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どさんこ女子高生ヒマワリの地元ダンジョン大攻略  作者: Leni
第二章 スキル制女子高生と夏のきらめき

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28.異世界の存在

 ダンジョン商店。その名の通り、ダンジョン内部で商売を行なっている店だ。

 ダンジョンに訪れるダンジョンシーカーたちを支援するために、ダンジョンの神が外部の企業と契約して出店させている。

 ダンジョン入場資格試験でダンジョン商店の詳細が設問として登場するため、当然ヒマワリもこの店舗の存在は知っていた。


 地球にあるダンジョンの六階以降に出店しているこのダンジョン商店は、どの店舗も『雑貨屋ヘグサット』という看板を掲げている。

 その『雑貨屋ヘグサット』の経営母体だが、なんと、地球にある企業ではない。この地球とは別の世界、いわゆる異世界の企業とされている。商店の店員も、地球のホモ・サピエンスとは別種の人型種族である。

 その異世界人である店員に、異世界出身かどうかを尋ねても「その通りだ」と返ってくるという。そのため、ダンジョンシーカーの大半が、地球ではない異なる世界の存在を信じていた。


「さて、入店したいところだけど、リヤカーはどうしようか」


 ヒマワリがそう言って周囲を見回すと、不意に店の扉が開いて、中から人が一人飛びだしてきた。

 頭にウサギのような耳を生やして、エプロンと独特の制服を着込んだ少女。話に聞く異世界人かと、ヒマワリが目を見開く間にも、少女が駆け寄ってきて叫ぶ。


「うおおおお、二週間ぶりのお客様! いらっしゃいませ!」


 そんな少女の勢いに、思わず引き気味になったヒマワリが、困惑を交えた声で答える。


「お、おう。店員さんかな?」


「そうです! ヘグサット商事の地球支部、『雑貨屋ヘグサット 青熊村ダンジョン支店』の支店長を務めさせていただいています!」


「そっかー。えーと、入店したいんだけど、リヤカーが邪魔でね」


「店の裏手に駐車場がありますので、そこに駐めていただければ! ゴーレムが監視していますので、盗難の心配もありません!」


「駐車場……えっ、ダンジョン内なのに?」


「はい。まあ、駐車場と呼んでいるだけで、実質は荷物置き場ですね!」


 そんな勢いのよい自称支店長に案内されて、ヒマワリたちは店の裏手に移動した。

 そして、体高四メートルある、黒光りするゴーレムが見守る駐車場に、道中で取得した金属類が入ったリヤカーを置く。


「うーん、あのゴーレムの存在感よ」


 ヒマワリが、巨大なゴーレムを見上げながら言う。明らかに、五階のボスであった『ラージストーンゴーレム』より強そうだ。


「なんだか、アニメのロボットみたい」


 サツキがそんな感想を述べてくるが、ヒマワリはロボットアニメをまともに見たことがないので、適当にうなずきだけを返した。

 すると、支店長が目を輝かせて横から言い放つ。


「なかなかお目が高い。あのゴーレムは、弊社の兵器開発部門が数ヶ月前にロールアウトした最新モデルでして。なんと、ダンジョン五十階相当のモンスターとも戦える最新兵器ですよ!」


「五十階!? 青熊村ダンジョンの最終階層より深いじゃん!」


「そうですそうです。つまり、この駐車場でおいたをする人が出ても、このゴーレムに任せれば、荷物は安心安全ってことですよ!」


 やたらと嬉しそうに言う支店長。

 そんな支店長に、サツキが尋ねる。


「ちなみにおいくらですか?」


「あー……申し訳ない。地球人には、非売品扱いなんですよ。このゴーレムは、人を傷付けることができる兵器なので。ほら、地球人の『ジョブレベル』の設定って、生物に対する殺傷能力がオフになっているでしょう? だから殺傷能力がオンの兵器は受け渡しNGってダンジョン神様から通達されているんですよ」


 そんな支店長の言葉に、ヒマワリも一つの事実を思い出す。

 地球人が『ジョブ』と『アビリティ』の力で生み出したゴーレムは、地球上の生物を傷付ける能力を持たないと。


 銀行等に設置されている『ガードゴーレム』も、暴漢から身をていして客を守る用途と、人を傷付けられないが接触自体は可能なため暴漢を取り押さえる用途に使われるだけだ。

 巷に広まった『ゴーレム車』も、車全体がゴーレムとなっているので交通事故を起こしても、どういうわけか轢かれた相手は傷つかないのだ。

 これら地球人が作りだしたゴーレムは、生物ではないとされているダンジョンのモンスターとしか戦えないのだ。


 ヒマワリは「なるほど」と思った。このゴーレムが人を傷付けられるというならば、確かにこのゴーレムを所持するヘグサット商事なる企業は、異世界の存在でもおかしくないと。

