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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
ツクール編

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 事情を理解した俺たち二人は、そのまま裕也を奇襲することにした。

 手順はこの前と同じだ。

 マンションの屋上からベランダに侵入し、裕也を襲う。

 以前は限られた状況の中で、奇跡に賭けた戦いだった。だが今度は端末がこちらにあるため、多少有利に事を運べるはずだ。


 ずっと動画を見ていたが、裕也は俺のことなど全然眼中にないようだった。ただたださくらに話しかけ、気持ち悪いほどにすり寄っているだけ。

 完全に油断している。こいつ、もう自分が神にでもなったつもりなんじゃないだろうか。


 このまま突っ込んでいっても勝てそうな気がするものの……少し慎重にいきたい。

 端末操作による攻撃や拘束は厳しい。皆斗みたいに抵抗されたり、さくらみたいに無効化設定されているかもしれない。

 ここは俺自身が突撃して物理的に制圧するのがベストだ。

 裕也は自分自身を防御する設定を施しているかもしれない。しかし俺自身の強化することに対しては何ら問題はないのだ。


 力、素早さ、防御、簡単な武器、バリアのような抵抗。思いつく限り様々な強化設定を、俺と……そしてリディア王女の付加しておく。 

 こうして、準備は完了した。


 俺自身を強化して、裕也たちを物理的に制圧する。

 そして――


 その時は訪れた。


「動くなっ!」 

「お……前はっ!」


 奇襲はあっけなく成功した。

 俺の顔を見た裕也が、驚愕の表情を浮かべている。まるで死人を見たかのような驚きぶりだ。

 即座に裕也が掴んでいた端末を叩き落す。こいつが左手で端末を握りしめていたのは、動画で確認済みだ。

 床に落ちた端末は、続けて部屋の中に入ってきたリディア王女が掴み取る。


「リディア王女、少し離れててくれ」


 逆襲され端末を奪われてはやっかいだ。リディア王女には少し距離を取ってもらった方がいいだろう。

 俺が裕也を拘束している間、リディア王女には端末の凍結を頼んでいる。すぐに使われないように氷漬けにしておこうという提案だ。

 

 この間、俺は裕也の拘束に力を入れていればいい。

 もっとも、身体強化した俺の力に……裕也が敵うはずもないのだが。


「こんなにうまくいくとは思ってなかったよ裕也。お前さ……こんな大胆なことをしでかしたわりに……油断しすぎだろ」

「お前は……なんで生きているっ!」

「は? 生きてるって……どういう意味だ?」

「お前は僕が端末で消去したはずだっ! あの皆斗と一緒に……なのに……どうしてここに? まさか……生き返らせた?」


 そう言って、さくらを見る裕也。どうやらこいつの中では、俺がもう死んでいないとおかしいらしい。

 つまり、俺は本当なら皆斗と一緒に消えていた……ってことだ。

 さくらを含め、自身に対抗できる勢力をすべて処理したつもりでいた。だからここまで油断していたのか……。

 

 それにしても……。

さくらが生き返らせた? というよりも、俺は初めから死んですらいないと思うのだが……。


「お前……そんなことまでしてたのかよ」


 俺は、その言葉に少しショックを受けていた。

 確かに、リディア王女はともかくとして俺は裕也にとって危険人物だ。皆斗と一緒に削除しようとしたとしてもおかしくない。

 だけど、そこまでするか? 俺は魔族とは違う、人間なんだぞ?

 

 改めて、この裕也という人間に嫌悪感を抱いた。


「とにかく、もう終わりだ。大人しくしろ」

「うう……うううう……」


 悔しそうに歯軋りする裕也。唇が切れ、顎に血が伝っている。


「あなた……あなた様はそんなにもこの男が好きなのかっ! 特別扱いするのかっ!」


 敗北を悟った裕也の怒りは、俺よりもさくらに向いているようだった。

 俺は生き返った記憶はないし、同時に消えた皆斗を看取ったわけだから、消えてはいないんだと思う。おそらく、端末で俺が消されないよう……初めからさくらが細工していたんだろうな。

 確かに、彼女が手を貸していなければ俺は裕也に消されて……すべては終わっていただろう。


「いい加減目を覚ましてくださいっ! あなたの兄は死んだんだっ! いつまで夢を見ているっ! 現実を……今、この場にいる僕という現実を直視してください」

「いい加減にするのはお前だ裕也。俺はさくらの兄じゃない。お前がさくらに嫌われているのは、他人である俺のせいじゃなくて、お前自身の醜く歪んだ行動が原因だ」

「黙れこの無能がっ! お前は何も分かってないっ!」

「お前の恋愛事情なんて知りたくもない。分かってなくて当然だ」

「そうじゃないっ! 意味を理解しろこの無能!」

「……?」


 何の話だ?


「お前はこの方の兄を模倣した存在なんだっ! お前が空想の人物じゃないっ! かつて現実に存在し、交通事故で死んだ伊瀬大和という人物の再現なんだっ!」


 どういうことだ?

 俺とさくらが兄妹というのは、ゲームを作る上での設定じゃなかったのか? 交通事故で死んだのは、俺じゃなくてさくらの方で……。


 いや、でも裕也の言う通りなら、さくらが俺にこだわる理由も納得できる。身内なら、死なないように設定していてもおかしくない。

 そもそも、なんでわざわざ毎回中途半端に記憶を消すんだ? 気に入らないなら俺という存在を消して、新しい人間と用意すればいいだけなのに。


 伊瀬大和はさくらの兄だった?

 元となった人物がいた?

 なら……俺は……。


「俺は……?」

「だがお前はどこまでいっても劣化した偽物だっ! お前という人間にこだわっている限り、いつまでたってもこの世界に平穏は訪れない。お前がこの方を満足させないから、過去も、そして未来も生み出された世界の住人が苦しみ、そして消えていくっ!」

「いや……待て、なんでそこまで俺のせいに……」

「お前はこの世界の魔王だっ! 真の悪役だっ! 僕は世界を救ってみせる! 僕自身が彼女のパートナーとして、彼女を支え、そして傷ついた彼女の心を救ってみせるんだっ! 僕はこの世界の救世主っ! 誰にも邪魔なんかさせな――」

「やめて……」


 さくら?


 苦しそうなさくらの声が、裕也の自己陶酔に満ちた叫びを打ち切った。


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