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俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
王妹殿下来訪編

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アップデート

「――〈ラ・ピュセル〉」


 剣から生じた光の奔流が、画面全体を覆いつくす。


 光属性全体攻撃魔法、ジャンヌの必殺技だ。


 もとより瀕死状態であった皆斗、若菜たちはもとより、聖騎士として高いステータスを誇る裕也もまた……この力に抗うことはできなかった。

 全員のHPが0になる。

 試合終了だ。


「私ごときにこのように後れをとるとは、話にならないな」


 ジャンヌが剣を鞘に納めて、教会の中に戻っていった。

 基本、対人戦闘で誰かが死亡することはない。倒されてもHPが1となりそのままの状態だ。

 手加減されている、と解釈してもいいだろう。


 実際のところ、魔物に殺されたらどうなるかは俺にも分からない。もちろん設定上、死んだ味方を生き返らせるアイテムや魔法は存在する。ここは現実世界と違いゲームの世界だから簡単に生き返らせられると信じたいが……。 

 少なくとも皆斗たちにとってこれはゲームでなく現実だ。だから彼らもむやみやたらに命を粗末にしたりしない。そのため、今のところ魔物相手にHPが0になったことはない。


「ちっ……くしょうが、こっちは疲れてんだぞ。おい裕也ああああああああああああ、てめぇが気張らねえからだぞっ!」

「そうよそうよっ! 情けないわね! 強いんだから、一人でも倒せるようになって当然でしょ! あたしたちが手を貸してるのに負けるなんて……。反省しなさいよねっ!」

「ご、ごめん。もっとレベル上げるから……」


 別に裕也だけのせいではないと思うんだが、とにかくレベルを上げれば解決する話であるというのは事実。



 ――と、いうのが勇者VS聖女の戦いの結末。昨日の話だ。

 

 こうしてジャンヌとの強制戦闘は敗北に終わり、皆斗たちは再戦を強いられるのだった。

 しばらくこの辺でレベルアップに勤しんで欲しい。


 俺は〈異世界ツクール〉のリプレイ動画を止め、スマホをポケットの中に突っ込んだ。

 さて……と、ロリタ王女はどうなっているだろうか?


 さっきから一時間、ずっと部屋の中にこもっているリディア王女とロリタ王女。おそらくは説教されているのだろうが……かなり長引いている様子だった。


 ぎぃ、とドアの開く音が聞こえる。

 どうやら……ちょうど終わったようだな。

 そのまま俺のいるリビングへと入ってきたのは、ロリタ王女だった。


「ごめんなさい」


 どうやらリディア王女に散々説教されたらしい。日照りでしなしなになった草のように元気がなくなっている。

 あれだけ元気だったロリタ王女がこの様子では、さすがにかわいそうになってきた。


「あ、あまり気を病む必要はないと思うぞ。これから気を付ければいいだけの話だからな」

「……外で頭を冷やしてきます」


 しょんぼりとしたロリタ王女が、とぼとぼと玄関の外へと向かっていく。

 これでよかったのだろうか?


「心配だな」

「あの子は王族なのですから当然です」


 プンプンとほほを膨らませるリディア王女。

 不覚にもかわいいと思ってしまったが、もちろんそれを口にしたりはしない。


 まあ、テレビを見ること自体は悪いことじゃない。あとで時代劇の話を振って話し相手になってあげ――


「ん?」


 プルプル、とポケットが振動している。

 通知を告げるスマホのバイブレーションだった。

 メールでも来たのか?


 俺はスマホの通知画面を開いた。


 異世界ツクール。

 アップデートのお知らせ。


 と、通知が来ている。


「これは……」


 そのまま通知をタップする。


 『異世界ツクール』をご愛顧いただきありがとうございます。

 本日、アップデートが完了したのでお知らせします。


 異世界ツクール VER1.01。

 内容。

 リプレイ動画一覧の変更。

 全体マップへの主要キャラ位置情報機能の追加。

 召喚機能の修正。

 

 その他もろもろ細かい修正がされたようだった。


 リディア王女も〈リアルツクール〉の画面を眺めている。どうやら、同じタイミングで更新通知が来ているようだ。 


「アップデート?」


 すぐに思い出したのは、妹――伊瀬さくらのことだった。

 アップデート。

 死者を生き返らせることができる状態変更機能。あれがもし実装されていたとしたら、今度こそ妹を……生き返らせて……。


「リディア王女、〈リアルツクール〉を見せてもらえるか?」


 気が付けば俺はそう言っていた。


「あっ、はい」


 俺が何を考えているのか知らないリディア王女は、当たり前のように〈リアルツクール〉を見せてくる。


「…………」

 

 見方はスマホとそう変わらない。俺は食い入るように〈リアルツクール〉の更新内容を確認していた。

 ……が。

 どうやら、今回のアップデートで死者蘇生機能は追加されていないらしい。


「ごめんな、少し気になることがあって。また更新が着たら見せてもらえるか?」

「大和様のことですから、深い考えがおありなのですね。分かりました、必ずお見せしますので」

「…………」


 あまり買いかぶらないで欲しい。俺はどこにでもいる心の弱い人間なんだ。

 でも俺のことを神様だと、創造主だと言ってくれた彼女に……そんなゲームの小悪党みたいな願望を伝えたくなかった。


 ……と、とにかく、本当にアップデートされるのだという事実は、これではっきりしたわけだ。

 これから待っていれば、もっと多くの機能が追加されて、いろいろなことができるようになる。ひょっとすると皆斗たちを元の世界に戻す逆召喚機能も追加されるかもしれない。そうなれば俺の悩みも半分以上解決だ。


 そしてもし、本当に人を生き返らせれるようになったとしたら……俺は……。

 その時こそ、さくらを……。


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