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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
ツクール編

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63/85

駄作の主人公


 アプリ、〈異世界ツクール〉でゲーム世界を作っていた俺。

 謎の力でその世界に召喚されてしまった隣のクラス。

 魔王を倒せば、クラスメイトたちは解放されるかもしれない。

 

 そう、思っていた。確かに今、俺の目の前には向こうの世界に召喚された裕也と皆斗が戻ってきている。

 しかしこいつは、自分の意志で戻ってきたと言った。それどころか向こうの世界で人を殺したとも。


「はははははははっ!」


 裕也が笑っている。


「お前……何、笑ってんだよ。クラスのみんなは、お前の仲間なんだろ? それを……どうして?」

「仲間? クラスメイト? 君は本気でそんなことを言ってるの? そんなことだから……君は……ふふ、君はねぇ……」


 なんなんだ、こいつ?

 俺の記憶の中にある裕也は、いつも皆斗にいじめられてびくびくとしていた。しかしそれでも異世界の苦難を経て成長し、仲間たち困難を乗り越え成長してきた……はずだ。

 だけど、今、目の前にいるこいつはなんだ?

 俺のことを恨んでいないとは言ったが、好意を持っているようには見えない。むしろ激しい悪意、嘲り、そして怒りを覚えているように見えなくもない。


 血まみれの剣、エクスカリバーを持つ裕也。こっちは無防備だ。この距離、あの剣で襲い掛かってきたら……俺は殺されてしまうかもしれない。


「あのさぁ」

 

 裕也が剣を前に突き出した。

 刺される、かと思い一瞬驚いた俺だったが、すぐにそのまま静止する。

 裕也はそれ以上剣を動かそうとしなかった。


「前から思ってたんだけど、この剣、エクスカリバーって言うんだよね?」

「あ、ああ」

「最強の剣がエクスカリバーって、 Fate?  ああ、他のゲームかもしれないね。名前安直過ぎない?」

「え? あ、いやそれはさ。あの話百年戦争を参考にしてて、だ、だから世界観にマッチする最高の剣を……」

「またエクスカリバーかよ、って思ったね。少しは捻ってもらわないと」

「……また?」


 どういうことだ?

 ゲーム世界を作って、それが異世界になって隣のクラスを巻き込んでしまう。そんな事件が起こったのはもちろん初めてのことだ。

 こいつの言い方は……まるで。


「そ、そんなに剣の名前が気にいらなかったのか? だとしても……何もそこまで怒らなくても……」

「そうじゃない、そうじゃなくてさああああっ!」


 突然、剣を振り下ろした裕也。

 俺に当てるつもりはなかったようで、近くのベッドを一刀両断してしまう。


「この話がさあ、つまらないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「……つまらないって」

「君は無能だ! 愚かものだっ! 君の作った話は全然面白くなかった。無駄に移動させるしお使いみたいなクエスト多いし、キャラも名前だけ偉人で薄っぺらいモブの役立たず。おまけに魔族は侵攻の最初以外全部劣勢の雑魚。クラスの誰も死なない、死なせようとしない、おまけに雑魚スキルのせいで活躍もしない。うんざりなんだよっ!」

「いや……いや待てって。魔族強くしたらお前ら死ぬんだぞ?」

「だから僕が盛り上げてやったんだ! 物語はスムーズに! そして劇的にっ! 僕のおかげであの世界に緊張感が出たっ! 君だってそのスリルを楽しめただろっ!」

「……す、スリルって……お前な……」


 人が死んでるんだぞ?

 それを映画やゲームが楽しかったみたいに済ませてしまうなんて。

 理解できない。


「……おい裕也、いい加減にしろよ。お前何様のつもりだ――」

「いいや皆斗、俺が言おう」


 皆斗を遮ったその声は、完全に第三者のものだった。

 俺でも、リディア王女のものでもないその声。しかし俺には聞き覚えのあるものだった。


 この……声は。

 まさか……。

 あの時、ロリタ王女がさらわれたときに聞いた声。


「お前……魔王、エドワード?」


 魔王エドワード。

 もちろん俺がゲームで生み出した魔王のことではない。ロリタ王女が攫われた時、この世界にジャンヌを召喚し、俺たちを苦しめたこの事件の黒幕。

 俺がライオネルと勘違いしていた、本当の……敵。

 

 裕也たちと同じように突然現れた魔王エドワードは、皆斗の肩を叩くとその前に出た。


 ファンタジー的な服装ではなく、ごく普通の現代人といった格好だ。フードを深く被っていてその顔を拝むことを難しい。

 

「あ、あなたはっ!」


 その声と姿を理解した裕也が、一瞬にして不遜な態度を翻し、頭を下げた。


「ぼ、僕を労いにきてくれたんですかっ!」


 俺を馬鹿にしていた時とは180度違う。まさしく神や主人を相手にしているかのような態度だ。

 

「…………」

「お楽しみいただけましたか? こいつのつまらない駄作を最大限盛り上げるため、あなた様のことを思いながら努力しました。この度の流れではっきりと理解できましたよね? ゲームメイカーはこの男でなく僕の方がふさわしいっ!」


 恍惚の表情の裕也。


 つまり、こいつは俺の〈異世界ツクール〉の力が欲しかったってことなのか? だからそれを認められるために魔王エドワードに……。

 でも裕也は俺と同等かそれ以上の力を持っていたんじゃないのか? 今更これ以上俺から何かを奪う意味があるのか?


「僕こそが、あなた様のそばに仕え世界を生み出すにふさわしい存在! こんな無能はあなた様にふさわしくないっ! 世界はもっと良――」


「ルール違反だ」


「え?」


 裕也が固まった。

 言葉を理解できない、といった様子だ。俺も何が起こっているのか良く分からない。


「ライオネルはまだ死んでいない」

「え? あ……?」

「お前は勇者の役割を放棄して物語を汚した。ゲームが駄作なら主人公も愚か者だな。目障りだ。消えろ」

「ま、待ってくださいっ! 僕はそんな奴よりももっと――」


 ――キーンコーンカーンコーン。


 鐘の音が聞こえると同時に。


 裕也が……消えた。


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