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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
人魔大戦編

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48/85

オルレアン侵入


 マンション、自室にて。

 俺とリディア王女の作戦会議が続く。


「蘇生できないというのであれば、命を無駄にはできませんね。では……わたくしたちの偽物を100人用意して……」

「それは考えたんだが……部屋が狭くて暗殺には……」

「いえ暗殺ではなく、無人のオルレアンやエン将軍の近くに配置して……」

「おお……」


 刺客、という考えから失念していたが、今重要なのは魔界三将ではなく侵攻している魔族たちだ。

 根本的には何の解決にもならないが、偽ロリタ王女を100人用意すれば足止めには十分だ。


「時間稼ぎにはなるな。いや、うまくいけば雑魚を一掃できるかもしれない。さっそく試してみよう」


 とりあえずはエン将軍の近くに数人を配置しよう。兜で顔を隠しておけばたいした問題にもならないしな。

 そう思い、俺はスマホに目を落とした。


「なっ!」


 そこには、信じられない光景が広がっていた。

 先ほど、エン将軍の必死の抵抗を映していたその画面。代わり映えのしない大活躍の場面であったはずなのだが、変化は唐突に訪れていた。


「橋……だと……」

 

 それは、氷の橋だった。

 エン将軍がいる場所から少し離れた位置に、巨大な橋がかけられていたのだ。おそらくは魔法で海水を凍らせたのだろう。ちょうど将軍を避けるように、左右からオルレアンの浅瀬へと続いている。


「馬鹿な……」


 普通に考えれば、エン将軍を倒すのが一番早い。だがエン将軍はその命を燃やして孤立奮闘で敵を撃破する。

 だからこそこれは話の盛り上がる英雄譚なのだ。

 橋をかける、などという荒業は当然ながら俺のシナリオには存在しない。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! 俺はエンっ!」

 

 まるで暴走する機械のように、エン将軍は叫びながら蛇矛を振り回している。

 だが、左右を迂回した魔族たちに、その矛が届くことはなかった。

   

 エン将軍はあそこを動くことができない。それは背後の味方を守るためとかそういった気持ちの問題じゃなくて、かといって足を怪我したわけでもない。

 このゲームを制作した俺の作った仕様だ。

 ここに無敵のエン将軍を配置して、ここから魔族が攻めてくる。ここに橋があるから魔族は前に進めない。そういうルールだったはずなのに、その制約が破られている……。


 国を守りたいというエン将軍の気持ちは本気なんだと思う。だけど創造主の力を凌駕する魔界三将のスキルでもなければ、この法則に抗うことはできない。


「この動き。やっぱりライオネルはこのゲームのストーリーを理解してるんだな」


 無敵のエン将軍が……まさかこんなバカげた方法で破られるなんて……。


 魔族の大軍が、徐々にオルレアンへと集結してきた。

 かつてこの地を守っていた聖女はもういない。住人もなく放棄されたこの都市は、まもなく魔族によって蹂躙されてしまうだろう。


 今から偽ロリタ王女を何人用意できる?

 コピー、貼り付け、コピー貼り付けとして数十人程度か?

 個々は最強だから魔族に負けるはずはないけど、この広さなら打ち漏らしがでるだろうな……。


 くそっ!


「地域を分断しましょう」


 リディア王女がそう提案した。


「分断?」

「オルレアンから首都までは山岳を挟んだ険しい立地。その地形を変えて新しい海峡を作るんです。すでに避難が終わり人がいないのであれば、犠牲なく行うことができるはずです。海峡が広ければ魔族の侵入も阻めるでしょう」

「そ、それはずいぶん大胆な作戦だな。国の形が……変わってしまうんだけど」

「国民あっての国ですっ! 大和様、ご決断をっ!」

「…………」


 躊躇する俺と、決断を求めるリディア王女。


 そうだな。

 そうだよな。

 何かを変えることの副作用。世界や命をもてあそぶような暴挙。俺はそれをずっと懸念していた。

 でも、俺は薄っすらとは分かっていた。 

 それが必要なことに。そうしなければ世界が変えられないことに。


 ただ、誰かに……いや、あの世界の住人に認めてもらいたかったのかもしれない。これは仕方のない話だと。君たちを救うにはこれしか方法がないのだと。

 卑怯な話だと思うけど、それだけの免罪符が……欲しかった。



 だがここまで話が付いた以上、もはやすべてを度外視してでも全力で戦うしかない。たとえそのせいで世界に多大な傷跡を残してしまったとしても。


 俺は即座に地形生成の画面を起動し、大陸の改造に着手した。

 

 半島というには少々広すぎる北の都市オルレアン。そこに運河のように長くそして広い海のマップを追加していく。

 これよりオルレアンは孤立した島となり、人間・魔族ともに容易に移動できない緩衝地帯と化した。

 エン将軍は見捨てる形になるが……国を守れるなら本望だよな?


 そして、予定通り偽ロリタ王女をオルレアンへと配置した。

 その数はコピーと貼り付けを繰り返し、200体は超えているだろう。すでに遭遇した魔族の何体かをその手で葬っている。都市の防衛に100体と、あたりをランダムに動き回って魔族を狩る100体。

 広大なオルレアンとその周辺すべてをカバーすることは難しいかもしれないが、放っておけばやがて侵入したすべての魔族をせん滅することができるだろう。

 

 だが浅瀬の橋を利用し集結した魔族はいまだ健在。その狭い通路が魔族の侵攻を阻んでいたように、逆に偽ロリタ王女の攻撃をも阻む結果となってしまった。


 さて、次はどの手で攻めるべきか……。

 

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