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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
王妹殿下来訪編

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位置情報表示機能


「ただいまー」

「…………」


 家に帰った俺たち。気まずいのか、ロリタ王女は無言の帰宅だった。


「あっ、大和様、おかえりなさい。それにロリタも……?」


 玄関で俺たちを出迎えたリディア王女が首を傾げた。

 ロリタ王女が握っている木刀の存在に気が付いたのだろう。

 ただリディア王女はロリタ王女が何を思ってこの木刀を買ったのか知らない。『剣を振り回したくて』という話を聞いた俺は有罪であることを知っているが、何も知らない彼女は判断に困っている様子だった。

 もちろんそのまま何を思って買ったのかを話せば悪い印象を与えてしまう。ここは俺がフォローするところだ。


「ロリタ、その木刀は?」

「こ……これは……その……」

「それは俺のもので、ロリタ王女にプレゼントしたんだ」

「大和様が? なぜ?」


 やはり不思議そうな顔をリディア王女。


「リディア王女は、『剣道』って知ってるか?」

「剣術の一種ですか?」

「近いけど、どちらかといえば礼儀とかスポーツとかそういう感じに寄ってるかな。あまり実践的じゃない、誰かに見せたり自分を鍛えるためのものなんだ」


 異世界みたいに人殺しをする道具ではない。

 そこは伝えたい。


「この国では戦争もなく平和な時代が続いてね。武器を使っての競技や娯楽が多いんだ サバゲ―、弓道、槍投げ、乗馬、そして剣道なんてのもある。剣道は心を鍛える……なんて言われることもあるんだ。俺はこの剣道を通して、ロリタ王女に落ち着いた品位のある振る舞いを身に着けてもらいたいと思ってる。ここにいる短い間だけでもね。俺が教えようと思ってるんだけど、リディア王女はどう思う?」


 うーむ。 

 全くの嘘ではないものの、日本に住む人間がこの話を聞いてたら『何を馬鹿な』って突っ込まれること間違いない。

 そもそも俺は剣道の達人というわけではない。中学の時少しやってた程度だ。とてもではない人に教えられるレベルには達していない。


 ただ、異世界人のリディア王女を言いくるめるにはこれで十分だと思った。


「……大和様が、そうおっしゃるなら」

「お姉ちゃん」

「ロリタ、その木刀……大切にするのですよ」

「うんっ!」


 ここでスポーツなんて女らしくない、なんて話をされてしまったらそれまでだったけど、どうやらそこまでひどい考え方ではなかったらしい。俺もそんな保守的な世界を作ったつもりはなかったからな。


「ありがとう、お兄ちゃん! お姉ちゃん!」


 そう言って、ロリタ王女は笑った。

 これで一件落着だ。

 笑顔を見れて、本当に良かった。



 ――月曜日。

 今日は平日。俺はリディア王女とともに高校へと行った。

 もちろん見た目小学生なロリタ王女を連れていけるはずもない。一緒に行きたい、と駄々をこねていたが、なんとか説得してお留守番してもらうことになった。

 この前は活発に大暴れしてたけど、まさか今回もそんなことはしてないよな? 俺は信じてるぞ?


「ただいま?」


 俺とリディア王女が家に帰る。

 しん、と静まりかえる廊下。

 

「あれ、ロリタ王女?」

「また外に出ているのでしょうね。まったく、この時間には帰ると伝えたのに……」

「出かけたのか?」

 

 ま、外に出てるだけなら大丈夫か。

 いや……。


「困ったな、さすがにこの時間は……」


 時刻は午後五時半。

 そろそろ夜を意識する、そんな時間帯。 


 忘れがちだが、この世界とて決して100%安全とは言えない。野盗や魔物がいなかったとしても、変質者や野良犬程度ならどこかでうろうろしているかもしれない。

 昼間ならさすがに何も心配はしないのだが、夜ともなれば話は変わってくる。道に迷う可能性だって増えるからな。


 この時間に俺たちが帰るから、と安心して留守番を任せたのが間違いだったのかもしれない。


「……仕方ないなぁ、迎えに行くか」

「妹がご迷惑をおかけてして申し訳ありません。帰ったら必ず言い聞かせますので……」

「ああいや、そこまでたいした話じゃないんだ。リディア王女、〈リアルツクール〉を貸してもらえるか?」


 あまりこういうやり方は好きじゃないんだけど、今回は彼女の身を案じてのことだ。GPSで子供を見守ることは保護者としては許されるやり方だと思う。この間みたいに昼間外へ出たのとは話が違う。


