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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
人魔大戦編

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創造主の知識


 俺はリディア王女に様々な事実を打ち明けた。

 偽リディア王女とジャンヌを含めた四人の巫女の死。結界の消失と魔族の侵攻の始まり。そして消えた魔王エドワードと新たな魔王ジェーン。


「そんな……私たちの国が……魔族の脅威に……」


 愕然とするリディア王女。

 そう……だよな。自分の国がそんな恐ろしいことになるだなんて……ショックだよな。

 しかも、そうするようにこの物語を作ったのは俺だ。


「……俺はさ、異世界を作ってるつもりなんてなかったんだ。神だとか創造主だとかそんな感覚じゃなくて、ただ空想の物語を書いてるつもりだった。だからこんな悲劇的な展開が用意してある。いや、『用意した』なんて言葉……あの世界に住んでる人たちには失礼かもな」

「もう、アングル王国は滅ぼされてしまったのですか?」

「いや、まだ魔族は大陸にも到達していない。オルレアンの前、浅瀬の橋でエン将軍が食い止めてる」

「え、エン将軍がっ!」


 当然、リディア王女もエン将軍のことを知っている。


「たった一人でこんな大軍に立ち向かうなんて。無謀です。このままえでは将軍が死んでしまう……」

「いいや、大丈夫だ。エン将軍は戦える。見てくれ」


 そう言って、俺はスマホをリディア王女に見せた。

 そこには、今まさに魔族の大軍を足止めしているエン将軍が映し出されている。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 エン将軍が吠えた。

 魔族が住む北の島と北方の都市オルレアンとの間にある海峡。そこに突如として出現した橋のような浅瀬に、魔族たちが殺到していた。

 しかしそこに立ちはだかり、魔族たちの猛攻をしのいでいるのがエン将軍だ。 


 繋がっていたはずの橋のような浅瀬は、エン将軍の後ろだけ海水で満たされている。退路を断つため自らの手で壊したのだ。


「アングル王国将軍エン、ここにありっ! 死にたい奴からかかってこいっ!」


 エン将軍は蛇矛を振り回して周囲の魔族を薙ぎ払った。

 まさしく一騎当千。

 国のため、そして人類のために魔族たちを一歩も前に進ませないその姿。英雄そのものであった。


 その雄姿を見たリディア王女は、感動のあまり涙を流しそうになっている。


「わたくしたち人類のためにこのような素晴らしい奇跡を用意してくださるだなんて……。まるで長坂坡の戦いの張飛のよう。物語の中にも希望はある。ありがとうございます……。やはりあなた様は慈悲深い神」


 その言葉を聞いて、俺はいたたまれない気持ちになった。

 

「ごめんっ!」

「……大和様、何を謝るのですか?」

「俺はさ……リディア王女が考えてるような立派な人間じゃないんだ」


 違うんだ。

 そんな立派なものじゃない。俺は…………。


「このエン将軍のくだりって、完全に三国志のパクリなんだ」

「え?」

「さっき似てるって言ってただろ? それはオレがあの話をそのままパクっただけなんだ」

「で、ですがそれは創造神であるあなた様の途方もない知識で生み出されたということですよね? 研究と研鑽を重ね生み出された創作物。だとすればやはり誇らしい結果では? 恥じたり謝る必要などないと思うのですが……」


 そうじゃない。

 そうじゃないんだ……。


「それだけじゃない。魔界三将が決起するきっかけになった『桃園の誓い』もまんま三国志。魔王エドワードは百年戦争の黒太子エドワードで、魔界三将は弟のライオネルとエドマンド、それから妻のジェーンから名前を取ってる。それに聖女ジャンヌはフランスのジャンヌそのままで、そもそも魔族の住む北の島ってイギリスが――」

「え……え……え……?」

「これ全部ウィキペディアに載ってる。複雑な資料とか高尚な参考書とかいらないんだ。いつでもだれでも、簡単に調べることのできる。料理を作るよりも簡単で時間がかからない話だよ」


 ここまで……話すつもりはなかった。

 現状を説明して、どうすればライオネルを倒せるか助言を請いたかった。ただそれだけのつもりだったのに。

 こんな失敗ばかりの俺をあまりにも持ち上げるから、恥ずかしくて、申し訳なくて、つい……こんな惨めな話を打ち明けてしまった。


「ですが今、あなたはわたくしたちの世界のために心をくだいてくれています」

「…………」

「たとえあなた様がいい加減な、適当な気持でわたくしの世界を作り上げたとしても、今の大和様は違う。わたくしのため、そしてロリタのために動いてくれている。その心遣いだけでわたくしは十分なのです」

「そう……だよな」


 なんだか、慰められてしまった。

 

 俺はリディア王女の手を握った。


「ありがとうリディア王女。俺は……今、やるべきことをやろう」

「はい」


 惨めな気持ちを……改めよう。

 さて。

 これで必要な情報は出揃った。


「とりあえず俺としては、この戦いを人類の勝利で終わらせたい。そのつもりで物語を作ってた。でも裕也たち突っ込ませても、今のままだと勝てるかどうか分からない」

「魔界三将ライオネル。ロリタを傷つけた張本人のせい、ですよね?」

「ああ……」


 あいつを何とかしないといけない。


「ついさっき、俺は四人の刺客を放った。能力を最大限に強化して、最強の武具を与えてライオネルを襲った。なのに勝てなかった。ジャンヌ、マリー、ロリタ王女にリディア王女。あれで勝てないなら……もう」

「ジャンヌ将軍たちを蘇生させたのですか? なら勇者たちも……」

「いや……違うんだ」


 それをできるなら、俺は妹のさくらを生き返らせている。

 

「まだ蘇生機能を実装されてない。だから俺は、四人のデータをコピーして偽物を作っただけだ。本物のリディア王女やロリタ王女はここにいるだろ?」

「ですね」

「本人じゃないんだ」


 たとえ見た目や癖が同じでも、コピーはコピーだ。異世界が本当に存在するというのなら、そこだけは線引きしておきたい。



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