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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
ツクール編

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友達の彼氏


 さくらの協力を得た俺は、さらなる作品のクオリティアップを行った。

 結果、かなり良くなったと思う。

 本当に序盤の序盤というだけの話だが、ゲームの導入というのはとても大切な部分だ。その効果はかなり大きい。

 さて、続けてこの後の部分も直していきたいところなのだが……。


「さくら、この後の話ももう少しだけテストプレイしてみてくれないか? そうすればもっとクオリティが上がると思うんだが……」

「えーやだよ。楽しみなくなっちゃうでしょ」

「そーだよな」


 さくらは俺のゲームを楽しみにしてくれている。そんな彼女のすべての感想を求めてしまうことは、すなわち完成前のゲームのオチをすべてさらしてしまうことを意味する。

 確かに作品のクオリティは上がるだろうが、それえはさくらの楽しみを奪ってしまうことになる。俺も妹にはプレイヤーとして楽しんでもらいたい。こんなことをしていては本末転倒だ。


「やっぱりゲーム上で公開して感想募るしかないよなぁー。はぁー、誰も見てくれなかったらどうしようなぁ。辛辣な感想残されたらどうしような。俺、やっていけるのかな?」

「そんなに嫌なの?」

「普通に問題点を指摘されるだけなら大丈夫なんだ。ただ、ほかの人の感想見てるとさ、『死ね』とか『幼稚園児の作文以下』とか、何のためにもならない暴言みたいな言葉だけ残していく人も多いからな。そういう人が増えてきたら、やる気がなくなっちゃうかもしれないと思って……」

「うーん」


 俺は妹になんて情けない相談をしているんだろうか……。

 外で掃除機かけてるお手伝いさんに、今の話聞かれてないよな? 恥ずかしすぎるぞ。


 どちらにしても、このままでは良くない。やはりまず前半部分だけでも公開してみるべきか……。


「なんだか、子供みたいな言い訳しててすまんな。俺が決心して頑張れたいいだけの話……」

「お兄ちゃん、信頼できる人なら問題ないんだよね」

「ん? まあ、それなら全く悩みなんてないな」


 もしかして、何かいいアイデアがあるのか?


「ちょっと友達に話をしてみるね。あんまりこういうのやらないかもしれないけど、話だけでも……」

「無理しなくていいんだぞ。なんだかその友達にも悪いし……」

「せっかくここまで来たんだから、最後まで協力させてよね」


 さくらの友達なら俺と面識はない。信頼できる赤の他人というのは、こういう話をするのに一番適任だと思う。

 

 さくらは自分のスマホを弄りはじめた。メッセージアプリか何かで友達と連絡を取っているのだろうか?

 気になるが、会話の内容を覗き見るのは少々気が引ける。反応があるまでしばらく待つこととしよう。


「友達の彼氏で、このゲームいっぱいやってる人がいるみたい。その人を紹介するね」

「本当か? よろしく頼む」

「うん、今から紹介するね」


 すぐに妹からメッセージが飛んできた。アプリを通して会話しよう、ということらしい。

 メッセージアプリを起動すると、その人の名前が登録された。


 MINATOさんだ。


 普通は登録した本名がそのまま表示されるんだがな。ニックネームでこの形式にしたのだろう。本当にこの名前かどうかは分からない。


〝初めまして、妹さんの友達と付き合っています、MINATOです〟

〝よろしくお願いします。俺の個人的なゲームに付き合ってもらって、少し申し訳なく感じます。テストプレイの件、本当にいいんですか?〟

〝どんなゲームでもプレイすることは好きですので、お気遣いなく。僕も専門家ではないので的外れなことを言ってしまうかもしれませんが、個人の感想ということでご理解ください〟

〝ありがとうございます〟


 こうして、MINATOさんのテストプレイが始まった。



 数日、俺はMINATOさんとメッセージアプリでやりとりをした。

 彼は本当にゲームが好きなようで、真剣に、そして的確に俺のゲームの良くないところを指摘してくれた。

 目を見張るような改善ばかりで、ゲームのクオリティはかなり上がったと思う。


〝MINATOさん、いつもありがとうございます。赤の他人のゲームに、こんなにもまじめに感想を残してくれるなんて〟

〝いえいえ、こうして僕の感想が反映されてゲームが仕上がっていくのを見るのは、僕自身もとても嬉しいことです。ゲームをプレイすることも好きなので、何の苦痛もありません〟


 しっかりした人だな。

 とはいえお世話になってばかりでは申し訳ない。何か、お礼ができるならそれに越したことはないのだが……。


〝MINATOさん、この近くにお住まいなんですよね?〟

〝僕も妹さんと同じ学校に通っていますので、同じ市に住んでいますよ。それが何か?〟

〝よければ、一緒にお食事でもと思いまして。いつもお世話になってばかりですからね、ご飯代程度奢ろうかなぁと思っただけです。都合が悪ければ無理にとはいいませんが〟

〝僕も伊瀬さんにお会いしたいと思っていました。是非一緒にお食事しましょう〟


 おお、良い返事を貰えてよかった。

 さくらも一緒に連れて行こうかな?


〝あっ、妹さんにこのことは話さないでください〟

〝えっ、駄目なんですか?〟

〝僕は妹さんと直接友達というわけではなく、友人の彼氏ですので。ここだけの話、僕の彼女が嫉妬深くて、他の女の子とご飯を食べただなんて知られたら大変なことになるんですよ。だからいいですか? 絶対に妹さんにはお話ししないでください。誤解されたくないから、俺と会うことも話さないでください。男同士、二人だけの気兼ねなく飯にしましょう〟

〝分かりました〟


 何も口止めまでしなくていいと思うんだけどな。ひょっとして、さくらに知られたくない相談事でもあるのかな?

 まあでも会えるならそれでよかった。当日が楽しみだ。


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