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作者: 阿弖流爲

 朝日が西の方に出ているのを見て、今夢を見ているということを確信する。現実では、連日汗が止まらないほど散々な猛暑だというのに、澄み切ったピリッとした空気を感じるところから、おそらく冬の朝なのだろうと推測できる。

 周りはどうなっているだろう。目を開いて、気配を感じる。まず、木があるのがわかった。何百年の樹齢があるとは思えなかったが、日本ではあまり見たことのない成長の仕方に見えた。ただ何も考えずに、空へ向かってこの先に待つ「枯れ」など知らないように無邪気に、子供のように伸びていた。

 そして次に、生命の気配を感じた。それは鳥であった。いや、もう少し具象性があった。スズメであった。およそ二、三匹ほどの此奴らは、警戒していた。私が敵であることを。

 木の枝を力強く掴んで、こちらを睨み、緊張している様子であった。私は、此奴らの方を向き、目を合わせ、礼をした。深くもなく、浅くもなく、けれども私の中で最大限に敬意をこめて、お辞儀をした。すると、此奴らは何かを察知したように、ほんの少し後退するも、敵意がないのに気づいた途端、一匹、すっとこちらへ向かってきて、笑いかけた。

「やはり人間は弱いものを憐れむのだな。ああ。それはこちらにとってはただの哀れみにしか感じないのだ。お前はこの気持ちがわかるか。偽善者め。そうだ、やはり人間はクソだ。なぜ神は此奴らを産んだ。なぜ!」

 此奴らが喋ったことには驚かなかった。

 私は此奴の話を適度に聞き流しながら、ボソボソとこう云った。

「それはお主らが弱いのが悪いと思うのだが。私は弱い奴らが愛おしくて、そのため愛すのだ。これは人間全てが同じ思考だ。強いものには恐怖を抱き、弱いものには慈悲の心が芽生える」

「お主らも強ければよかったのにな、はは」

 それから、知らぬ間に私は現実世界へと帰っていた。窓を開け、昼の濃厚な光を浴びようとすると、近くにある電信柱に数多のスズメが止まっていた。気づいた瞬間睨んだところ、一目散に逃げていった。


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