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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
エピローグ

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エピローグ2 アングル王国


 さくらを封じ、皆斗に別れを告げ、俺は全世界の管理者として……調和をつかさどる唯一神となった。

 アングル王国も、魔族も、そして他の世界も小さな変化はいくつもあった。人が生き、物を食べ、物を作り、物を壊す。一つ一つの行動が小さな波となり、やがて津波のように巨大な流れとなり、世界は緩やかに変わっていった。しかしそれはごく自然な流れであり、俺がわざわざ干渉して止めるようなことでもなかった。


 月日は流れ。

 そして――


「「「おめでとうございますっ!」」」


 多くの人々に祝福されながら、俺は城の前を歩いていた。

 隣にはリディア王女がウエディングドレスを着て並んでいる。

 

 そう、これは結婚式だ。


 俺とリディア王女、二人の結婚式。国を挙げての祝い事に、多くの貴族、兵士、そして平民たちが祝福の言葉を伝えてくれる。

 城の前での結婚式は、国民全員に見守られる一種の儀式だ。この世界の創造主とはいえここまでの視線を向けられては……かなり緊張してしまう。


「お兄ちゃんおめでとうっ! これで本当にお兄ちゃんだねっ!」


 そう言って、ロリタ王女が抱き着いてきた。


「ロリタやめなさいっ! ドレスが傷つくでしょう?」

「すりすり~ お兄ちゃん大好き~」

「もうっっ! 止めなさいっ!」


 こんなに人が見てるのに、ロリタ王女は変わらないな。

 リディア王女はロリタ王女を引き離し、遠くで説教のようなことをし始めた。

 おいおい、これ式の最中なんだぞ? いいのか? いや、少し緊張がほぐれて俺は嬉しいんだけどな。


「招待感謝するぜ」


 突然、後ろから男の声が聞こえた。

 振り返ると、そこには皆斗が立っていた。


「たまにはこういうファンタジー世界もいいな」


 そう。

 式を挙げるということで、俺は皆斗をこの世界に招待したのだった。


「これ、返しておくぜ」


 皆斗は俺に端末を差し出した。


「用事があるって話だったよな? もういいのか?」

「ああ、俺もこの世界にいたことのある異世界人だ。この式に招待したい知り合いがいてな。端末を使ってここに連れてきてやっただけだ。おい、お前もこっちこいよ」


 どうやら、その人は柱の陰に隠れていたらしい。

 そっと、その姿を現す皆斗の知り合い。


「お前は……」


 そいつは、俺にとっても知り合いだった。

 

 元魔界三将、ライオネル。


 今は国を持たない魔族たちを率いるリーダーとして、イギリスを模した北の島で隠れて暮らしている。アングル王国の兵士とはしばしば小競り合いが続いているらしい。

 一応兵士たちの間で顔を知っているものもいるはずだが、騒ぎたてる様子もない。皆斗が端末で何か細工をしたんだろうな。


「勘違いしないでくれ。敵国の一大事に敵情視察をするのは当然のことだ。決してお前の結婚を祝福しにきたわけじゃない」


 そう言って、目をそらすライオネル。


「だけど、お前のように理解のある人間が王族に加わるのは良いことだ。あれ以来、魔族が理不尽に殺されたりすることはなくなったからね。敵とはいえ、わざわざ暴言を吐くつもりはない。むしろ適当に社交辞令を伝えておくのが外交というものだ。おめでとうございます、という言葉を贈ろう」

「よしてくれよ。心のこもってない言葉なんていらないさ」


 とはいえ、ことさら反対するようなことでもないらしい。

 正直なところ、俺は久々に会えて嬉しく思った。さくらを封じることができたのは、間違いなくライオネルと共闘したおかげなのだ。

 俺にとって、あの一瞬……こいつは仲間だったのだ。


「ま、まあ久しぶりに会えて嬉しかったよライオネル。その様子なら正体がばれることもないだろ? 今日は祭りなんだから、楽しんでいくといい」

「ふん」


 そう言って、ライオネルは立ち去っていった。

 皆斗もそのあとに続いていく。


「大和様っ!」

 

