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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
人魔大戦編

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侵攻開始


 ――〈カオス・レギオン〉。

 それは俺の聞いたことのない魔法だった。


 すべての魔法、スキルは俺が生み出したものだと豪語できる。しかしそれは、ライオネルのような異端者の介入がなかった時の話だ。

 実際のところ、魔術の開発という設定は存在する。神である俺の意思を外れというのなら、オリジナルの魔法を生み出せたとしてもおかしくない。


 ライオネルは魔法を行使した。

 だがその巨大な魔方陣にも関わらず、何か変化が訪れているようには見えない。少なくとも火や雷を発生させるような攻撃魔法ではないようだ。

 だとしたら、一体……。


「ああ……ああ……」


 変化は、ゆっくりと現れた。  

 地面に伏していたはずのロリタ王女が、次々と目を覚ましたのだ。

 蘇生魔法か、と思ったが少々実体とは異なるようだ。


「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」 


 あるものは腕がもげ、またある者は内臓がはみ出し、またある者は顔面の半分が潰された状態であった。それらは魔法によって癒されることなく、醜い見た目のままとなっている。

 これはただの蘇生魔法ではない。


 ゾンビ。 


 魔物として出現することのある、ごく普通の敵キャラだ。ドラゴン、リザード、あるいは人間のゾンビが随所で敵として現れ、そして勇者たちの前に立ちはだかる。 

 だがゾンビなどというバッドステータスは存在しない。登場キャラがゾンビになるという設定もないし、そうすることのできる魔法も存在しなかったはずだ。

 これ明らかにイレギュラーな存在。


 いびつな形でよみがえったゾンビ偽ロリタ王女は、うめき声をあげながらライオネルに頭を下げている。どうやらこれまでの『魔物化』とは違い、ライオネルを召喚者としてこいつに操られる立場にあるようだ。


 くそっ!

 

 これじゃあまた時間稼ぎされてしまう。いや、また対策したロリタ王女を投入する必要がある。

 あいつらは一体どれだけ対策を練ってきているんだ? 俺は何度こいつらの対策に対策を練れば終わるんだ?


 ……だけど、謀略をつかさどるエドマンドはもう倒したんだ。これ以上新しい策は出てこないはず。

 粘れば……勝利は目前に。


「……ん?」


 画面を見入っていた俺は、さらなる変化に首を傾げた。


 突如、ジェーンはゾンビの頭をつかみ取った。

 みしみしと音を立てる頭蓋。ゾンビだからいきなり死んだりはしないと思うが、明らかにダメージが入っていると思う。 

 なんだ? やっぱりこいつら偽ロリタ王女を殺すつもりなのか? いやじゃあわざわざゾンビにした理由は一体?


「うおらああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 突然の、投擲。


 ジェーンはものすごい勢いでゾンビを投擲した。それは彼女が海を割るときのような強大な力であり、人間の常識では考えられないスピードだ。

 ゾンビは彼女の力によって遥か彼方の南の海へと……。


 え?


 いや、ちょと待てって。


 今の投げ飛ばされたゾンビ、どこいった?

 

 吹っ飛んだゾンビは、まるで隕石か何かのように森林地帯へと激突した。

 オルレアンの南……すなわちアングル王国の領地へと。


 森か、と一瞬安堵を覚えた俺だったが、すぐに冷静さを取り戻し……そして理解することになった。


 あ、あ……ああ……ああああああっ!


 その瞬間、俺は奴らの狙いを完全に理解した。


 ジェーンの狙いは正確とまではいかないが、明らかに人里からそう遠くない位置に投げ込んでいる。この飛距離なら、おそらく王都すらも射程圏内だ。

 

 もし、この人類最強のゾンビが首都の町中に投下されたとしたら?

 アングル王国首都。そこは勇者たちが最初に訪れる最弱の街。ゆえに兵士たちもそれほど強くなく、そしてなによりあそこには隣のクラスの奴らがいる。


 虐殺だ。


 ゲームの世界の住人はもちろん、裕也も皆斗も偽ロリタ王女には敵わない。ゾンビと化した彼女はライオネルの命に従い、人間たちを蹂躙して回るだろう。


 俺は体の震えを隠せなかった。

 今、初めて魔族がアングル王国の中心部に侵攻してしまったのだ。俺がこれまで絶対に避けようとしていた事態が訪れてしまっている。

 

「大和様っっ!」

「分かってるっ!」


 そうだ。

 時間を停止しなければ。


 俺はすぐさまシークバーの近くにある停止ボタンを押した。こうして頭を冷やし、考える時間があれば必ず解決策が。

 しかし――


「……と、止まらない」


 動画は一向に止まらない。つまり、向こうの世界の時間は流れたままだった。


「馬鹿なっ! 止まれ、止まれよ! 何動いてんだよっ! 止まれええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!」


 俺は何度もボタンを押した。しかし、どれだけ操作しても、まるで画面が固まったように操作を受け付けない。

 試しに停止とは関係ない動作を試みてみるが、これはうまくいった。画面移動や、あるいは偽ロリタ王女の生成など、既存の動作には全く問題ない。

 

 つまり、この時間停止機能だけがロックされている。


 ど、どういうことだ? さっきはしっかりと時間停止ができたはずなのに。今はこっちの操作を全く受け付けない。

 まさか一回だけの仕様だった? いや、なんでわざわざそんな制限を付ける必要があるんだ?

 

 こうしている間にも、肉体を半壊させたゾンビたちがゆっくりと起き上がり、四つん這いになって移動を始めている。その目標はまぎれもなく首都であり、マップに示される動きは正確で迷いがない。


「こ……こんな、わたくしの……わたくしたちの国が」


 絶望に染まるリディア王女を横目に、俺はただ動きもしないボタンをタップすることしかできなかった……。


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