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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
ツクール編

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裕也とさくら


 皆斗から端末を受け取った俺は、すぐさま先の世界へと移動することにした。

 途中で元の世界に寄り、アングル王国の城にリディア王女を送り返しておこうかと悩んだ。しかしもしさくらが世界そのものを滅ぼしたとしたら、どこで何をしていようと危険なことには変わりない。むしろ俺のそばにいる方が一番安全なのではないかと思い、一緒に来てもらうことにした。


 封じられた世界――すなわち俺とさくらが住んでいた最新の世界へのアクセスは簡単だ。世界移動の権限を持つ端末で中に入ればいいのだから。出ることは難しいが入ることは容易。そういった設定になっているのは、皆斗が万が一のことを考えていたからだろう。


 こうして、俺たちは元の世界に戻ってきた。


「…………」


 近くの公園にやってきた。


「人が……いませんね」


 平日の昼。住宅街の小さな公園には、俺たち以外誰も人がいない。

 刺客や妨害もなさそうだ。

 

 さくらや裕也は俺たちが来たことに気が付いていないのか? あるいは……様子を見ているだけなのかもしれないが。


「…………」


 あまり悩んでいても仕方ない。

 放っておけばさくらは俺のことを検索するはずだ。最初は前の世界を調べるかもしれないが、もし、どこにもいないことに気が付いたら? 次はきっとこの世界を検索して俺を見つけ出すだろう。そうなってしまえばすべてが終わりだ。


 慎重に、端末を操作する。


 マップにはさくらと裕也が表示されている。二人は俺が住んでいたあのマンションの部屋にいるようだ。

 

「さくらをここに呼び出して……いや……」


 まずは端末だ。

 端末さえ封じてしまえば何もできない。あれだけこちらに転移させれば、この勝負は勝ったも同然。

 早速操作してみた……が。


「くっ……」


 ロックがかかっている。

 当然か。

 数を集めたとはいえ、これはさくらに与えられた制限版の〈リアルツクール〉。主である彼女に逆らえないように設定されていてもおかしくない。


「大和様。どうしますか?」

「とりあえず、慎重にマンションに近づいていこう。その間に端末を使ってさくらの様子を確認してみる」

 

 リアルタイムの動画を見れば、さくらの一挙一動を確認することができる。俺の存在に気が付いているのか、そうでないのか丸わかりだ。

 あるいは、向こうもこちらの様子を伺っている可能性もあるが。


 周囲を警戒しながら、俺はゆっくりと目立たないように移動を開始し、同時に端末から動画を再生した……のだが。


「は?」

「大和様? 行かないのですか?」

「ああ……ちょ、ちょっと待ってくれ」


 あまりの事態に、俺は歩くのを止めてしまった。


 動画が、表示された。


 ベッドに縛り付けられ、全身を拘束されたさくら。その近くに立ち、彼女の姿を苦々しい表情で見下ろす……裕也。

 助けにきた、という感じではない。むしろ抵抗するさくらを裕也が拘束しているように見える。


 どういうことだ?

 裕也はさくらを助けに来たんじゃなかったのか? 


 それとも、最後に裏切られたせいで皆斗みたいに反逆心をも強くなってしまったのか? 裕也はさくらを殺すために……この地にやってきたのか?

 ならなんで……皆斗は死んだんだ?

  

 分からないことだらけだった。 

 だが、分からないままではいられない。このまま策もなく突っ込んでいけばどう転んでしまうか分からない。

 情報収集が先だ。


 俺は端末に表示されている動画を見ることにした。

 シークバーを操作して過去の動画を再生しようかと思ったちょうどその時、裕也が喋り始めた。

 

「どうしてっ! どうして僕を認めないんだっ!」


 激高する裕也が、さくらに詰め寄った。 


「僕は命の恩人だ! あいつが作ったゲームの主人公よりも、強くて、賢くて、機転を利かせてあなた様を助けにきたっ! それなのにどうして僕を認めてくれないんだっ! そんなに……そんなにあいつのことがいいのかっ!」

「…………近寄らないで」

「僕はあなた様に選ばれて、嬉しかった。暗く、惨めなあの世界での生活が終わって、あなた様とともに数多くの世界を回った。あなた様はこの世界の女神で、僕はあなたに仕えるただ一人の従者、言葉を頂き神の使いとなる預言者っ!」

「……いやぁ」


 裕也はその場に座り込むと、さくらの手を握り……そして。


「はぁっはぁっはぁっ、愛しています。心から……あなた様のことを」


 手の甲にキス。

 いや、キスなんて生易しいものじゃない。興奮しながら舌を出して嘗め回している。

 まるで虫でも這っているかのように、嫌悪感を露わにするさくら。どう見ても裕也を受け入れそうには見えない。


「…………」


 俺も、リディア王女も言葉を失っていた。

 一瞬、世界の命運がかかっているということを……忘れてしまうほどに。


 ともかく、おおよその事態は分かった。

 裕也はこの地に戻り、俺の代わりを務めようとした。すなわち新しい世界でゲームを作り、彼女を楽しませ、時には彼女とともに苦楽を共にする仲間……あわよくば恋人や夫婦のようになろうとした。

 だがさくらはそれを拒絶した。

 怒った裕也は彼女を拘束し、自分を認めさせるように迫っている。それは忠誠というよりも、狂信的な偏愛に近い。


 だがどちらにしても、裕也はさくらの味方をするつもりだった。

 だから自分の邪魔をするものを真っ先に消した。

 それが……世界を渡る力を持つ皆斗。もっとも、皆斗は消える間際に俺にその端末を託してくれたのだが……。


「結局、敵を倒すことには変わりないんだよな」


 裕也……。

 お前が……皆斗を消したのか?

 仲間なんじゃなかったのか? 皆斗はお前に同情して……わざわざ消されてたお前を……復活させたんだぞ?


 裕也……。このくそ野郎が……。

 お前は俺の……敵だっ!


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