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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
人魔大戦編

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最強の盾


 最強装備の一角、伝説の盾アイギス。

 精霊となったリディア王女によって適示されるその防具は、物語の後半に入手することができるようになる。強制イベントではないため、無視したままクリアすることも可能だ。

 そしてエドマンド話した通り、この盾は魔王城にある。


 そう、この装備は魔王城に隠されている。特殊なイベントを経て最後に手に入る最強装備の一つなのだ。


 アイギスはロリタ王女とジャンヌの攻撃を受け止め、そしてマリーの攻撃を防いだ。


 まずこの盾には魔力系の攻撃を無効化する能力がある。従ってマリーの攻撃はもとより、剣を触媒に光系魔法を放つジャンヌの〈ラ・ピュセル〉もまた完全に防がれてしまった。


 つまり三つの攻撃中有効打となり得るのはロリタ王女の『殺陣』なのだが……。


「くっ」


 エドマンドの顔が苦痛に歪む。

 俺の用意したロリタ王女の攻撃系スキル――〈殺陣〉は敵全体に高威力の物理系打撃を与える。範囲は広いものの俺が威力を弄ったため絶大な威力を発揮している。

 たとえ伝説の盾を身に着けたとしても、防ぎきれるものではない。

 だが――


「アルティメットヒール」


 ライオネルがそう言うと、エドマンドのHPがもとに戻った。


 向こうは回復魔法を持っている。少しの攻撃ではすぐに全回復させられてしまう。


 まずいな。

 今のままなら膠着状態。だがここは人類圏ではなく敵国の島であり、魔族の本拠地魔王城だ。

 時間がたてばたつほど、状況が不利になっていくかもしれない。


 などと悠長なことを考えていた俺だったが、その変化は唐突に訪れた。

 突如としてドアが開き、一体の魔族が部屋の中に侵入したのだ。


「ジェーンっ!」


 魔王ジェーン。

 かつて全武の将と呼ばれ魔界三将の一体としてその名を轟かせた魔族の幹部。よりにもよってこいつが……。

 いや、冷静に考えれば仕方のない話だ。ライオネルの部屋はジェーンの玉座の間に近い、幹部クラスがいる城の上階付近。騒ぎが大きくなれば当然こうなる。

 そもそも一体一体暗殺という話だったのだ。ライオネルだけならそれも可能だったのだが、エドマンドが介入してきた時点ですべてが崩壊した。

 もう……失敗だ。


「ははははははっ! 面白いことになってるじゃないのさっ! ライオネルっ! 城の中で戦う分には文句はないんだねぇっ!」

「もちろんだよ」

「だったらどきなっ! 全員あたいの獲物だっ!」


 目をギラギラと輝かせたジェーンが、戦斧を構えて仁王立ちする。

 巨体の彼女に巨大な戦斧。すでに部屋の天井につかえるほどになっており、常識的に考えるなら十分に暴れることができないように見えるのだが……。


「うらあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 こいつ……化け物かよ。


 俺は初めて、このゲームのキャラに対して恐怖のような感情を抱いた。


 ジェーンは巧みに戦斧を振り回し、家具や壁に多少の傷はつけたものの壁自体は壊さないようにふるまった。

 だがその威力は絶大。彼女の与えられた〈全武〉と呼ばれるスキルもまた、その名にふさわしく数値の上ではカンストしているリディア王女たちを圧倒した。


 抵抗ができなかったわけではない。

 しかし気が付けば全員、血まみれになって城の床に横たわっていた。

 

 魔界三将、完全勝利だった。


「いいねぇ、いいねぇライオネルっ! あんたのそばにいればまたこんなに強い刺客と戦えるのかい? だったら城で留守番も悪くないねぇ!」

「その調子でお願いしますよジェーン……様。ここが正念場なのですから」

「分かってるってっ!」


 勝利の後の他愛ない談笑。

 ジャンヌやリディア王女がそうしていたのであれば、ほほえましいものであったに違いない。しかしこいつらの会話は、俺にとって不本意な結果だった。


 能力をカンストさせ、最強の装備を与えて。

 それでもなお……こいつらには勝てないのか?

 

 創造主である俺を上回る脅威。


 どうする? 

 どうすればこいつらに勝てるんだ?


 俺が手動で削除すると、誰かがそいつの役割を継承して登場する。これでは全く意味がない。

 だから刺客を送り込んで殺そうとしたが、これも失敗した。


 ならもっと刺客を増やしてみるか? 偽ロリタ王女を100人、いや200人。

 ……馬鹿馬鹿しい。部屋の天井いっぱいに王女をぎゅうぎゅう詰めにするつもりか? そんな状態で満足に戦えるはずがない。


 第三勢力を生み出して、そいつらを魔族と争わせて……。

 いややめよう。またライオネルみたいに俺に反逆する奴が出てこないとも限らない。

 

 一体一体遠くまで誘き寄せて、各個撃破すればあるいは……

 いや、どうやっておびき寄せるんだこいつらを。俺のことを自覚してるんだぞ? ジェーンはともかくエドマンドの現れたあのタイミング。おそらく事前に打ち合わせをして、俺の刺客が来たら対応できるようにしていたのだろう。


 手数は無限にある。

 だが副作用が気になり、有効打が打てない。ジャンヌやマリーのコピーを魔王城に召喚したことはかなりの冒険だった。だけどそれすらも失敗するなんて。

 

 俺は途方に暮れてしまった。

 

 こうしている間にも多くの兵士が死に、魔族たちは着々と本土へと侵攻している。俺はこの世界の創造主として、そしてロリタ王女を傷つけてしまった償いとして戦わなければならないのだ。


 それなのにこの結果はなんだ。

 黒幕のライオネルはこちらの世界に干渉できる。これ以上余計なことをすれば、もっと恐ろしい報復が俺に……。


「大和様」


 仮想世界から現実へ。

 はっとして振り返ると、部屋のドアが開いていた。外にはリディア王女がコップを持って立っている。

 ホットココアか何か、気を利かせて飲み物を持ってきてくれたんだと思う。


「大和様、またお疲れの様子ですね。わたくしとしてはお休みしていただきたいのですが、あなた様の強い意志を否定することはできません。どうか自分の身体を労わってください。わたくしもロリタも、いつもあなたのことを応援していますから……」


 そう言って、リディア王女はテーブルにコップを置いて立ち去ろうとした。


「待ってくれ」

「え……」

「少し……話をしたいんだ」


 途方に暮れた、この状況。

 俺は……すべてをリディア王女へ打ち明けることにした。


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