 そもそも地球には、この支店長のようにウサギの耳を頭のてっぺんから生やした人型種族は存在しないのだが。


「さすがは、『ダンジョンの神様』が経営している、ダンジョン商店ってことだね」


 ヒマワリがそう言うと、支店長は苦笑しながら言葉を返してくる。


「それ、よく勘違いされるんですが違いますよー。ダンジョン神様はダンジョン商店の経営者ではありません。神様は、あくまで弊社に業務委託しているだけなんです」


 業務委託。まさかの言葉にヒマワリは困惑した。

 すると、その反応に支店長は表情を苦笑から微笑に変えて、続けていった。


「ヘグサット商事の社員は、ダンジョン神様の部下や眷族ではないんです。私たちの種族が崇めている神様も、ダンジョン神様ではありませんし」


「そうだったんだ! ミヨキチさん、知ってた?」


「知ってたにゃ。ちなみに『雑貨屋ヘグサット』の本店がある世界の担当神は、『スキルポイントの神様』にゃ」


 足もとにいた猫のミヨキチにヒマワリが尋ねると、すぐさまそんな答えが返ってきた。

 さすが職業『ワイズマン』、詳しい。と、ヒマワリは感心した。


「『スキルポイントの神様』……知らない神様だね。『スキルレベルの神様』の親戚かな?」


『スキルレベルの神様』とは、ヒマワリに『ジョブ制システム』ではない『スキル制システム』の力を与えた超常的存在のことである。

 そんなヒマワリの疑問に、支店長がにっこりと笑いながら答える。


「スキルポイント神様の恩恵は、日常のあらゆる行動が評価されて『ポイント』が交付され、その『ポイント』を消費して新たな『スキル』を取得していくという仕組みですねー」


「はー、それもまた面白そうなシステムだね」


「はい! ちなみにダンジョンでの商業活動は、ダンジョン神様への奉仕と、異世界人に対する貢献という項目で評価値が高いので、『スキルポイント』がウハウハなんですよー。ヘグサット商事の異世界支部勤めは、私どもの世界でも人気の職ですね!」


「へー、そりゃ私も、いっぱい商品買っていかないとだね」


「お願いします! この支店、なかなかお客様が来ないんですよ! 十年前からある老舗ダンジョンのはずなのに、暇で暇で……」


「あー、うん、大丈夫だよ。私、最近、青熊村の村おこしを始めたから。上手くいけば、ダンジョンに訪れる人が増えるはずだよ」


「本当にお願いしますね!」


 支店長とヒマワリはそんな会話を交わしながら駐車場を後にし、一同で表に回る。そして、支店長が率先してダンジョン商店に入店した。入口はオシャレなガラスの自動ドアである。

 ドアが開くと共に、ドアベルの自然で軽快な音が鳴り、店舗内に来客を知らせる。


 店の中はずらりと棚が並んでおり、豊富な品揃えがヒマワリに期待を持たせた。


「では、あらためまして、いらっしゃいませ! ダンジョン商店へようこそ!」


 さっと支店長が日本風の礼をして、皆を出迎えた。


「ご自由に見て回ってください。あ、店員はこの時間、私一人なので、何かあるときは私にお尋ねください」


「支店長さん、ワンオペなんだ」


「来客数が少ないので、初期の人員は日本にある他の支店に回されちゃいましたねー。それで若手の私が支店長なんかに就任して……人員増のためにも、いっぱい通っていっぱい買っていってください」


「あはは。私たち、そんなにダンジョンコイン持っていないけどね」


「まあ、到達階層が六階ですとそうですよね……」


「……分かるんだ?」


「はい。店に入った時点で、情報が視界内に映る仕組みになっています。商品も、その方々の青熊村ダンジョンでの到達階層によって、ラインナップが変わるんですよ」


「良い商品を買いたければ、深く潜れってことだねぇ。うん、事前の情報どおりだね」


 この到達階層と品揃えの関係も、ダンジョン入場資格試験の設問として出てくる情報だ。

 そうしてヒマワリは支店長との会話を終えると、初めて訪れるダンジョン商店の品揃えを確認しに店の中をうろつき始めた。


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― 新着の感想 ―
正確には地球に《ジョブレベル》を与えた神と、ヒマワリに《スキルレベル》を与えた神は別神で、雑貨店本社がある世界の担当神がヒマワリにスキルを与えた神ということ。 で、いいんだよね? 支店長に聞けば、現在…
> 初期の人員は日本にある他の支店に回されちゃいましたねー 世知辛いのじゃぁ~
異世界支部勤め、人気の職でもこんだけ暇だとどうなんだろうかw 地球の人も逆に異世界に勤める日がいつかは来るのかなあ
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