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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
人魔大戦編

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旋風斬


 ジェーン対裕也。

 その戦いが始まった。


「オラオラオラオラッ! どうしたどうした? そんなんじゃあ誰も守れないよっ!」

「うぐ……」


 開始早々、ジェーンは斧を振り回して裕也を圧迫する。 


 ジェーンの猛攻はすさまじい。

 一つ一つが大岩を一撃で砕いてそのうえで地面に穴をあけてしまうような強力な一撃だ。裕也は自らが鍛えぬいたステータスと武具の力によってしのぎっているが、少しでも油断すれば命はないだろう。


「裕也っ!」


 皆斗たちが背後から裕也に強化魔法をかけている。そのままのステータスではジェーンの異常な強さに対応できないからだ。

 しかし――


「おっとっ!」


 ジェーンが戦斧の軌道を少しずらした。本人が意図したものではないように見えるが、そのせいで裕也の背後……すなわち皆斗たちに危険が迫ってしまう。


「危ないっ!」


 戦斧の衝撃波を防ぐため、裕也は体勢を崩してジャンプした。


「ぐうううっ!」


 かなりきわどいラインだったが、なんとか防ぐことに成功したようだ。


「あんたもお荷物抱えて大変だねぇ」


 ジェーンが笑う。


 クラスメイトたちは特殊な能力を持っており戦闘の助けにはなるが、多くの場合体力面で脆弱だ。裕也のように攻撃を受けたり弾き返したりといった芸当はできない。


「くだらない雑魚。自分で何もせず、他人を応援して戦力気取り。戦いに水を差すことしかできない弱者。あたいはああいう奴らが嫌いでねぇ。今すぐ殺してやってもいいくらいさ。あんたも内心、苦々しく思ってるんだろ?」

「……」

「まあ、みんなあたいが皆殺しにするんだけどさ。あんたは頑張って頑張ってへとへとになって大けがをして死ぬ。でもあいつらは遠くで応援していて死ぬときは一瞬。死ぬときあんたを責めたり文句を言ったりするかもしれないねぇ。あんたはそれでいいのかい? それだけの強さを持ちながら、辛い労働を押し付けられて満足なのかい?」

「違うっ!」

 

 裕也が剣を振るい、ジェーンはその刃を戦斧で受け止める。


「あなたは確かに力が強いかもしれない。誰にも負けない、強い魔族なのかもしれない。だけど人間はそうじゃないっ! みんなで協力し合って、どんな困難も乗り越えていくんだっ! 僕はみんなのことを仲間だと思っているっ!」

「馬鹿馬鹿しいねっ! だったらその仲間を庇って死になっ!」

「ぐっ!」


 ジェーンは大振りで戦斧を振り下ろし、裕也を吹き飛ばした。

 裕也はすぐさま態勢を立て直すが、すでにその時にはすべてが手遅れだった。


「――〈旋風斬〉」


 ジェーンの技、〈旋風斬〉が発動した。

 弧を描くように戦斧を振り回したジェーン。すると彼女の動きに従うように、周囲の大気が変化していく。

 そして出現したのは、巨大な竜巻だった。 


「…………あ」


 すさまじい竜巻だ。

 その見た目は魔法そのものであるが、ゲーム上の分類はそうでない。これはジェーンの物理攻撃であり、武芸の一種ということになっている。

 対裕也、というよりもこの場にいるすべての人物を攻撃対象とした強力な技。このままこの竜巻が進んでいけば、裕也はもちろん背後の仲間たちまで吹き飛ばされてしまう。

 

「さあどうする? あんたの大切な仲間が死ぬよ? 足手まといは切り捨てて、戦いに集中するのが一番さ」

「そんなことは、絶対に……させないっ!」


 裕也が巨大な竜巻に突撃した。


「あああああああああっ!」


 すさまじい風の奔流が裕也を襲う。吹き飛ばされるというよりは、体が引きちぎれるような恐ろしい暴風に見える。


「負けないっ!」


 剣を構えて突進した裕也が、竜巻を突き抜ける。


「…………」


 裕也は〈旋風斬〉を克服した。

 そしていくらか竜巻を散らせることに成功した。

 だが、それまでだ。

 未だ巨大な大きさを維持したままの竜巻が、裕也をすり抜け背後のクラスメイトたちへと迫っていく。


「逃げろおおおおおおおおっ!」


 皆斗たちが必死に後ろへと下がっている。

 しかしこの場は橋のように狭い陸地で、周囲を海に囲まれている。足場もそれほど良好とは言えず、とても回避には向かない立地だ。

 そして竜巻はもたつく皆斗たちよりも早く確実に迫っている。


 まずいな、このままじゃあまた犠牲者が。

 俺はすぐさま近くに壁を生み出した。

 

「な、なんだ、急に壁が……」

 

 突然背後の出現したその壁に、皆斗たちは驚いている。

 

「助かった、のか?」

「裕也の技か? それとも魔王の?」


 安堵と不安。

 戦いはまだ終わっていないのだ。


「裕也のところに戻らねーとな」

「で、でもさ、俺たち逆に足手まといになるんじゃ……」

「でもここで逃げても、魔族がせめて来たらみんな殺されるわよ」

「僕たちにもできることがある。そうだろ?」


 クラスメイトたちが壁の近くに寄りかかり、その奥の様子を知ろうとしている。


 あ……馬鹿、やめろっ!


「みんなああああああっ!」

「え?」


 裕也が、俺の作った壁を破壊した。

 

 それは仕方のない話なのかもしれない。

 俺はみんなを守るためにこの壁を出現させた。でもそれはこっちの勝手な都合で皆斗や裕也、そしてジェーンもそのことを知らない。

 裕也からしてみれば、この壁もまた魔王による新たな攻撃と映ってしまったのかもしれない。

 

 だから急いで破壊した。


「……直志」


 裕也はエクスカリバーで壁を破壊した。それほど雑な動作ではなかったが、それでも半壊した壁の一部が周囲に霧散した。

 それはまるで、壊れたビルか何かのように。

 破壊された破片の一部が、運悪く壁を調べていたクラスメイト――直志の頭部に直撃した。


「あ……ああ……」


 頭蓋骨が砕け、頭から血を流したクラスメイト。明らかに致命傷だ。息をしているようには見えない。

 

 また、一人死んだ。


「う……あああああああああああああああああああああああああっ!」

「はははっ、こりゃ傑作だ! 結局自分で殺しちまってるじゃないのさっ! いいさいいさっ! あんたは悪くない、悪くないよっ! 弱い奴が悪なのさっ!」

「お前が……お前が言うなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 なんだ、これ?

 裕也の身体が光ってる。


 かつてゾンビに追い詰められて〈セイクリッド・ソード〉という技を編み出した時と同じような光だ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「な、なんだいこれはっっ!」


 ジェーンが戦斧を構えて裕也の剣を受けようとした。

 が、思い通りにはいかなかった。


 ジェーンの戦斧は、裕也の剣によってやすやすと切り裂かれたからだ。


「こ、こいつっ!」


 切断された斧の刃の部分と柄の部分を両手で持ったジェーンが、すかさず裕也に応戦する。しかし先ほどまでのような強者の余裕はない。


 強い。

 本当に……なんなんだろう裕也の強さは。本当に……漫画か何かの主人公を見ているかのようだ。


「面白い……面白いよあんたっ! 追い詰められて成長するなんて、かっこいいじゃないのさっ! 自分の手で仲間を殺した、その罪悪感がそうさせてるのかねぇ」

「黙れええええええええええっ!」


 怒る裕也が、ジェーンに肉薄する。


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