 俺はリディア王女からもらった〈リアルツクール〉を起動し、マップを呼び起こした。

 以前のアップデートでマップが改善され、キャラクターを地図の上に表示させる機能が追加されたはずだ。〈異世界ツクール〉で皆斗たちの位置をマップで示せるように、〈リアルツクール〉ではロリタ王女の位置を表示できるはず。

 

 このアプリ上でロリタ王女を検索することは容易なことだ。異世界人、王女、リディア王女の妹など、特徴があまりにも多すぎる。

 俺はすぐさまロリタ王女を見つけ出し、マップ上に表示する設定にした。

 のだが……。


「…………あれ?」


 おかしいな。

 ロリタ王女が地図上に表示されないぞ? 俺は何か間違ったのか?

 試しに、俺の位置情報を表示してみる。


「出るよな?」

 

 このマンション、すなわち俺の家に俺の位置を示す丸い印が表示された。位置情報表示機能が正常に動いている証拠だった。

 じゃあ異世界人だからか? と思ってリディア王女も設定してみたけど、こちらもしっかりと俺の家に印が表示された。


「大和様? どうかされましたか?」

「ああ、ちょっと待ってくれ。まだ扱いに慣れてなくてな」


 窓から差し込む夕日に、少しばかり焦る。このままだと……夜になってしまう。

 どうすればいい? 黙って適当に探せばいいのか? そんなに深刻な話でもないとは思いたいんだけど……。


「…………」


 不安だ。

 どうして地図上に表示されてないんだ? 何かあったんじゃないのか?

 そう思うと、このまま黙って帰りを待つのことはできなかった。


「リディア王女、少しだけリビングに行っててもらえるか? テレビでも見てゆっくりくつろいでてくれ。すぐに終わるから」

「は、はい。分かりました」


 事情を察したのだろうか、リディア王女はキッチンへと向って行った。

 すまないな、ここから先は見せたくない。


 地図上に表示されないロリタ王女。

 だが彼女が今どこにいるかを確認する方法は……一つだけじゃない。


 リプレイ動画だ。

 

 この〈リアルツクール〉は〈異世界ツクール〉と同等の機能を有している。かつて俺がリディア王女の悲劇をリプレイ動画で知ったように、ロリタ王女の足跡をもたどることができるはずだ。

 すでにロリタ王女の人物情報をアプリ上で把握している俺にとって、それほど難しい話ではない。

 

 ただ、これは位置情報表示とは違って、明らかにプライバシーの侵害だ。リディア王女にはこんなところを見せたくはなかった。彼女がこの機能を扱えるのかどうかは……知らないけど。


 俺は素早くリプレイ動画を検索し、最新の映像を再生しようとした。 


「最新の動画終了時刻が……四時?」


 おかしい。

 今は六時過ぎだ。リプレイ動画はこの時間まで表示されていなければ変だ。

 なぜこの時間なんだ? まさか死……いや、死んだら状態がさくらみたいに『死亡』に書き換わるはずだ。

 状態異常でないレベルの安眠? 気絶? 

 

 と、とにかく、動画を再生してみよう。

 

 時刻を三時五十九分頃に設定し、動画を再生する。


「でややあああああああ、とううううううううっ! はああああああああっ!」


 例の木刀で素振りをするロリタ王女。

 足元に見えるこれは……砂場。

 こ……ここは、この間ロリタ王女が木刀を振り回してたあの公園じゃないか! 近い! 近いぞ! こんなに近くにいたのか?

 

 三十秒ほど木刀を振り回していたロリタ王女が、急にその動きを止めた。そして、こちらに目線を移している。


「あれ、お姉さん……その恰好」


 動画は……そこで終わってしまった。


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