表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造  作者: うなぎ
王妹殿下来訪編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/85

テレビのリモコン


 我が家にロリタ王女がやってきた。


 若干遠慮がちだったリディア王女とは違い、ロリタ王女は遠慮というものを知らないようだった。玄関からリビングに侵入すると、すぐさま家具や窓など様々なものに興味を示し始める。


「ほほーう! ふむふむ! こっこれは……っ! すごい! すごいよっ!」


 などとまるで重大発見をした科学者か何かのように電灯のスイッチをオンオフしている。

 目をキラキラと輝かせている王女は、年相応の子供に見える。


「ロリタ……少しおとなしくしていてください。大和様に迷惑がかかります」


 リディア王女が頭を抱えている。なるほど確かに王女としてふさわしくない振る舞いだとは思う。王族としての義務だとか何とか言っていた彼女にとって、妹の振る舞いは許せないのかもしれない。

 俺は子供なんだから元気にはしゃいでいればいいと思うんだけどな。


「俺は別に気にしてないからいいよ。軽い気持ちで連れてきたんだ、ロリタ王女の思うように動ければいいさ」

「お兄ちゃん、これは何?」


 そう言ってロリタ王女が指さしたのは、この部屋の隅に設置されたテレビだった。

 50インチ以上あるこのテレビはこの部屋において一番目立つ存在だ。異世界にこんなものは存在しないのだから、ロリタ王女が興味を抱くのは当然だった。


「これはテレビって言うんだよ。良ければ見てみるかい?」

「えっ、ほんと? 見ていいの?」

「そのためのものだからね」


 なんでもかんでも検索して出せてしまうスマホやPCより、テレビの方が断然安心できる。放送されている内容なんて限られているからな。

 両親がここにいるときは俺もぼんやりとよくテレビを見ていたのだが、最近は一人でスマホを眺めている時間が多く……極まれに見たい番組以外は見なくなってしまった。

 こうしてほこりをかぶらせておくよりも、ロリタ王女に有効活用してもらったほうがテレビも嬉しいだろうからな。


「こうして電源ボタンを押すと」


 ポチ、と電源ボタンを押すと画面に映像が映し出される。

 最後に付けたのはいつだったか忘れたけど、壊れていなくてよかった。


「ふわぁぁ~、なにこれ、すっごい綺麗な絵が動いてる」


 現れたニュース系の番組を眺めながら、ロリタ王女が感嘆の声を上げる。

 期待通りの反応だ。


「こうやって映像を映すことのできるアイテムなんだ。このリモコンでチャンネルをかえたり音量を上げたり下げたり録画したり番組表を見たり……と、とにかくいろいろできるから試してみるといい」

「はーい!」


 ロリタ王女は俺からリモコンを奪い取ると、さっそくあちこちを触り始めた。

 チャンネルが変わったり、設定画面を開いたり、外部入力の画面になったり、映像は次々に変化していく。

 操作方法を理解している様子ではない。まあ、テレビも何も知らない子供なんだから番組表とか録画なんて概念は理解できないだろうな。


「お……おおお……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 なかでもロリタ王女が興味を示したのは音量のボタンだったようだ。プラスで上がってマイナスで下がる、という単純明快なその仕様は異世界人の知識でも理解しやすかったに違いない。


 ボリューム10……20……30……っておいっ!


「ろ、ロリタ王女、その辺で」

「うるさいうるさいうるさーい。あはははははっ!」


 こ、これは外にも聞こえてしまうレベルのもはや騒音。く、苦情が入ったらあとでめんどうなことに……。


「いい加減にしなさいっ!」


 一喝したリディア王女。

 その声に反応したのかそうでないのかは知らないが、ロリタ王女がテレビの電源を切った。

 いや……ボタンの意味理解してなさそうだから……反射的に偶然押してしまっただけかな?


「ロリタ! あなたには慎みというものがないのですか? こんな大きな音を出して……。大和様にご迷惑でしょうっ!」

「お、お兄ちゃ~ん」


 と、俺の後ろに隠れるロリタ王女。

 俺の腰あたりに両手で抱き着き、顔の半分だけリディア王女に向けている状態だった。

 

 か、庇いたい……。

 思わず庇護欲に駆られてしまう。

 が……、あきれ顔のリディア王女を手前にして、あまり甘いことばかりも言ってられない。

 

 非が誰にあるのかは明らかだ。


「ご、ごめんな。この建物、俺だけの家じゃなくてさ。他の人も住んでるんだ。大きな音を出したら怒られてしまうかもしれないから。俺もその話をしてなくて悪かったよ」


 一軒家なら好きにさせてあげてもいいんだけどな、ここはマンションだ。隣や下の部屋から文句を言われてしまってはかなり困る。

 ロリタ王女にその説明はしていなかったと思う……。


「えええっ! お兄ちゃんはこの世界で一番偉い神様なんじゃないの! この世界はお兄ちゃんのものなんじゃないの?」

「残念ながら俺はただの庶民なんだ。その辺は苦労を掛けて済まないと思ってる」

「はぁ~なにそれがっかりだよ。お兄ちゃんがお姉ちゃんの恋人なら、ロリタはこの世界を神族の義妹としてやりたい放題できるはずだったのに~」

「わっわっわたくしが恋人だなんて……」


 リディア王女、照れる前にここはしかるべきだと思うんだが……。あとやりたい放題できるのは俺じゃなくて姉の方だと思うよ。


 その後。

 ロリタ王女はおとなしくテレビを見ていた。リディア王女が目を光らせていたからおとなしくしていたんだと思う。

 とはいえテレビだけで丸一日というのもあれだから、午後からはどこかに連れて行ってあげよう。

 


ここからは王妹殿下来訪編になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