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どさんこ女子高生ヒマワリの地元ダンジョン大攻略  作者: Leni
第二章 スキル制女子高生と夏のきらめき

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45.夏合宿四日目・ボス戦

 ダンジョン一階でのキャンプ生活も三泊目を終え、夏合宿は四日目に突入した。

 そろそろ部員たちに疲れも見え始める頃か。ヒマワリはそう思っていたのだが、そんなことは全くなかった。

 むしろ、日を追うごとに女子生徒たちのテンションは上がっていく。日々、疲れを見せるのは、顧問の教師や職員の剣崎といった大人組だけであった。


 ちなみに、『ブルーフラワーズ』の二人と一頭と一匹は、毎日帰宅しているので疲れは一切ない。


 そうして、今日も一年生チームは、青熊村ダンジョンの植物ルートに挑む。

 予定では、五階まで攻略を進めて、午後に最奥のボスを攻略することになっている。一年の部員は昨日の『トレジャーハント』の効果で、いずれもレベル5を超えている。レベル5は、切り札である『アビリティ』を新しく習得するレベルだ。

 戦闘参加メンバーも八名と十分居るため、勝算はあった。


「先輩たちは、二年生パーティーも三年生パーティーも、五階を突破したそう」


 植物ルートを進行しながら、リーダーの三木(みき)が、ヒマワリにそう話しかけた。

 ヒマワリは参加していないが、女子ダンジョン部の面々は毎日、朝と夜にミーティングを行なっている。そこで、それぞれの一日の予定の発表と、一日の成果の報告をしているそうだ。


「一年以上シーカーをやっているなら、五階のボスは突破できて当然だね」


 三年生は『ラージストーンゴーレム』。二年生は『バッファローマン』にそれぞれ挑んだはずである。

 どちらもなかなかの癖があるボスだ。しかし、メンバーが全員レベル10を超えているであろう両パーティーが敗北する光景は、ヒマワリには想像ができなかった。


 それに続けとばかりに、各々が気合いを入れて植物ルートを進む一年生。

 四階の道なき道も、昨日に嫌というほど経験したため、慣れたもの。森歩きはキツいと言うが、虫が一切いないというだけで若い少女たちに与える精神的負担は、かなり軽減されていた。


 やがて、一同は五階に辿り着く。ここからは、平坦な道が続く楽な環境へと変わる。

 しかし、間違って道をそれて霧に飲まれれば、一巻の終わり。迷いの森で惑ったメンバーは、本日のボス戦参加は絶望的となるだろう。


 そのため、リーダーの三木は、メンバーが道から逸れないよう、何度も進行中に注意を飛ばす羽目になった。

 だが、その苦労の甲斐(かい)あって、道の両脇に潜む『トレント』との戦いもすんなりといった。


「『トレント』、弱くね?」


「分かるー。顔潰せばいいだけとか、雑魚(ざっこ)


「不意打ちも先頭に必ずするから、隊列を考えれば後衛が狙われないし」


 と、彼女たちが話すとおり、注意さえ払えば五階の攻略はなんら難しいものではなかった。


 そうするうちに、一同は最奥の広場に到着する。この階のモンスターは、ボスを除いて移動できない『トレント』のみなので、セーフティーエリアにいかなくとも、広場に留まれば安全である。

 ゆえに三木は、ボス戦の前に昼食を取って、最後の休養と栄養補給を済ませることにした。


「朝と夜のご飯は楽しみなのに、昼ご飯はわびしいのう」


 ブロック栄養食とゼリー飲料を口にしながら、女子生徒の一人が言う。


「分かるー。料理人系の『ジョブ』持ち、ダンジョン部に入ってくれないかなぁ」


「食べると基礎能力が上がる『バフ料理』とか、ボス戦前に食べたい」


「それなー。大手のクランでは一人はいるらしいな、料理人」


 ワイワイと騒ぎながら、簡素な昼食を済ます一同。

 ちなみに、ヒマワリたちも部員たちと同じ食事を取っている。彼女たちは家から通っているため、弁当を持参することも可能だ。しかし、この場でそのようなものを食べても、場の空気を乱すだけだとヒマワリは思っている。そのため、彼女とサツキは、部員たちと同じブロック栄養食で昼を済ました。


