当深い階層とされている。


 そんな深層に『リトルドラゴン』を抱える青熊村ダンジョンを舞台にした、夏合宿。

 全日程はここに終わり、大きな事件もなく成功を収めた。


 学生サイドの部長も、村サイドの村長も、この結果には大満足である。

 二人は最後に村役場で握手をして、来年以降も女子ダンジョン部による夏合宿を行なう口約束を交わすのであった。


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― 新着の感想 ―
剣崎さんの職人魂に火がついたり……
リトルがついてそのサイズ。ノーマルなドラゴンは原発を襲う怪獣なみにでかいんですかね…。
青熊村ダンジョン、こんな過疎ってるのにそんな特殊な金属とか出たりするんだなあ やはりもっと知名度を上げねば……!
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