 ロリタ王女を説教していたリディア王女が戻ってきた。


「もういいのか?」

「はい、もう時間が押していますので」

「ああ……」


 城の前で待つ国王陛下に、祝福の言葉をいただく。

 こうしてこの結婚式という名の壮大な国家儀式は終了するらしい。


 気を引き締めた俺は、改めてリディア王女と並び城の前へと歩いていく。

 盛大に祝われて頭がおかしくなるから、適当に関係のないことを考えることにした。


 そう、この次の世界に封印した――さくらのことだ。


 時々さくらの様子を見てるが、おとなしくしている様子だった。

 俺のいなくなったあのマンションで普通に暮らし、自分が作ったモブキャラたちと適当な会話をして、俺が作りかけたゲームのプレイしたり、料理をしたり掃除をしたり、そんなどこにでもいる一人暮らしの生活だ。

 俺はさくらを救ったりしないがかといっていじめたりする気もない。あいつがあの世界でそれなりの生き方を見つけたというなら、監視だけ継続してそのまま放置だ。

 

 と、余計なことを考えるのはやめて現実に戻ろう。

 荘厳な衣装と王冠を身に着けた、リディア王女の父――すなわちアングル王国国王。

 両隣に司祭のような二人の聖職者を引き連れ、俺の前に立った。


「皆、よく聞くのだっ! すでに知っているものもいるかもしれぬが、この方こそこの世界を生み出した創世の神。伊勢大和殿である。彼は今日、我が娘リディアと結婚し、家族となる。すなわちこのたび、我ら王族は神の一族となるっ!」


「うおおおおおおおおおおっ!」

「陛下っ! 国王陛下万歳っ!」


 お……おう。間違ってはいないのだが、もう少し控えめに言ってはくれないか? 魔族との敵意をあおらないようにと注意はしておいたんだが……、だからとって俺を持ち上げていいとは言っていない。


「おお……神よ。美しくそして逞しく聡明。主の御言葉こそ絶対の正義。平和と幸福をもたらす、世界の神。我が祖国に永遠の祝福――」


 讃美歌なんだが伝統の言葉なんだか知らないが、国王陛下が歌うようにそんなことを言い始めた。俺のこと……じゃないよな? この場にいない本当の神について言ってるんだよな? 頼むから俺でないといってくれ。

 

 しばらくして、国王陛下は歌を終えた。


「世界に愛されし二人の結婚に祝福をっ!」


 陛下が両手を上げると、盛大な拍手が巻き起こった。

 ああ……これでやっと儀式は終わりか。

 あとは知り合いだけで簡単なパーティーを……。


「ではっ、誓いのキスをっ!」


 は?

 何、誓いのキスって?

 そんな話聞いてないぞっ!


「や、大和様」

 

 どうやらリディア王女もこのことを知らなかったらしい。完全に陛下のアドリブなようだ。

 狙ってたな、陛下。

 しかもこれだけの観衆だ、逃げられるはずもなく……。


 ……覚悟を、決めるしかない。


 俺はリディア王女を腕を優しくつかんだ。

 そして、リディア王女は目を瞑った。 


 俺たちは口づけをした。


 拍手喝采。

 今、一つの物語が終わり……そして始まった。さくらに翻弄され、ゲームを作り世界を混乱に陥れた俺の戦いは終わり、誰も自由に自然に生きる新しい世界が……始まった。

  

 俺たちは生きている。

 この〈異世界ツクール〉によって生み出された世界で。


これにて完結です。

今までありがとうございました。

次の小説も執筆中です。


異世界で俺がエルフに転生・転移・そして……

https://ncode.syosetu.com/n0696ih/


よろしければご覧ください。

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