 それから食休みを少々取り、装備の点検をしたところで、ようやくボス戦に向けた準備が完了する。

 今回のボスも、ヒマワリたち『ブルーフラワーズ』は『フラワーガーデン』とのパーティーを維持しておくが、ギリギリまで手を出さない方針である。


 一年生たちの成功体験のため、そして村のダンジョンで良い思い出を作ってもらうため、ヒマワリは少女たちの勝利を祈った。




◆◇◆◇◆




「いやー、激戦だったね」


 植物ルート五階ボス『キラープラント』との戦いは、『フラワーガーデン』の勝利に終わった。

 それも、死亡者もギブアップ宣言者も出すことのない、完全勝利だ。

 そんな彼女たちをヒマワリはねぎらい、ドロップアイテムの種を手に持つ三木を祝福した。


「事前の話通り、数での対処が有効なボスだった。八人居たのが勝利の要因」


 ボス戦で、指揮を執りながら花のつぼみを巨大ハサミで剪定(せんてい)し続けた三木。今回のボス戦でのMVPを選ぶならば、間違いなく彼女が該当すると、ヒマワリは思った。


「確かに、数での勝利って感じの戦いだったね。でも、その数を手足のように操ったのは、三木さんだよ?」


 ヒマワリがそう言うと、三木は「照れる」と言って、素直に称賛を受け取った。

 そうして、女子ダンジョン部一年生一同は、興奮冷めやらぬまま、初めてとなる六階への進出を果たす。


 この先に、噂のダンジョン商会が待っている。

 道中で幾度か手に入れた『ダンジョンコイン』の使い道に、ワクワクを隠しきれない少女たちは、六階の平原へと姿を現した。


「おー、ここが六階! 『石柱の平原』!」


 部員の一人が、感極まった様子でそんなことを言った。

 転移した先。そこには、ダンジョン商会の建物と、公衆トイレ。そして、遠くまで広がる草原と、その遠くの向こうにモンスターの影が見えていた。


「うおー」


「すごい! お店がある!」


「先にお手洗い行ってきていい?」


「モンスターでかくね?」


「ヤバい、あれが『ダンジョンゾウ』?」


 遠目に見えるモンスター。それは、ゾウのフォルムをしていた。

 高価なドロップアイテムである象牙を落とす、六階における狙い目のモンスター『ダンジョンゾウ』……ではない。


「うわぁ! あれ、フロアボス!」


 遠くに見えるゾウ型モンスターを見て、ヒマワリがそんなことを叫んだ。

 その言葉に、女子ダンジョン部の面々がギョッとした顔をする。


 フロアボス。これは、これまで進行してきた、五階までの低階層には存在しない特殊なモンスターだ。

 六階以降、一階層に一体ずつ存在する、徘徊型の強力なモンスターである。別名をレイドボスとも言う。


 レイドとは、オンラインゲームの用語で、大人数をもって挑むコンテンツのことを言う。その中でもレイドボスは、大人数で戦うことを前提に設計されたボスモンスターである。


 ダンジョンシーカーたちから、そのレイドボスの通称を付けて呼ばれるフロアボス。現実のダンジョンにおいても、大人数で挑むことを想定された強さと巨大さをあわせ持っていた。


 そして、その討伐報酬も、大人数で挑むことを前提にした設定がされている。

 まず、複数のパーティーを組んで戦っても、得られる『経験値』が減衰しない。

 そのうえ、ドロップアイテムは一体で一つだけではなく、討伐に参加したメンバーが一人ひとつずつもらえる。


 そのような報酬が設定されているため、まさにダンジョンシーカーにとっては、最上の獲物である。ただし、倒せるならばと注釈が付く。


 幸いにも、フロアボスは全て『ノンアクティブ』であるため、人間側から手を出さなければ、その巨体と剛力に蹂躙されることはない。

 ヒマワリたち『ブルーフラワーズ』も、六階の攻略中にフロアボスを見かけて、近くで観察した経験がある。しかし、四名という少ない人数のパーティーで挑むには、無謀が過ぎると判断したため、手は出してない。

 討伐に参加する人数が少ないならば、『レベル』を十分に上げてから挑む必要がある難敵なのだ。


 では、参加人数が多いならば……?


 ヒマワリは、あらためて、自分たちの数を再確認した。


「十二人……サツキちゃんとホタルはレベル10を超えた……いけるか?」


「えっ」


 ヒマワリのつぶやきを耳にした三木が、驚きの声を上げる。

 そして、ヒマワリはニヤリと笑って、声を張り上げた。


「フロアボスに挑みたい人、手を上げてー!」


 すると、少女たちの反応は。


「はい! はいはいはい!」


「やらいでか!」


「六階入口なら、全滅しても荷物簡単に取りに戻れるよね」


「ヤバー。五階ボスで喜んでいたら、フロアボスとかヤバー。勝ったらヒーローじゃん」


「おトイレ先にいいですか?」


 そうして、十人の少女たちと、一頭の犬と一匹の猫は、フロアボスへ挑むことになった。


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― 新着の感想 ―
お誂え向きのフロアボス!やるっきゃない!
 ブルーフラワーズ! やるんだな!? 今……! ここで!
ちょうどいい所に目標以上のデカブツがいるとは これは挑まずにはいられない!!! あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。
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