表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
王妹殿下来訪編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/85

ショッピングモール


 午後。

 俺はロリタ王女たちとともに外に出ることにした。

 

 どこに行こうか迷ったが、ショッピングモールに行くことにした。二人もお客さんが増えたのだから、必要な日用品をそろえておこうと思ったのだ。


 駅前のショッピングモールは、俺の家からそれなりに近く、そして時間をつぶすのには最適だった。


「すごいすごーい! 向こうの世界と全然違うねっ!」


 元気いっぱいのロリタ王女が、人ごみの中を走り回っている。

 

 まあ、はしゃぐ気持ちは分からなくもない。俺だって突然近未来的な異世界都市を訪問できるようになったら、興味津々であたりを見渡してしまうだろう。

 まあ、同じように異世界転移した皆斗たちみたいにやりすぎてしまうのも困ったものなのだが……。


「この人の多さ……。これは、この世界の庶民の市場なのですか?」

「まあ、そんな感じだな」

「このように洗練された衣服を一般市民が着れるなんて、この国は随分と豊かなのですね」


 リディア王女が感心したようにそう言った。

 

 モール二階のこのフロアにはファッション系の店舗が乱立しており、嫌が応にも衣服が目に付いてしまう。異世界視点でいえばこの衣類はかなり上等な部類なのだろう。

 別に貧しさを強要したつもりはないのだが、異世界の製作者としては申し訳ない気持ちになってしまう。


「お兄ちゃん! これっ!」


 ロリタ王女がそう言って持ってきたのは、パジャマだった。

 動物を模した着ぐるみっぽいパジャマだ。フードが猫の頭みたいになっていて、身に着けると全身が猫のようになる。


「欲しいのか」


 うんうん、と頭が吹っ飛びそうなほどに首を縦に振るロリタ王女。どうやら相当お気に入りらしい。

 

「よし、じゃあお兄ちゃんが今日の記念にその服をプレゼントしよう」

「やたー! お兄ちゃん大好きっ!」


 ロリタ王女が抱き着いてきた。

 喜んでもらえたみたいで嬉しいことだ。

 

 しかしそんな俺の思惑とは裏腹に、隣にいたリディア王女は少しだけ困惑気味の様子だった。


「大和様。妹のわがままに付き合っていただきありがとうございます。このお礼はいつか必ず……」

「俺が好きでプレゼントしたんだからリディア王女が恩返しする必要はないよ。そうだ、リディア王女も何か一つ買ってみたらどうだ? 俺からプレゼントするよ」

「えっ、わたくし……ですか?」


 まじめなリディア王女は自分が何かを買ってもらうなどというつもりはなかったのだろう。俺の提案に対してきょとんとしている。


「あ、あまり高いものは買えないけどな。普通レベルの値段で一着程度なら、まあ……」


 一人暮らしの俺には、ある程度自由に使える金がある。俺が買う予定だった服か何かを我慢すれば、その程度のことは余裕だった。

 とはいえ買ってあげるといっても親からもらった金だ。あまり恩着せがましくするつもりはなかった。


「…………」


 遠慮しているのだろうか? リディア王女は困惑した様子でお店の周囲をうろうろとしている。何かお気に入りの服を選べている様子はない。

 プレゼント、といったのは俺だ。ここは多少強引にでも勧めておく必要があるな。でないと何も買わずに終わってしまうかもしれない。


 フォーマルな服の多いリディア王女だから、ここはぜひカジュアル寄りのコーデを決めてほしいところだが……。

 

「これなんかどうかな?」


 俺が示したのは、トップス白ニットとボトムスフレアスカートのセットだ。

 まあマネキンが身に着けているセットそのままなんだが、きっとリディア王女に似合っていると思う。


「リディア王女に似合ってると思うんだけど」

「……嬉しい」


 はにかんだ笑みを浮かべるリディア王女は、俺が想像していたよりもずっとこのプレゼントを重く強く受け止めているように感じた。


「一生大切にします」

「そ……そんな大げさな。王女なんだかもっと高価なプレゼントとかもらってるんだろ? 俺のプレゼントなんて大した値段じゃないし、もっと軽い気持ちで考えてくれてもいいんだぞ?」

「プレゼントはわたくしが王女であるからです。国王の娘、という肩書がなければ、たいして親しくもない相手に贈り物などしないでしょう?」

「まあ、そういわれてみれば」


 なるほど、そういう意味で言うなら確かに心のこもったプレゼントというのは珍しいものなのかもしれない。彼女ぐらいの地位になると、プレゼントにどの程度好意が含まれているのかを測ることは難しいだろう。


「ですからこれはわたくしにとって初めてと言っていい贈り物なのです。こんなにうれしいことはありません」

「よく考えれば俺も女の子にプレゼントしたのは初めてになるのか。一生大切に、ってのは大げさだとは思うけど、特別感はあるよな」

「まあ、わたくしが初めて?」


 リディア王女が顔を赤めた。


「むぅううううううううううっ!」


 と、隣で頬を膨らませているロリタ王女。


「ロリタもっ!」

「ん?」

「ロリタもお兄ちゃんからプレゼントが欲しいっ!」

「ええ……。さっきパジャマ買ってあげただろ。あれじゃダメなのか?」

「そうじゃなくてお兄ちゃんが選んでくれたのが欲しの! 欲しい欲しい欲しいの!」

「うーん、でももうお金が……」

「やだやだやだやだああああああああああ、欲しい欲しい欲しい欲しいほおおおおおおしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」


 さすがにここで大泣きだしてしまうほど幼くはないのだが、ロリタ王女の声は狭いショッピングモール内で随分と目立ってしまっている。


 う、うーん。

 ロリタ王女には申し訳ないのだが、俺も金持ちというわけではない。これ以上は生活費が……。



 その後。

 妥協として在庫処分の割安ワンピースを買い与えることによって、ロリタ王女をなだめることに成功した。

 こんなこになるなら、公園かどこかに連れて行った方が良かったな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